モーサイダー!~Motorcycle Diary~Episode of Spring III~

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IngaDo type-RR @mor_cy_dar

モーターサイクルダイアリー~Episode of Spring III~ #mor_cy_dar

2013-04-17 19:18:38
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「勝負……だって?」  抑え気味の口調。どうでもよいことを装いつつ、その内に潜んだ高揚感を三鳥栖志智(みとす しち)の背中に立つ日原院亞璃須(にっぱらいん ありす)は感じとっている。 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:19:44
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「ああ、そうだ。  自己紹介が遅れたな……俺は芦田。芦田浩平(あしだ こうへい)だ。境林大学の二年生だ。  あんたは?」 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:19:58
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「……三鳥栖志智。高三」 「高校生なのか。同い年くらいかと思っていたぜ」 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:21:15
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 喉から飛び出してしまいそうな何かを、締め込んだボルトでむりやり押さえつけるような、志智の言葉。  対して芦田と名乗ったCBR250RRの主には、そんな感情の機微が伝わっていないらしい。 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:21:27
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

(たぶん……わたくしだけが、今の志智をわかっている)  亞璃須が口元を笑わせてしまうのは、そんな優越感からだった。 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:21:43
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「勝負、って言われても。芦田━━『さん』は速そうだし、俺なんかじゃかないませんよ」 「つまらない気遣いはいらないぜ。同じバイク乗りじゃないか」 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:22:11
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「三鳥栖(みとす)……とか言ったな。  あんたは速い。俺はあんたの走りをこの目で見ている。謙遜しても、仕方の無いことだぜ」 「………………だけど」 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:22:34
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「………………だけど」 「競い合いがイヤだ、っていうならそれでもかまわない。  俺は自分の走りがどんなレベルにあるのか、知りたいだけなんだ」 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:22:55
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「そのためには、おなじ二輪同士……追いかけっこするのが一番手っとり早いからな」  にやりと笑いながら、芦田はCBR250RRのセルスターターを回した。 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:23:38
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 かしかし、と四つのピストンが上下する音。  すぐにはかからない。しかし、芦田が軽くスロットルをひねると、250cc四気筒エンジンは目を覚ました。 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:24:01
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「確かにエンジンのポテンシャルだけでいえば、VTなんかこいつの敵じゃないが━━」 「!」  志智が目を見開いたのは、挑発の言葉に反応したわけではなかった。 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:24:21
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 しゅんしゅんとニュートラル状態で吹け上がるそのエンジン音。  軽やかでありながら、それは志智が知っているどんなエンジンよりも鋭く、そして芸術的な高音を響かせている。 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:24:44
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「峠を走るなら話は別だ。  バイクの速さなんてものは操るライダーの腕だ……VTであれだけ走れるんだから、それはあんたにもわかるだろう」 「………………」 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:25:06
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「俺はあんたの速さをリスペクトしているんだ。  だけど、自分の腕にも自信があるつもりだ。だから、競って……比べてみたい」 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:25:54
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「どうだ? わからないかな、この気持ちが」 「それは━━」  逡巡するように志智が視線を落としたその瞬間だった。 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:26:16
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「いいですわよ」  日原院亞璃須(にっぱらいん ありす)の声がひびく。  CBR250RRのエキゾーストノートにかき消されないよう、彼女にしては大きな声で。 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:27:26
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「その勝負、お受けしますわ。MC22とスパーダなら、車体的にもちょうど合いますしね」 「……おい、亞璃須」 「なんだ、このゴスロリお嬢ちゃんは。三鳥栖━━あんたの知り合いか?」 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:28:09
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「いや、こいつは━━」 「わたくしは志智のクラスメイトです。そして、彼と特別な関係にある者です」 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:28:31
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 傲然と胸を反り返らせつつ宣言する亞璃須の傍らで、三鳥栖志智は「違う違う、こいつが言ってるのはガセだから」と言わんばかりに、チョップの形に立てた右手を振っている。 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:28:49
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「ああ、その……なんだかよくわからないが……」  芦田はよっぽど亞璃須の行動が予想範囲外だったのか、ぽかんと大口をあけたあと、後頭部をかきながら言った。 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:29:14
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「つまり、あんたが三鳥栖が勝負を受けることを……保証してくれるってわけか?」 「そう思って頂いてかまいませんわ」 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:29:43
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「おい、待てよ亞璃須。俺は受けるなんて一言も━━」 「たとえ志智がイヤだと言っても!! わたくしが! このわたくしがかならず承諾させてみせます!!」 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:30:22
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

「お、お前な……」 「………………いやまあ、それならそれで俺としては好都合だが」 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:33:13
IngaDo type-RR @mor_cy_dar

 頭を抱える志智と、目をきらきらさせて断言する亞璃須を見くらべて、芦田は何を思ったのか。  懐疑か。同情か。  あるいは、面倒そうだから詳しく追求するのはやめておこうというあきらめか。 #mor_cy_dar

2013-04-17 19:33:42
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