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山本七平bot @yamamoto7hei
①【日本的礼楽】「礼楽」という概念を、おそらく『論語』と『礼記』によって日本人は知ったのであろう。 その意味では確かに中国から来た概念だが、それは、日本人の礼楽と中国人の礼楽が同じだということではない。<『1990年代の日本』
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②日本人はあくまで、自前の秩序である「式目的能力主義」と「一揆的集団主義」とを、礼楽という輸入の概念で秩序づけたのであって、自らが中国化し中国人になったわけではない。 従って以下に記すのは、日本的な礼楽であって、原意とは相当に意味が違う。
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③といってもそれは原意を全く無視したということではないから、まず、基本的な考え方を、引用を交えて記すことにしよう。 孔子は『論語』で次のような、一見、まことに不思議と思われることを口にしている。 現代文に訳して要旨を記してみよう。 「孔子は言う。(続
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④続>天下に道あれば礼楽と征伐は天子から出る。ところが道が乱れて諸侯から出るようになれば、その政権が十代続く事は稀であろう。更にその下の大夫から出れば五代、更にその下の家臣から出るようになると三代続く事は稀であろう。 天下に道があれば一般の庶民は政治上の議論などはしないですむ」
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⑤「……がさつ者だな、相変わらず子路(弟子)は。 いいか。 君子は知らない事は黙っているものだ。 まず名と実が一致していないと筋が通らず、筋が通らないと政局は安定せず、政局が安定しないと礼楽は興らない。(続
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⑥続>礼楽が興らないと刑罰が公平でなく、刑罰が公平でないと民心が安定せず、一挙手一投足にまで不安がつきまとう。 だから国が混乱する」。 礼楽を「礼儀と音楽」の意味に受け取ると、何とも理解しかねる言葉である。
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⑦中でも「礼楽興らざれば則ち刑罰中(あた)らず」は実に奇妙な言葉だと思える。 常識からすれば、制度と法が整備されていなければ正しい裁判が出来ないはずで、礼儀や音楽には関係ない。 これではまるで、法廷で茶湯と箏曲でもやれば正しい裁判ができるかのような意味になってしまう。
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⑧そこでこの言葉は 「秩序が確立しないと……」 「制度が完備しないと……」 の意味に解され、また 「教育が進まないと……」 の意味とする人もある。 いずれにせよそれは、何か、秩序立てるものを言っているのだが、ではそれがなぜ「礼楽」なのであろう。
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⑨そこで『礼記』を見ると 「楽は内に動くものなり、礼は外に動くものなり」 「礼は民心を節し、楽は民声を和す」 「仁は楽に近く、義は礼に近し」 「楽は同を統(す)べ、礼は異を分(わか)つ」 といった言葉が見える。
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⑩いわば「礼」の方は、上下の秩序のけじめをつける外面的な規範であり、「楽」の方は、同時に全体を内面的に統一するものを言っているわけである。 これらの言葉は聖徳太子の「和をもって貴しとなす」とも関連がある。 元来これは『論語』の「礼はこれ和を用うるを貴しとなす」に基づいている。
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⑪いうまでもなく「礼」は上下の区別をはっきりして秩序を立てるものだが、しかしこれは上下が敵対関係になるということでなく、「和を用うるを貴しとなす」であり、また「楽は同を統(す)べ」なのである。
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⑫この考え方は現代的に言えば、組織は、それが国家組織であれ企業であれ、上下の秩序がないと成立しないが、しかし上下が敵対関係になっても成立しない。 ちょうど音楽が、上下に関係なくだれの情感をも等しく動かすような、そういった情感的な全体的同一感がなければならない。
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⑬これが「楽は内に動くものなり、礼は外に動くものなり」である。 このようにして、外面的な節度と内面的な一体感がなければ秩序は確立しない。 秩序が確立しなければ正しい裁判はできないわけで、以上のように受け取れば、礼楽が秩序の基本であるという考え方は別に不思議ではない。
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⑭この礼楽的秩序が式目的能力主義、一揆的集団主義とともに、日本の伝統的秩序を支える柱の一つとなっている。 前に、日本の組織の中の組織、いわば「裏組織」はすべて「公方と一揆」の関係であると記した。
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⑮大臣の処置を局長一揆が実質的には突き返すに等しいこと、いわば西欧の組織原則では考えられないようなことが現に行われているが、この際、徹底的な重要性をもつのが「礼楽」なのである。
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⑯すなわち、局長は絶対に「局長の決議に基づき大臣の指示を拒否する」といったことはしてはならない。 これは「礼」の否定だから上下関係の否定となり、同時に闘争宣言のようになるから、上下の一体感を破棄してしまうので、「楽」の否定になる。
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⑰そうなると上下関係は完全な敵対関係になるから、その組織は全然機能しないことになる。 そこで「次官を通じて、それとなくほのめかす」という形になり、日本でこれをやらねば非常識である。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑱これは会社でも…取引関係でも同じであり日本では「敬語・謙譲語」という形で言葉の中に「礼」が組み込まれ、この「礼」を保持する事は上下を敵対関係にしない基本的要素である。例えば社長に対して「仰る通りに致します」と言おうと「お前の言った通りにやってやらあ」と言おうと意味は同じである。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑲だが同じだから、同じとは絶対にいえない。 理由はそれが「礼楽」という日本人の伝統的な秩序の感覚の基本にふれる問題を含むからである。 面白いことに、うまくいっている会社は必ず「礼楽」が確立している。

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