山本七平botまとめ/日本の礼楽的感覚が理解できない外国人

山本七平著『1990年代の日本』/Ⅱ日本人の履歴書ー中国からの学習と勤労思想の確立ー/礼楽の無視は契約の無視/66頁以降より抜粋引用。
政治 山本七平 契約社会 マッカーサー文化大革命 精神構造 礼楽社会 礼楽的秩序 式目的能力主義 九徳的人望 伝統的秩序
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山本七平bot @yamamoto7hei
①【礼楽の無視は契約の無視】これは外部との取引でも同じである。 前に欧米の秩序でも「礼楽的秩序」は皆無ではないが、しかしきわめて稀薄であり、法と契約が絶対的であると述べた。<『1990年代の日本』
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②従ってアメリカ人などには、この「礼楽的感覚」が全く理解できない人も決して少なくない。 次に「朝日新聞」に投稿された河村幸一郎氏(海外コンサルタント会社社長 元住友商事欧州総支配人付)の一文を引用させていただく。 【久しぶりに米国人と激論した。(続
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③続>今私が関係する米国のあるコンサルタント会社から、会長と日本企業担当の副社長が来日したので打ち合わせていて激論になった。 最初は日本企業との年間契約更新に伴う請求書の送付についてであった。 契約書では、期限切れの前に別段の申し入れがない限り、契約は自動的に継続される。
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④今年度分の請求書を送付し、予納金を支払ってもらうのだが、いきなり請求書を突きつけるのでなく、その前に相手と会い、契約の継続を確認し、それから『ありがとうございます』と言って請求書を渡すのが、日本の通常の商慣習であると私は主張した。
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⑤彼らはこれは商慣習の問題ではなくビジネスの問題であり『ビジネス・イズ・ビジネス』を繰り返すのであった。 契約書に書いてある通りに実行するのがなぜいけない、と言う。 私は『それがいけないとは言っていない。いきなり請求書を突きつけることがいけない、と言っているのだ。
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⑥商慣習に反すれば相手に悪感情を与え、それがビジネスにも影響してくる事が分らないのか』 と反論するのだが、彼らにこのデリカシーが理解できない。 私はついに『あなた方の言う通りにして日本の得意先が反撥しても、私の責任ではないぞ』と捨てぜりふを吐き、彼らを黙らせたのであった…。】
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⑦…法と契約の社会では契約書通りすればそれで十分なので、彼らは自分達のやり方で必要かつ十分条件を満していると考えており、それ以上何かをしなければならないという事が理解できない。 しかし礼楽社会はそうではない。 ここでは礼楽の無視は契約の無視に等しい結果を生じ得て不思議ではない。
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⑧従ってここで河村氏が、激論までして主張したことは、日本に於ては「礼楽」は絶対に無視してはいけない。 それは時には契約違反に等しくなるから、次に、期限前の申し入れで契約を更新しないという結果を招来することもあり得るぞと言っているわけである。
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⑨そこで請求書を突きつける前に「礼」を行って契約の継続を確認し、「ありがとうございました」と言って請求書を渡せば、両者の間に「楽」すなわち情感的一体感を生ずるから、すべてがスムースに行く。 これを無視すれば相手は反撥する。 そうなればもう責任は負えない。
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⑩ではなぜ反撥を生ずるのか。 前に述べたように伝統によって形成された社会はその伝統を生きている人びとの精神構造と深く関連し、両者が相対応する形で社会が機能しているのだから、これを無視されれば反撥が生じて当然なのである。 だがその伝統のない人間にはこれが理解できない。
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⑪「捨てぜりふ」を吐かれれば、彼らはそれを実行するであろうが、なぜそれを実行しなければならぬかは理解できないであろう。 どの社会であれ、それを無視すれば社会そのものが崩壊すると思われていることを、無視されれば怒る。
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⑫だが、強権をもってこれが行われれば、人びとは沈黙せざるを得ない。 マッカーサー文化大革命のころ、このような「礼」はすべて「虚礼」だから、アメリカ式に「ビジネス・イズ・ビジネス」ですべてを能率的に行うべきだと主張した人もいた。 否、むしろそれが新聞などの論調であった。
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⑬だが実を言うと、この主張は少々おかしいのである。 契約社会は何も対外的関係だけが契約で律せられているのでなく、組織そのものも契約で成り立っている。
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⑭人は一雇用契約で会社に入る。 その義務と支払われる賃金は契約による。 契約を完全に果たせば、原則として(あくまでも原則としてだが)礼楽は必要とされない。 まして、礼楽がなくなれば組織が崩壊するなどということはあり得ない。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑮戦争直後でも、組織はやはり礼楽的・一揆的組織で、式目的能力主義と九徳的人望が、それを統率していた。 こういう状態にあって、外部に対してだけ「契約のみ」と言ったところでそれは筋が通らない。 外部との関係もまた礼楽的になるのは当然である。

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