自作ツイッター小説まとめ。

拙作ツイッター小説のまとめ場です。随時更新。
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すなお @Svnao

#twnovel 犬の散歩中に出会ってひょんな事から家へ招かれる仲になったじいさんがいる。彼が誰も寄せ付けない偏屈ジジイとして近所で有名だというのは後から知った。「孫も家に上げないらしいじゃん、何で俺はいいの」と尋ねると、「犬が懐いたのはお前が初めてだ」といつもの顰め面で言った。

2015-09-07 12:59:04
すなお @Svnao

#twnovel 煙草やめなよ、と数年言い続けても聞かなかった恋人がついに禁煙したらしい。ファミレスの禁煙席で「何の心境の変化?」と尋ねると、「嫁さんが妊娠した」と言う。あ、奥さんいるんだ。へーそうなんだ。不思議と冷静に、デザートメニューを端から端まで頼み尽くす算段を始めている。

2015-06-11 00:31:19
すなお @Svnao

#twnovel 流星群の日、ベランダから物凄い音がした。ちょうど煙草を吸いに出るところだったので覗いてみると、物干し竿をへし折って星が墜落していた。飛べなくなって空に戻れないらしい星を、以来ベランダで飼っている。彼(彼女)が闇を食べるようになってから、家は夜でもうっすら明るい。

2015-05-26 07:56:43
すなお @Svnao

#twnovel 駅の階段で躓いた拍子に、魂が口から飛び出した。跳ね落ちたそれは通勤ラッシュに紛れてしまい、時間がなくて拾わずに出勤した。後々飲み会で先達に聞いて曰く、皆そうして失うものらしい。魂なんか持ってたらやってらんねえ、のだそうだ。それでも時折目で捜してしまうのだそうだ。

2015-05-18 23:15:26
すなお @Svnao

#twnovel 人生とはRPGのように自ずとレベルが上がっていって、装備も強くなるものだと思っていた。いざ大人になってみると、気づいたら心は剥き出しで丸腰で、レベルは最弱のまま、昔の傷すら治せなくて、出会う敵ばかりが強くなっていく。それでも戦っている。勝ち負けなんてなくたって。

2015-05-05 14:06:29
すなお @Svnao

#twnovel 2000日以上ぶりに目覚めた彼の乾いた唇から漏れた第一声は、「睫毛伸びた?」だった。思わず脱力する。「何そのコメント」「それと、増えた?」「睫エクだよ」「何それ、知らね。俺どんくらい寝てた?」「6年」「まじ?寝すぎた」あっけらかんと笑う。そうだ、これが彼だった。

2015-04-21 08:40:18
すなお @Svnao

#twnovel 「人の過去なんてどうでもいいじゃん」「良くないよ。例えば、あんたは大人だからドリンクバーでオリジナルブレンド作ったりしないだろ」「うん」「それが学生時代にやり尽くしたから飽きたってのとそんな馬鹿な事やろうとも思わなかったってのじゃ訳が違う」「ああ、解る気がする」

2015-04-16 08:12:48
すなお @Svnao

#twnovel どうしてそんなニセモノの皮をかぶっているのかと聞く人がいた。これは剥いてはいけない皮なんですと私は主張した。そんなことない、本当の自分を出してごらんとその人は剥き始める。ぺりぺり。ぺりぺり。ぺりぺり。玉ねぎのように層が剥がれ落ちていくと、後には何も残らなかった。

2015-04-15 08:10:51
すなお @Svnao

#twnovel 先の見えない日々に疲れ、ついに首を括ろうと決めた時、目の前に自分そっくりの男が現れた。曰く十年後の自分自身だという。「俺は今のお前の何十倍も楽しい生活してんだから勝手に人生中止すんな」と言い残して彼は消えた。しばし考えた末、踏み台から降りる。信じてやってもいい。

2015-04-14 23:41:22
すなお @Svnao

#twnovel 入社して2週間目、会社のロッカーが異次元へ繋がっている事に気づいた。その奥にはあたたかい世界が広がっていて、失敗して叱られても人間関係に辟易しても、ロッカーを開けて着替えて飛び込みさえすれば忘れられる。きっとみんながこの秘密の通路をどこかに持って働いているのだ。

2015-04-14 08:01:07
すなお @Svnao

#twnovel あの子が出て行ってからシャンプーの減りが遅くなった。やっぱ使ってたんじゃん。勝手に使うなって怒ったら使ってないってしれっと答えたくせに。最後まで嘘ばっか。出て行ったのも、嘘かも。湯をかぶる。水音が収まると玄関が開く音がしないか耳を澄ます。アパートの部屋は静かだ。

2015-04-08 23:26:03
すなお @Svnao

#twnovel ビルを囲んで拡声器を向け「きみは完全に包囲されている。今すぐ籠城をやめ、」と叫ぶ男たちを囲み「きみたちは完全に包囲されている。今すぐ籠城をやめる要求をやめ、」と叫ぶ男たちを囲み「きみたちは完全に包囲されている。今すぐ要求をやめる要求をやめ、」と叫ぶ男たちを囲み、

2015-04-07 08:02:28
すなお @Svnao

#twnovel 海の向こうに住むあの子に恋をした日、世界に言語が増えた。そして通貨が。単位が。それに時計が。生活の中にたった一つしかなかったものたちが日常に浸透していく。虹は必ずしも七色ではないことや、遠く離れていても分かち合えるものがある喜び、日本語では表せない感情を知る。

2015-04-03 12:55:06
すなお @Svnao

#twnovel 老いた母の手を引いて行く道すがら、今年も近所の桜が満開になっていた。ふと、まったく同じ木の下を昔は母が私の手を引いて歩いたのだ、ということを思い出した。季節は巡る。思わず立ち止まって見上げていると、そっと笑って髪についた花びらをつまみとってくれた、その手は同じ。

2015-03-31 11:12:42
すなお @Svnao

#twnovel 深夜の駅の改札前でいつも膝を抱えている女の子がいる。ああ幽霊なのか、と気付いたのは初めて見てから一週間後だった。季節が変わり春になった今でも彼女はマフラーぐるぐる巻きのままそこで縮こまっている。もし明日も会えたら、「桜を見に行かない?」と誘ってみるつもりでいる。

2015-03-30 18:58:14
すなお @Svnao

#twnovel 子供の頃は映画のおばけもアニメのヒーローも本の中の魔法もどこかに実在すると信じていた。異世界へ続く扉を探すのに夢中だった。大人になって、作り物だと解ったけれど、いっそう夢中でいる。だって全部は誰かが、自分が作れると知ったからだ。異世界へ続く扉の向こうに今はいる。

2015-03-25 08:02:49
すなお @Svnao

#twnovel 庭に猫を集めている。理由は特にない。みんなの真似をしただけだ。とにかく猫を集めている。猫は家の中にも上がり込むようになった。構わず集める。その内家中猫だらけになった。集める。完全に猫に占拠され猫を集める以外の事ができなくなっているのにも気付かず、猫を集め続ける。

2015-03-23 00:15:20
すなお @Svnao

#twnovel ダウンを着ている人もまだいる微妙な気候で、季節が変わった実感がないまま薄手のコートをクローゼットから引っ張り出したら、ポケットに映画の半券が入っていた。もう一緒にはいない人と観た。途端に心に溢れ返るのはあの空気の匂い、花弁の舞う景色、きらきらした歌、笑顔。春だ。

2015-03-20 18:24:31
すなお @Svnao

#twnovel 先細るばかりの国で懸命に畑を耕す人々がいる。王の政策に呆れひっそり出て行く人間が絶えないこの土地で、それでも好きだから暮らし続けようとしている。また家の灯りが減った事に、平民の街を見下ろさない王は気付かない。もはや好きなのかも解らない。みんな少しずつ疲れて行く。

2015-03-17 08:02:30
すなお @Svnao

#twnovel 肩甲骨は天使の翼の名残、尾てい骨は悪魔の尾の名残なのだと、母は話していた。「悪い子は悪魔になっちゃう?」とお尻を気にしながら尋ねると、「羽が欲しいならそういう行動をしないと」とただ笑った。今でも攻撃的になってしまった時などは尾てい骨を気にする。尾より羽が欲しい。

2015-03-16 08:18:37
すなお @Svnao

#twnovel 眠れない夜、午前3時、世界時計を眺める。憧れのあの人の住む街は昼時で、脳裏に朗らかな喧騒と良い匂いが漂う。午後の仕事が億劫な昼、午後1時、あの人の住む街は夜の入口で、グラスに触れる氷の音と暖かな家の灯りが浮かぶ。地球が丸いというありがたみを、眠い頭で噛み締める。

2015-03-13 08:52:21
すなお @Svnao

#twnovel 道を進んでいる。随分前に分れ道にぶちあたり、その内の一つを選んで歩き出した。残酷な事にこの道からは、他を進んだ仲間の楽しげな姿が見える。彼らの華々しい行末すらも。それでもこの道にしか咲かない花を見て、いつかその美しさを分かち合える人に出会う事を想い、進んでいる。

2015-03-09 23:11:35
すなお @Svnao

#twnovel 卒業式の日、あの子はメイクばっちりの目の縁を赤くしながら「泣かないって決めてるの」と頑張っていた。最後の記念撮影に向けて気合が入っているらしい。「何か涙が引っ込むような面白いこと言ってよ」「三年間ずっと好きだった」「…何それ」「笑えるだろ」もう顔を上げられない。

2015-03-09 18:57:32
すなお @Svnao

#twnovel 棘抜き院の定期検診前は毎回まだいいんじゃないかと億劫になる。「自覚症状が出る前に抜くのが大切なんです」と先生は話し、「さあ終わりました」と声を掛けられて下を見ると大量の棘に驚く。自分から生えた棘、外から刺さった棘。こんなのを心に刺してるから喧嘩は起きるのだろう。

2015-03-08 23:35:43
すなお @Svnao

#twnovel 長年作家志望の友人は用があると便箋に筆で文をしたためて寄越す。一々面倒なので「形から入るのも大概にしてメールを使え」と返事を送ったら『著名人の直筆の文書は後々価値が出るから書いているのだ。今に高値がつく』と返って来た。彼の発想にしては面白いファンタジーだと思う。

2015-03-04 01:08:51
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