山本七平botまとめ/平等社会とは「管理を意識させられる社会」である

山本七平著『論語の読み方』/第七章「上達」――人望を得るための条件――社会のリーダーとして信用される人物像とは/「平等社会=管理社会」を証明したイスラエルのキブツ/238頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【「平等社会=管理社会」を証明したイスラエルのキブツ】平等社会とは管理社会であるといえば、ちょっと奇妙な感じを受けるかもしれないが、「管理を意識させられる社会である」といえば、人は「なるほど」と納得するに相違ない。<『論語の読み方』

2013-03-22 07:57:41
山本七平bot @yamamoto7hei

②というのは、不平等が当然で、「生まれ」によって管理階級と被管理階級とが分かれていて、それが当然とされている社会では「管理されている」という意識そのものが、そもそも存在しないからである。

2013-03-22 08:27:59
山本七平bot @yamamoto7hei

③「平等社会と管理」という問題を人類史上はじめて明確に取りあげたのは、おそらく『孟子』であって、『論語』では『孟子』ほどにはこの点は明確ではない。 しかし、『孟子』を背景にして読んでいくと、そこに深い洞察があり、これは現在にも通ずる問題だと思わざるを得ない。

2013-03-22 08:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

④奇妙な対比になるが、現代の世界で最も徹底した平等社会を実現しているのはイスラエルのキブツだが、私はこのキブツにしばらく宿泊逗留すると、いつも、『孟子』における「平等社会と管理機構ないしは管理職の位置」を連想する。

2013-03-22 09:27:56
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤キブツは、その内部に入れば私有財産はなく、第一「おカネ」というものが存在しない。 各人は同じ広さの小住宅に住み、子供は生後八日目に託児所に預けられ、食事は共同食堂のセルフ・サービスで同じものを食べ――…選択の余地はあるが――、同じように労働し、同じように休息する。

2013-03-22 09:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥「能力に応じて働き、必要に応じて支給される」が原則だから、老人・身体障害者は、労働時間の減少、軽労働の割当てが行なわれ、一定年齢以上は希望者だけが希望時間だけ働く。 私有財産はないが、生産性が高いので共有財産は増える。

2013-03-22 10:27:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦それが厚生・教養・娯楽施設となっていき、病院・図書館・映画館・談話室・遊戯場・体育場などが建っていき、同時に、これらのための総合的な機械室もあって、冷暖房から洗濯工場や各家庭への温水の給水なども行なっている。 こうなると医師・技術家・司書等が必要となる。

2013-03-22 10:57:43
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧更に生活水準が高くなると共に、生産物を売って必需品やトラクター、車、フォークリフト等を購入したり、地方自治体や電力会社等と交渉する渉外係も必要となる。 ノフ・ギネソール…などの歴史のある大キブツになると、それらの共有施設は実に立派でゲスト・ハウスなどはホテルに比べて遜色ない。

2013-03-22 11:27:57
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨こうなると、どうしても相当大きく、かつ完備された管理機構と管理職が必要になってくる。 本部が管理する諸機構の下部組織は、各作業班が月ごとに交替で担当する。 しかし、そのすべてを管理する各管理委員は、直接選挙で選ばれ、任期は一年とされている。 もちろん再任は妨げない。

2013-03-22 11:57:42
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩そして、長く再任されている管理職に会うと、そこには共通した一つのタイプがあり、「なるほど、こういう人が人望を得て、この平等社会で長く管理職にあるのだな」という気がする。 そしてそのタイプは、一言でいえば「君子」なのである。

2013-03-22 12:28:01