「日本はなぜ勝てないのか」という問いの建て方が既に的外れ？

内田樹 @levinassien

今年24回目の新幹線で神戸に向かうなう。そろそろ雨が降りだしそうです。さ、仕事しよ。

内田樹 @levinassien

車内である雑誌の原稿を書きました。「日本はなぜ勝てないのか？」というお題。あのね・・・これが「日本企業はどうして世界市場でトップシェアをとれないのか？」というふうに読み替える人は、その段階でもうグローバリストイデオロギーに取り込まれているんですよ。

内田樹 @levinassien

この問いは「世界の国民国家はそれぞれの国益を最大化するために命がけの競争をしている」というのが前提にあるから出てくるわけですけれど、そんなことを不可疑の前提にしていいんですか？

内田樹 @levinassien

実際にはこの問いから導かれる実践的な第二の問いは「では、どうやって国際競争力のある企業の製造コストを国民国家が負担して、彼らの収益を増大させるか？」という話に一気に矮小化されるわけですから。

内田樹 @levinassien

でも、グローバル企業って、経営者は外国人、株主も外国人、社内公用語は英語、従業員も外国人、生産拠点は海外、法人税の納付先はタックスヘイブン。別に「日本の企業」じゃないんです。

内田樹 @levinassien

「日本の企業」というのは国民経済内部的な存在です。だから、最優先課題に「どうやって１億３千万の同胞を食わせるか」を掲げている。どうやって雇用を増やすか、どうやって雇用条件を引き上げるか、どうやって地域経済を潤すか、どうやって国庫に法人税を納めるか、それを考える企業のことです。

内田樹 @levinassien

そういう「日本の企業」のためなら、国民国家はその資源を割いて支援すべきでしょう。同じ目的なんだから。でも、今のグローバル企業はそうじゃありません。グローバル企業は製造コストを国民国家に「外部化」するために、国民国家を利用しているだけです。

内田樹 @levinassien

新幹線や高速道路を作らせて流通コストを外部化する。原発を稼働させて製造コストを外部化する。有害物質を排出して環境保護コストを外部化する。「英語が話せて、辞令一本で海外に赴任して、月３００時間働いて、最低の賃金を甘受する」若者を「グローバル人材」と称して人材育成コストを外部化する。

内田樹 @levinassien

国民国家はうまく使えば、グローバル企業にとって「使い勝手の良い」装置です。国民国家の成員が「お国のため」に奉仕する気概があり、勤労・納税の意欲が高く、遵法精神に富んでいる方がそうでないよりもコストの外部化がしやすいですから。

内田樹 @levinassien

だから「企業が収益を上げることが国益の増大なのだ」というロジックは彼らの生命線なのです。そのために「日本はどうしたら勝てるのか？」という問いを立てる。それは「私企業の収益を上げるために、あなたがたはどこまで『外部化されたコスト』を負担する気があるのか？」という問いに他なりません。

内田樹 @levinassien

だから、こんなお題で特集を組むような媒体はそのこと自体で、すでに批評性を失っているということである、ということを書きました。果たしてこの媒体はこの原稿を受理してくれるでしょうか？受理しれくれなかったらブログに全文掲載しますね！

内田樹 @levinassien

たくさんRTありがとうございます。みんな同じことを考えているんですね。「勝てる企業を国民全体で支援すれば、結果的に企業の収益がトリクルダウンして国益増大につながるんだよ」という聞き飽きた反論が予想されますけれど、僕はそんな与太話を信じないということを申し上げているわけです。

中田考 @HASSANKONAKATA

リヴァイサン（国民国家）に仕えるか、マモン（企業）か。どちらも所詮偶像崇拝。→　@levinassien 国民国家はうまく使えば、グローバル企業にとって「使い勝手の良い」装置です。国民国家の成員が「お国のため」に奉仕する気概があり、勤労・納税の意欲が高く、遵法精神に富んでいる…

内田樹 @levinassien

@HASSANKONAKATA おっしゃる通りなんですけど、手持ちの制度として今のところそれしか使えるものがないんですよ。カリフ制を日本に導入するためには、まず日本国民にイスラムの教理をご理解いただくところから始めないといけないし・・・

内田樹 @levinassien

などとぷりぷりしながら書いているうちにはや京都です。神戸に帰ったら、次は朝日新聞のオピニオンの原稿を書きます。これも同じ話になりそうです。こんなにぷりぷりしているのはもちろん「世界同一賃金」と「年収一億と年収百万」への二極化を偉そうに宣言した男のせいです。

内田樹 @levinassien

（しばらくツイッターがつながりませんでしたが、さっきの投稿の続き）あんな経営者をロールモデルにすれば「日本が勝つ」と本気で信じている人がまだいるんでしょうか？そういうことをこれからも喧伝する媒体は悪いけれど「もうおしまい」ですよ。頭悪すぎます。

中田考 @HASSANKONAKATA

日本は今、偽の「グローバリズム」の仮面をかぶったマモンと偽の「ナショナリズム」の仮面をかぶったリヴァイサンという二つの敵、偶像神と戦わなければならない、という困難な状況におかれています。この南極を切り抜けるためには、柔軟で強靱な理性と霊性が求められます。

内田樹 @levinassien

@HASSANKONAKATA おっしゃる通りです。でも、世界に通じる「普遍的対抗理念」て、僕には思いつかないんです。「普遍性」というものを狙ったときに人は必ず自分のローカリティを過小評価するという痛い体験が骨身にしみているので・・・

中田考 @HASSANKONAKATA

@levinassien 先生が御高著を韓国語に翻訳されて、先生の立論が韓国人にも通じることを立証されたように、「グローバル言語」と称する言語による発信で事足れり、とするのでなく、様々な国の人々とそのローカルな言葉で語り現実に通じた、という事実を地道に積み上げていくしかないかと。

内田樹 @levinassien

@HASSANKONAKATA はい、ありがとうございます。がんばります！(^^)/