だいさんかい

2011.3.11の13時以降(第2回twitter小説大賞の〆切 から 2013.4.12の13時まで この中から10作品応募しました。
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とおる7th @windcreator

“滅ぼしたい”だなんて思わない。微塵も思わない。私は知っている。夜明けの光が世界を起こす瞬間を。踏み跡の無い白雪の頂き、息を呑む空。晴れと雨との境界線。波に揺られる旅路。雷が謳い躍る夏の夜、牛の声。飛び出した心臓を呑み込む恋。まだ見ぬ世界が明日の私を待っている。 #twnovel

2013-04-12 00:25:11
とおる7th @windcreator

桜が散る。結局、花見はせずじまい。毎朝見掛ける桜並木も、横目に通り過ぎるだけ。まばらになった枝には、既に葉が芽吹いて青い。そうしてまた季節が巡る。あの葉もまた、寒風に散る。そうしてまた季節は巡る。いずれは、僕も。そして、貴女も。「だから今から、君と一緒にいたい」 #twnovel

2013-04-11 20:23:41
とおる7th @windcreator

夢屋を生業にしている。やぁ、おはよう。よく眠れたかな? 全然さっぱりちっとも眠れてない顔をしてるね。君は今、夢を喪って眠れない。そんな君の為にこそ僕ら夢屋がいるのさ。さて早速、夢を創ろう。君の今までを、そしてこれからの事を、聴かせて欲しい。それが夢の材料なんだ。 #twnovel

2013-04-05 13:59:47
とおる7th @windcreator

桜が舞う中の入社式。なんでも、桜が咲いて天気も好いなら外でやるか、との一言で青空入社式になったらしい。最終面接で対面した厳つい壮年が、大慌てで式場をセッティングする。社長挨拶に登壇したのは、一次から三次面接まで案内係を装っていた美人。「新社員諸君! 騙された?」 #twnovel

2013-04-01 23:38:36
とおる7th @windcreator

嘘みたいだね。三度目の出会いで彼女がそう言った。中学で同じ学級委員、同じ高校ではバスケ部とバレー部。そして、四月一日。新入社員の二人。内定者懇親会は身内の不幸で欠席だったとか。どおりで気づかないはずだ。苗字すら、変わっているのだから。「嘘と奇跡、どっちかなぁ?」 #twnovel

2013-04-01 13:44:55
とおる7th @windcreator

綿雲の間を縫うようにして飛行機雲が空を走る。ゴールで仰向けに寝転がると視界は空を丸呑みするほど広い。咥えたままのパンをお行儀悪くゆっくりと咀嚼しながら、少女は横目で隣の少年を見る。悔しがる2個下の男。いつか私を抜き去る少年の、手を取る。「次は、川魚獲りにいこ!」 #twnovel

2013-03-30 19:26:36
とおる7th @windcreator

彼女が欲しくなったので作った。最初は戸惑う事も多かったが、概ねうまくいっている。天然物の川魚に、養殖物では敵わない。敵わなくとも、美味しいものは美味しいのだ。僕の手作り彼女もそうだ。まだ動かないけど可愛いのだ。後は、春の雷さえ落ちてくれば起動する設計なのだけど。 #twnovel

2013-03-30 17:05:14
とおる7th @windcreator

彼女は嘘を吐くプロフェッショナルだ。まず、表情に曇りがない。これだけで9割の人間が彼女を信じる。柔らかく、感情豊かで、大らかに何もかも受け止める。そんな彼女は、嘘を吐くプロなんだ。そもそも”俺の事が好き”だなんて罰ゲームの定番だろ? 俺は、簡単には騙されないぜ? #twnovel

2013-03-28 00:16:15
とおる7th @windcreator

初対面の嫁は真顔で言った。「私は未来から来ました」僕は信じなかったけれど面白いと思った。「タイムマシンの乗り心地はどうだった?」僕らは奇妙に気が合って、一ヶ月もしないうちに結婚した。結婚前夜、嫁はネックレスを自分で壊した。「未来には、あなたと」僕は今、半信半疑。 #twnovel

2013-03-26 20:31:33
とおる7th @windcreator

桜。彼女は振り向かない。さくら、サクラ、櫻。三度イントネーションを変えて呼ぶ。彼女は振り向かない。スタスタ先を歩く。彼女の名の由来、町一番の並木のド真ん中を、車の通れないその道を、世界を統べる女王のように。「さっちゃん」跳ねるように、悪戯笑みの幼馴染は振り返る。 #twnovel

2013-03-26 00:17:44
とおる7th @windcreator

春を追いかけるのを生業にしている。秋とは違って、春は突然一斉に目覚める。だから追い駆けるまでもないのだと、四季追いの中でも春を追う者は極端に少ない。だけど私は、春を選んだ。未だ”春起こし”の影すら踏めないけれど、諦めない。ザックを背負い、桜前線を追い越し駆ける。 #twnovel

2013-03-23 17:24:22
とおる7th @windcreator

『今、会いたい』声だけが届く。『今、あなたに会いたい』静かな、だけど深く落ち着いた声。『18歳までなんて待てないよ。今、結婚しよ?』わからない。彼女は泣いていただろうか。それとも怒っていたのか。『聴いたら今すぐ迎えに来てね』今はもう聴けない声を、幾度も再生する。 #twnovel

2013-03-22 00:07:06
とおる7th @windcreator

駅からは彼の家の方が近い。歩いて五分、ただしボロボロ。自分の部屋は自転車で10分。迷いは一瞬、女は度胸。普段は強がって言えない”会いたい”。チャンスは逃せない。傘が全く仕事をしてくれないけれど、それはそれでいい仕事。「雨宿りさせて」服を脱ぐのに言い訳はいらない。 #twnovel

2013-03-18 21:56:59
とおる7th @windcreator

盃 晩酌 日本酒 夫婦二人 妻料理美味 言葉笑顔満開 告白感謝妻嬉泣 照笑触唇接吻 空皿泡水洗 御馳走様 甘果実 風呂 寝 #twnovel

2013-03-17 19:15:38
とおる7th @windcreator

就活で特に希望もなく、なんとなく面接を受けてたら、受かってしまった。「君は無心なのがいいね」だとか。職業、神様。とりあえず、と目の前に出されたのは幾つもの楕円が複雑に重なり合った大きな模造紙。「入社祝い。一つ丸を描いて」描く。「いいね。箒星にしよう」初仕事は星。 #twnovel

2013-03-14 22:36:19
とおる7th @windcreator

メイドのメイは新しい箒を探していました。頑張り屋さんのメイはすぐに箒を潰してしまうのです。頑丈で素敵な箒を、メイは自分で作ろうと思いました。メイは星が好きです。夜空ばかり見上げてよく転びます。ふと閃いたメイは、この夜空から箒星を捕まえて、箒にしようと決めました。 #twnovel

2013-03-14 20:42:30
とおる7th @windcreator

三倍返しを生業にしている。15歳。生意気だと殴られて三倍殴り返した俺は次の日、更に三倍殴られて倒れた。怪我だらけの俺に泣きながら平手打ちをして怒る彼女を、俺は抱き締めた。彼女の涙を三倍返せる日なんて来ないと思った。だからこそ、俺は三倍返し続けてる。感謝と笑顔を。 #twnovel

2013-03-14 20:11:35
とおる7th @windcreator

吸光鬼たちは、街の光を、輝かしい希望を、夜毎奪いながら闇を徘徊する。ご覧、あの街灯も光を奪われている。よく見てご覧、あの周りは月明かりさえ奪われて暗いのだ。闇が深いほどに、光を奪った奴は強い。気を付けなくては。君のような将来有望な娘は、特に。もう、遅い、けれど。 #twnovel

2013-03-12 19:33:05
とおる7th @windcreator

彗星ボールペンで書いた文字は、同じ彗星が巡って来ない限り読めない。それを知って、二度と巡ることのないパンスターズ彗星ボールペンを買った。走り書きをしても、何も書けない。そうだ、まだ北半球では彗星の光が届いていないのだ。一枚の文を綴る。一度きりの機会に、渡す為に。 #twnovel

2013-03-12 07:14:51
とおる7th @windcreator

後日、午後五時お約束。午前うきうき誤字も無く。ご自慢の喉、知らず鼻唄。御意見御無用、残業不要。五時を待たずに、Go デート。午後五時約束君と僕。逸る気持ちはゴトゴト揺れて。ご予約の店、探す人影。午後五時目が合い、ご対面。豪華なご馳走、御注文。後日再び、また後日。 #twnovel

2013-03-04 23:36:02
とおる7th @windcreator

雛人形を片付けながら、母と話した。なんだか久しぶりな気がする。「彼氏が出来たら連れて来てね」「まだ、そんなんじゃないし」お互いに顔を見ないからだろうか。言葉は静かに零れ、雛たちは無言のまま箱の中に帰っていく。「……楽しみね♪」口を滑らせたのには、後から気づいた。 #twnovel

2013-03-04 19:28:42
とおる7th @windcreator

幕引きを生業にしている。誰だって幕引きはしたくない。良い舞台なら名残惜しく、悪い舞台なら切ない。しかし、幕を引かない限り場転は出来ず、役者は舞台から降りられない。だからこそ、私が引こう。万雷の拍手の中でも、怒号とブーイングの中でも、後腐れなく。次代を始める為に。 #twnovel

2013-02-28 23:35:25
とおる7th @windcreator

終わりました。お疲れ様でした。お先に失礼します。一日を残し、一足先に終えた。今月は普段より短い。私のはそれよりも更にほんの少し短かったわけだ。見送りもなく立ち去る。忘れ物もない。帰路に記録をめくる。数え直す。わずか3桁。その重さと重ねた時を思う。最寄り駅は近い。 #twnovel

2013-02-28 01:44:42
とおる7th @windcreator

もう一度会うことがあったなら、名を聞いて。運命も赤い糸も信じないけれど、名を呼ぶ声は信じられる。一期一会のこの世界で、三度出会った人ならば互いの名を忘れたくはないもの。さようなら名も知らぬ人、縁を信じて今は名無しの別れを。忘れないで約束を、いつか私の名を呼んで。 #twnovel

2013-02-26 00:10:40
とおる7th @windcreator

深入りするなよ。上司の口癖である。月に一度の部署飲みの席でも、上司はほとんど自分の事を話さない。渋いおじさんキャラ、好みなんだけどなぁ。酒任せに頬をつつく度、苦い顔で言われる。俺に深入りするな。でも私、事前情報とネタバレが少ない程どっぷりハマるタイプなんですよ? #twnovel

2013-02-25 00:05:43
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