福島の小児甲状腺ガンが意味するものを、スクリーニング効果までふまえて考えてみる。

罹患率・有病率などの言葉の定義や、チェルノブイリの知見に立ち返って考えてみました。正直この問題はもうこれで終わりにしたいです。 コメント欄のNATROMさんとのやりとりから、ぷりりんさんの表に関する補足説明を追加しました(※) 平均有病期間に関するマキリンさんのまとめと、チェルノブイリにおけるスクリーニング効果に関するみーゆさんのツイートを追加しました。
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スカルライド @skull_ride

今回福島38000人の調査で小児の甲状腺癌が3人見つかった。これは点有病率。それに対して一般的な小児甲状腺癌の年間罹患率は10万人に0.2人。この年間罹患率と点有病率をどう関係づけるかが問題。

2013-04-08 12:23:38
スカルライド @skull_ride

ここで年間罹患率が0.2人だから、1~20歳の調査なら20倍して点有病率は10万人に4人とするのは間違い。20年間のどの時点で甲状腺癌が出てくるのか?どの時点で治療して対象から外れるのか?などを考慮していないから。

2013-04-08 12:23:51
スカルライド @skull_ride

真の有病率、つまり検査では分からないような癌の芽もあるという話は今回考えなくてよい。なぜなら検査しても分からないのだから。癌の芽みたいなミクロなものはエコーでは見えないし、核医学の検査でも分からない。

2013-04-08 12:24:04
スカルライド @skull_ride

過去のスクリーニングと今回のスクリーニングは違うというのもおかしい。前向きコホートとか後ろ向きコホートとかいう事ではない。エコーで結節の大きさや形をチェックして、癌が疑われるものを細胞の検査にまわすという基本的な流れは同じはず。

2013-04-08 12:24:16
スカルライド @skull_ride

従って重要なのは、被曝がなかった場合に推計される点有病率と、今回の福島での点有病率を比べること。ここで20年間の累積罹患率や、年間罹患率×20といった数値を出してくると話がおかしくなる。純粋に点有病率と点有病率を比べればよい。

2013-04-08 12:24:27
スカルライド @skull_ride

過去の年間罹患率から被曝がなかった場合の点有病率を推計する方法は以下のマキリンさんのツイートを参照↓。がんセンターのデータベースにある年間罹患率から定義に従って計算すればいい。被曝がなかった場合の点有病率は10万人あたり0.72人と推計される。

2013-04-08 12:24:38
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

【完成】pririnさん作成「甲状腺癌患者の推計」 https://t.co/jVz5wSAIGb … 甲状腺がんの罹患率と点有病率の関係をわかり易く解説。また、18歳以下についてのそれらの値も見積もられている。

2013-04-05 08:37:09
スカルライド @skull_ride

チェルノブイリでは密な甲状腺スクリーニングによる見かけの罹患率増加は1.5~3倍程度と評価されている(みーゆさんの以下のツイートを参照↓)。先ほどの推計点有病率10万人あたり0.72人は年間罹患率の3倍ちょっとなので妥当と考えられる。

2013-04-08 12:24:48
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

チェルノブイリでは、密な甲状腺スクリーニングによる見かけの発症率増加は1.5~3倍程度と評価されている https://t.co/CgZsPFUb https://t.co/aKVcCVJ0 https://t.co/EoT0YuUw https://t.co/t7SsRHm2

2013-02-13 21:26:57
スカルライド @skull_ride

つまりスクリーニング効果までふまえた上で比べるべきは、推計点有病率10万人あたり0.72人と、今回福島の38000人あたり3人。あくまで推計値と実測値の比較だが、理論的にこういう比較をすれば大きなカン離れをしなくてすむ。

2013-04-08 12:24:59

※ぷりりんさんの表は年間罹患率の和をとることで潜在癌を掘り起こしたものです。自覚症状がありかつスクリーニングで分かるケースは拾えますが、自覚症状がなくスクリーニングで分かるケースは拾えていません。その分がスクリーニング効果としては過小評価になります。一方治療したり死亡したりしてドロップアウトするケースを考慮していないので、その分は逆に過大評価になります。

スカルライド @skull_ride

もう一つ重要な点は、岡山大の津田先生の言う通り http://t.co/OPaCJ9uYCs 点有病率≒年間罹患率×平均有病期間であると近似されるという事。このことを分かっていれば点有病率が年間罹患率の100倍まであり得るといったトンデモ意見は完全に否定される。

2013-04-09 13:32:14
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スカルライド @skull_ride

別の見方をするとスクリーニング検査とは、年間罹患率を点有病率に近づける行為であるともいえる。チェルノブイリにみた見かけの罹患率増加1.5~3倍程度という数値は、平均有病期間(年数)より小さくなると考えられる。

2013-04-09 13:52:45
スカルライド @skull_ride

もうこの問題にあまり時間をとられている場合ではないでしょう。津田先生の言うとおり多発はありそうなので、他の原因の検索や、初期被曝の再評価など次のステージに進んだ方がよいのではないでしょうか。

2013-04-08 13:21:15

Masato Ida, PhD @miakiza20100906

甲状腺がんのスクリーニング効果にふれた論文 1: Ron ら(1995年) http://t.co/edfYiRvKcL  被爆者: 2.5倍, 子供時代に放射線治療を受けた米国人: 7倍

2013-05-02 20:11:06
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

甲状腺がんのスクリーニング効果にふれた論文 2: Ivanov ら(1997年) http://t.co/38hmOgHiN3  ロシアのチェルノブイリ緊急作業員: 2.6倍

2013-05-02 20:11:32
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

甲状腺がんのスクリーニング効果にふれた論文 3: Ivanov ら(1999年) http://t.co/H2W9z7TtJ3  チェルノブイリ後のロシアの子供と大人: 1.6倍

2013-05-02 20:11:59
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

甲状腺がんのスクリーニング効果にふれた論文 4: Ivanov ら(2012年) http://t.co/tASdAxpgDa  チェルノブイリ後のロシアの子供と大人: 約 8倍(事故時に17歳以下), 約 4倍(事故時に18歳以上)

2013-05-02 20:12:52
Masato Ida, PhD @miakiza20100906

やはり、何十倍にもなったという論文は見つからない。

2013-05-02 20:14:58

関連まとめ

まとめ 平均有病期間について どんなモデルの場合に「有病率/罹患率=有病期間」になるか、 平均有病期間の平均とは何に対する平均なのか、 どんな場合に「有病率/罹患率≒平均有病期間」が良い近似となるのか、 など考えてみました。 まとめの前半部分は、紙と鉛筆を用意して、自分でグラフを描いたりしないと分かりづらいかもしれません。 まとめの後半の部分は、相変わらず「強烈に低レベル」な所から誤爆があったので、それに関するツイートをまとめてみました。 6727 pv 34
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まとめ 有病率と罹患率に関する、とある図が完成するまでの一部始終。さらに罹患率から点有病率の推計まで。 小児甲状腺癌のincidenceは21歳未満で100,000人あたり1~6人と言われているようですが、これは恐らく累積罹患率です。これを今回の福島の点有病率と混同すると話がややこしくなります。仮に年間罹患率だとしても、それを単純に20倍にして「小児の甲状腺癌は探せば多い」とするのは不適切だいうことです。(最後に罹患率から点有病率への推計を追加しました) ちなみにアメリカでは20歳未満の「年間」罹患率は100,000人に1人以下のようです。 http://cebp.aacrjournals.org/content/18/3/784.full.pdf+html 図のダウンロードはこちらから→ https://t.co/7yVIIOFtV9 4958 pv 87 2 users 1