HESH(粘着榴弾)と“大西洋の壁”の意外な関係

HESH(粘着榴弾)と言えば105mm L7戦車砲で有名ですが これの開発にはどうやら、ドイツが築いた“大西洋の壁”要塞が関係していたのではないかなあという小話
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えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

HESH(High Explosive Squash Head)こと粘着榴弾は、ひょっとして“大西洋の壁”によって生み出されたんじゃないかしら、などと電波を受信。そこに至る妄想の流れを、つらつらと書いてみます

2013-04-18 22:56:21
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

さて、このTLじゃ釈迦に説法かもしれませんが、HESHとは極めて薄い弾殻の榴弾にプラスチック爆薬を充填した対戦車用砲弾の一種です。これが装甲に命中すると弾全体が潰れ、十分に密着したところで弾底信管により起爆、衝撃波により装甲裏面を剥離させて、その破片により内部を破壊します

2013-04-18 22:58:53
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

このあたりの現象は実際どういうことなのか、私はよく知りません。実際詳しい人がいそうでもありますし、今回は本題でもありませんから、原理面は「まあそんな感じのもの」ということで置いておきます

2013-04-18 23:01:45
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

HESHと言えばL7 105mm戦車砲のそれが有名です。しかし(世界最初のHESHはご存知の方もいましょうが)、第二次大戦中に英国で開発された無反動砲、通称「バーニー・ガン」用に開発された「ウォールバスター」弾でした http://t.co/D4DdpWX5MO

2013-04-18 23:06:03
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

バーニー卿が発明した一連の無反動砲については、このブログ記事がわかりやすいです 蛇乃目伍長の「エアフォースの英国面に来い!」 Mk.2 http://t.co/iuJvmbxqwk この記事では3.45インチ版と3.7インチ版バーニーガンについて触れられています

2013-04-18 23:10:26
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

性能についても軽く見てみますと、3.45インチ(87.6mm)版バーニーガンは重量75ポンド(34kg)で、11ポンド(5kg)の砲弾を初速600ft/s(182m/s)で撃ち出します。HESHを用いると150mm厚の装甲から4.5kgの破片を剥離させる能力があるとか

2013-04-18 23:14:57
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

HEATは僅かなガスとライナーと装甲の破片を車内に吹き込むことしか出来ませんから、HESHの4.5kgの破片効果は絶大です。本砲の初速は当時の対戦車ロケット弾の飛翔速度の倍近いので命中率も高い。当時としては極めて強力な武器と言えます http://t.co/AhElCMLs63

2013-04-18 23:18:42
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

3.7インチ(94mm)版は重量375ポンド(170kg)。初速100ft/s(305m/s)で発射される22.5ポンド(10.2kg)砲弾は10インチ(254mm)までの装甲に有効。当時の英軍対戦車砲の中で最も強力だと言えましょう http://t.co/806IDyHmoy

2013-04-18 23:22:00
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

さて、先のブログ記事では3.45インチ版、3.7インチ版バーニーガンについて触れられてましたが、実は他に95mm版と7.2インチ版もありました。これらは全て並行して開発されたようです

2013-04-18 23:28:55
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

注目すべきはこれらの用途です。3.45インチ版は三脚だけでなく肩撃ちも可能でしたから、PIATの代替的な立ち位置になります。より大型の3.7インチ版は対戦車部隊向け装備。95mm版は3.7インチとほとんど口径が変わりませんが、こちらは空挺砲兵向けとされていました

2013-04-18 23:32:34
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

では、最大の7.2インチ(183mm)版は一体なんの目的で開発されたのでしょうか? 答えはなんと「大西洋の壁を破壊するため」でした。ウォールバスター弾のうち、少なくとも7.2インチ無反動砲の用のものは、文字通り大西洋の壁を打ち砕くために開発された弾なのです

2013-04-18 23:42:43
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

そも、HESH以前の対トーチカ砲弾は、弾殻が厚く重い「対べトン榴弾(破甲榴弾)」が主流でした。しかし無反動砲では、この手の重榴弾をコンクリートに十分食い込めるほどの高初速で撃ち出すことができません。無反動砲で要塞を潰すには、これまでに無い種類の砲弾が必要だったわけです

2013-04-18 23:44:46
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ウォールバスター弾ことHESHが最初は何の為に開発されたか、実際のところはっきりしません。しかし前述のような無反動砲の特徴と7.2インチバーニーガンの用途、そして何より「ウォールバスター弾」という名前から察するに、元来は“大西洋の壁”を潰すための砲弾だったのではと推測できるのです

2013-04-18 23:46:51
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

当時の英国がどんなwallをbustしたかったか。それは“大西洋の壁”か、その先の“ジークフリート線”しか考えられません。後者に対してはトータス重突撃戦車が開発されていますが、そのための橋頭保はバーニーガンによって大西洋の壁を打ち砕くことで確保するつもりだったのではないでしょうか

2013-04-18 23:51:27
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

ちなみに、バーニー卿は他に8インチ無反動砲も計画しています。これは91kgの砲弾を32km先まで飛ばす(つまり通常形式の8インチ砲より長射程!)という性能を予定していました。ただ、無反動砲形式でこれだけの性能を出すのは無理があったようで、試験での最初の発砲で破損してしまい中止に

2013-04-18 23:53:51
えすだぶ@C103日曜東3"サ"-58a @FHSWman

こういう絵奇異を見ると、「大西洋の壁」と「ジークフリート線」は大いに連合軍を悩ませてきたことだなあと実感します。実際に進撃を阻んだ効果はさほどでなくとも、「要塞がある」という虚実織り交ぜた情報それ自体が、戦場以外の場所で絶大な戦果を挙げていたと言えるのではないでしょうか

2013-04-18 23:58:41