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山本七平bot @yamamoto7hei
①「…国を有(たも)ち家を有つ者は、寡(すくな)きを患(うれ)えずして均(ひと)しからぎるを患え、貧しきを患えずして安(やす)からざるを患う、と。 蓋(けだ)し、均しければ貧しきものなく、和すれば寡(すくな)きことなく、安ければ傾くことなし」(季氏第十六421)<『論語の読み方』
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②これは実に日本人の好きな言葉であって、特に「寡(すくな)きを患(うれ)えずして均(ひと)しからざるを患う」は、戦時中の標語であると同時に戦後の標語でもある珍しいものの一つで、新聞の論説やコラムに今もよく出てくる ――ただし「寡(すくな)き」は「乏(とぼ)しき」となっているが。
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③そしてこれが民主主義と重なると「極力平等にするのが民主主義」という戦後のテーゼになってしまうが…(中略)…そしてこの結果「乏(とぼ)しきを憂えず、等しからぎるを憂えよ」と新聞などに載るようになり、その出典が何であるかが忘れられて、「それが民主主義だ」となったわけである。
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④だが、実はこれは、孔子・孟子に基づく伊藤仁斎以来の「日本的儒教主義」ともいうべきものの帰結であり、その結果、国民の90パーセントが中流意識(中産階級意識)を持つという、人類史上はじめての国家を形成してしまった。
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⑤そして、ほぼ全員が中流意識を持つということは、少なくとも平等意識を持っているということであり、現実には「乏(とぼ)しきを憂う」がなくなってしまった。
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⑥【顕在化した日本型平等社会の副作用「暴(ぼう)」と「虐(ぎゃく)」】では、それで人びとは満足しているかというと、そうはいかない。 今の日本は世界的水準で見れば、「食えない」という状態ではない。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑦経済がある水準に達すれば、それ以上は、実質的には求めるものがなく、あとは「精神的充足度の平等」しか求められなくなる。 これは「虚栄心の充足の平等」をも求めることになるのであり、現にそうなっている。
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⑧こういう社会は一面、たいへんに困った社会で、その社会の指導者や管理職は、門地・門閥・出生・財産・身分等に関係なく、すべて「平等の中における社会的評価」で決まるわけである。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑨そこで「社会的評価」がプラスに転ずれば、新潟出身の小農民も、岩手出身の漁民も総理大臣になり、それがマイナスに転ずれば没落する。 これはたいへんに劇的に表わされているが、劇的に表われない場合でも、また小さな組織内でも原則は同じである。
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⑩ということは、ほかに原則がないからであり、また、われわれがほかの原則を拒否し、それを拒否することが民主主義と考えているからである。 さらに困ったことは、われわれの社会はタテマエでは民主的なことを口にしながら、ホンネでは「論語的評価」で人を見ている。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑪そして、もっと困ることは、「自由」で強制がないから、原壌(げんじょう〔註:孔子が最も嫌った「下愚」的人間〕)のようになったり、孔子の「悪(にく)む」「知らず」「恥ず」等々の状態になっても、これを明確に規制する社会的規範が明示されていない。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑫これは相当ひどい話で「これこれなら、社会はあなたをこうします」とは示さないで、しかもそうしているということなのである。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑬孔子は言った。 「予(あらかじ)めそれと教えないでおいて、いきなり死刑にする、これを虐(ぎゃく)という。 放任しておいていきなり実績を示せと責任を追及する、これを暴(ぼう)という」と。 こう見ると、日本は相当に「暴虐な社会」なのである。

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