モータードリヴン・ブルース #4
◆「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン。スコーチャーです」スコーチャーはアイサツを返す。「ベイン・オブ・ソウカイ・シンジケートも今やマッポの犬か」「通りすがりだ」ニンジャスレイヤーは答えた。「だが貴様は殺す」◆
2013-04-03 15:05:29「俺を殺す?絶対不可能!イヤーッ!」スコーチャーが先手を打って仕掛けた。翳した両手からバーナーが噴射される!アブナイ!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは地面に這うほどに姿勢を低く保ち、滑るように接近する。スコーチャーのバーナー炎は上へ巻き上げられ、期待した効果をあげられない! 1
2013-04-03 15:09:12「なに!卑怯な……」スコーチャーは怯んだ。咄嗟に火炎放射を取りやめ、両腕でガード姿勢を取る。「イヤーッ!」「グワーッ!」そこへ突き刺さる低姿勢チョップ突き!スコーチャーのガードがコンマ数秒遅ければ、彼の心臓が摘出され死に至った事であろう。九死に一生を得たが、右腕バーナーが損壊!2
2013-04-03 15:13:45「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの逆の手がジゴクめいたショートフックを繰り出す!「グワーッ!」スコーチャーは脇腹を打たれ、後方へ飛び下がってダメージを逃す!そのままクルクルと空中で回転し、ビル側面の配管を掴んでぶら下がった。クローンヤクザを振り仰ぐ。「やれ!撃ち方!」3
2013-04-03 15:24:20「スッゾー!」BLAMBLAMBLAM!指示を受けたクローンヤクザ達が一斉に銃撃を開始する。「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは短距離回転ジャンプで立ち位置を移すと、恐るべき速度で両手を動かし、弾丸を弾き、あるいは摘み取りはじめた。……彼の陰には傷つき倒れたシンゴがいるのだ! 4
2013-04-03 15:38:33「ヌゥーッ!」シンゴは射線を遮るように立つニンジャスレイヤーを横目に、地面を這い、蹴り飛ばされたデッカーガンを再び掴んだ。ニンジャスレイヤーは銃弾防御に専念!「イイイイイヤァーッ!」「頭上が御留守だぞ、ニンジャスレイヤー!」スコーチャーがぶら下がりながら叫ぶ。火炎放射だ! 5
2013-04-03 15:45:47ゴウウウウ!ゴウウウウウ!「ヌゥーッ!」ナムサン!頭上から吐きかけられる悪竜の息のごとき火炎!ニンジャスレイヤーはこれに耐える!「貴様の噂を耳にしなくなって久しい!なるほどその腑抜けたザマでは必然よな!」スコーチャーはぶら下がった状態からのバーナー噴射を継続しながら勝ち誇る! 6
2013-04-03 15:50:23シンゴはうつ伏せ状態になり、クローンヤクザへの銃撃を開始!BLAM!BLAM!BLAM!「グワーッ!」「グワーッ!」クローンヤクザ達が一人一人仕留められてゆく。デッカーとは長時間の過酷な戦闘訓練に耐えたエリート・マッポであり、その対応力は通常マッポ50人に匹敵するとも言われる!7
2013-04-03 15:54:05「ヌゥーッ!コソコソとニンジャの陰で卑怯に立ち回るデッカーめが」スコーチャーは火炎放射を継続しながら舌打ちした。「グワーッ!」「グワーッ!」クローンヤクザが倒れてゆく。だがスコーチャーの攻撃は阻まれ、デッカーを殺せない。BLAM!BLAM!「グワーッ!」「グワーッ!」8
2013-04-03 15:58:06「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」「……?」火炎放射を継続しながらスコーチャーは訝った。クローンヤクザが崩れ立っている。制圧小隊が壊滅しかかっている。何が起こっているのか?見よ!路地の外側からクローンヤクザ達へ銃撃を行う別のデッカーを!挟み撃ちである! 9
2013-04-03 16:10:02「タバタ=サン、良く嗅ぎつけたじゃねえか」銃撃を続けながらシンゴは唸った。そしてニンジャスレイヤーに言った。「あっちのヤクザどもは俺たちが持つ。お前ももう無茶はしないでいい!」「イヤーッ!」答えるかわりに、ニンジャスレイヤーは跳んだ!当然その標的はスコーチャーだ! 10
2013-04-03 16:24:42「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは跳びながら両腕を内から外へ叩きつけるように振り、炎の波を弾き飛ばした。「やめろ!こちらは足場が不安定で……」スコーチャーは狼狽し、火炎放射を継続しながら叫んだ。「イヤーッ!」「グワーッ!?」その顔面をニンジャスレイヤーの右手が鷲掴みにする! 11
2013-04-03 16:33:40「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーの上腕に縄のような筋肉が浮き上がる!力任せにビルの壁面にスコーチャーの顔面を叩きつける!「グワーッ!?」「イヤーッ!」スコーチャーの顔面を壁に押しつけたまま、下まで滑り降りる!「グワーッ!グワーッ!グワーッ!」ナムアミダブツ! 12
2013-04-03 16:37:55BOOOOM!ジゴクめいて壁を削りながら下へ垂直落下するなかで、特殊形状のニンジャヘルムが火花を迸らせて爆発した。「アバーッ!」「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはそのままスコーチャーの頭を地面に叩きつけた!「アバーッ!」ナムアミダブツ!13
2013-04-03 16:41:01BLAMBLAMBLAM!「グワーッ!」「グワーッ!」そしてクローンヤクザ達も遂に銃撃戦に敗れ、その戦闘能力を完全に失う!挟み撃ち攻撃を受ければ実際一溜まりも無いものだ!「シンゴ=サン、これ一体どんな状況……」タバタが駆けてくる。シンゴは頭を巡らせ、ニンジャスレイヤーを見た。14
2013-04-03 16:46:16「アバッ」「場所を変えてインタビューと行こうか。スコーチャー=サン」ニンジャスレイヤーがスコーチャーの頭を押さえつけたままジゴクめいて言った。「やめ……」「イヤーッ!」「アバーッ!」掴んで持ち上げ、地面に叩きつける!「慈悲は無い」「アバーッ!」「オイッ!」シンゴが呼びかけた。15
2013-04-03 16:48:20ニンジャスレイヤーはシンゴを、駆けてくるタバタを見た。シンゴは呻いた。「お前の目的は何だ!」「この件から手を引け」ニンジャスレイヤーは低く言った「ニンジャは此奴一人と限らぬ。オヌシらでは手に余る陰謀だ」ニンジャスレイヤーは瀕死のスコーチャーを抱え上げた。「待、」「イヤーッ!」16
2013-04-03 16:52:17ニンジャスレイヤーはスコーチャーを抱えたまま跳び上がり、壁を、配管を次々に蹴って、ビル屋上の向こうへ消えて行った。「アーッ……畜生!」シンゴは身を起こしかけ、また倒れた。「大丈夫ですかシンゴ=サン」タバタが駆けつける。シンゴはぜいぜいと息をついた。「見りゃわかるだろうが」17
2013-04-03 17:03:14「デスネー、僕も色々やらかしちまって」タバタの手を取り、シンゴは身を起こした。「ニンジャに!ニンジャスレイヤーだ!どうなってやがる!モーティマー・オムラも逃走!」彼は悔しげに大声を出した。「ナメられたもんだぜ……」「あちッ」タバタは地面に落ちた金属片を拾おうとし、取り落とす。18
2013-04-03 17:06:35「ゲホッ……何だそりゃァ」シンゴは咳き込み、立ち上がろうとした。タバタは答えた「今の奴の装備かな。ア、無茶しないでくださいよ」「奴らの方から来やがったんだ。誰が好きこのんでこんな真似する」「病院行ってください」「後でな。防弾チョッキは万能だ。俺は無傷だ」「勘弁してくださいよ」19
2013-04-03 17:19:35……アサガオはハイスクール時代、チアマイコ部に所属していた。笑顔が素敵で、カワイイで、美しい髪を持っていた。カチグミ的な校内地位にあったわけだ。そんな彼女であったが、気がつけばネオカブキチョの末端、違法マイコセンター区画と道を一つ挟んだ場末のLEDバーに己を見出した。 21
2013-04-03 22:28:20陥穽のバリエーションは無限だ。備える備えざるを問わず、瞬きするコンマ数秒間の行き違いがあれば十分で、人は容易に不本意な状況に墜ち、それきり抜け出す事はない。アサガオの人生も、要はそういう事だった。だが、とにかく彼女は堕ちきる前に、己の身に何が起きつつあるかを自覚した。22
2013-04-03 22:37:54彼女はLEDバーのダンサーだった。花形のゲイシャなど全体から見ればほんの一握りに過ぎぬ。それ以外の者達は過酷な労働環境と低賃金に苦しみ、ヤクザやバイオレント・ヒモに搾取され、或いはZBRやタノシイ、もっと先鋭的なデザイナーズドラッグに手を出し、心身を、カネを磨り減らす。 23
2013-04-03 22:47:06