平均有病期間について

どんなモデルの場合に「有病率/罹患率=有病期間」になるか、 平均有病期間の平均とは何に対する平均なのか、 どんな場合に「有病率/罹患率≒平均有病期間」が良い近似となるのか、 など考えてみました。 まとめの前半部分は、紙と鉛筆を用意して、自分でグラフを描いたりしないと分かりづらいかもしれません。 続きを読む
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年齢tにおける罹患率がa(t)の場合、有病期間がTで一定なら、累積罹患率は∫a(t')dt'、累積完治率は∫θ(t'-T)a(t'-T)dt'となるので、年齢tにおける有病率をF(t)とすると、F(t)=∫a(t')dt'-∫θ(t'-T)a(t'-T)dt'と表せます。ここでθ(t)は、t>0において1、t<0において0となるステップ関数です。(ただし死亡などによる生存率曲線の変化による影響は無視しています)

有病期間がTで一定の場合、イメージとしては、累積罹患率のグラフをt軸の正の向きにTだけ平行移動したものが累積完治率を表すグラフになります。したがって、累積罹患率から累積完治率を引いたものが有病率ですが、そのグラフがどうなるか考察することができます。

MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

罹患率が定数aで有病期間も年齢に依存せずTという最も単純なモデルの場合、有病率を年齢tの関数としてF(t)と表すと、F(t)=at-a(t-T)θ(t-T)となる。ここで、θ(t)はステップ関数。 http://t.co/HE5H3dSycA

2013-04-30 23:03:44
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

t<TにおいてF(t)=at、t>TにおいてF(t)=aTとなる。この場合、0歳児の完治が始まった後の有病率aTを罹患率aで割るとaT/a=Tとなり、正しい有病期間になる。

2013-04-30 23:08:58
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

罹患率が定数aであるが有病期間は年齢に依存しT(t)と表せるモデルの場合、t<T(t_min)においてF(t)=atとなるが、t>T(t_min)においてF(t)は一定とはならず、tに依存するようになるが、F(t)/a≒<T(t)>と考えてよい。< >は時刻t付近の平均。

2013-04-30 23:21:03
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

また、T(t_min)は最初に完治した人が出るまでの時間。したがって、罹患率が定数とみなせるモデルでは、完治した人が出た後は、ある年齢の有病率F(t)/罹患率a≒その年齢付近の平均有病期間<T(t)>になる。

2013-04-30 23:34:54
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

これは、あくまで罹患率が定数とみなせる場合の話(罹患率がほぼ定数とみなせる場合は、ある程度良い近似になると思うけど、)で、罹患率が年齢に大きく依存するような疾患については、こんなことは言えない。

2013-04-30 23:36:05
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

罹患率がbt(bは定数)で有病期間は年齢に依存せずTというモデルの場合、有病率はF(t)=(bt^2)/2-θ(t-T){b(t-T)^2}/2となる。これは、t<TにおいてF(t)=(bt^2)/2、t>TにおいてF(t)=bTt-(bT^2)/2。

2013-05-01 07:42:10
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

したがって、t>Tにおいて、F(t)/(bt)=T-(T^2)/(2t)=T{1-T/(2t)}となるので、T<<tの場合のみ、F(t)/(bt)≒Tになる。

2013-05-01 07:54:05
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

罹患率が年齢に依存する場合は、平均有病期間が年齢に対してずっと短い場合だけ、有病率/罹患率≒平均有病期間とみなせそうである。

2013-05-01 07:26:54
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

年齢tでの罹患率がa(t)、有病期間がT(t)の場合の有病率をF(t)とすると、 F(t)=∫a(t')dt'-∫θ(t’-T(t’))a(t'-T(t’))dt' という感じ。ここで、θ(t)はステップ関数。http://t.co/HE5H3dSycA

2013-05-01 23:37:21

スクリーニングについて

MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

スクリーニングを行うと、通常の罹患率に対応する量がスクリーニングの基準に応じて変わるので、その量は「スクリーニング基準到達率」とでも呼んだ方が良いでしょう。その時、通常の有病率に対応する量が「スクリーニング検出率」に代わります。

2013-05-02 23:03:13
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

「スクリーニング基準到達率」と「スクリーニング検出率」の関係は、通常の罹患率と有病率の関係と同じです。スクリーニングによって有病期間は長くなりますが、考え方は同じです。したがって、通常の罹患率と有病期間と有病率の関係をきちんと理解しておくことは大切です。

2013-05-02 23:06:34
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

完治と判断される者がいない時点で実施させたスクリーニングでは、「スクリーニング検出率」は「累積スクリーニング基準到達率」と等しくなる。

2013-05-03 22:06:01

(以下、この場合についての考察です)

MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

年齢tにおけるスクリーニング基準到達率をg(t)、スクリーニング検出率をH(t)とすると、g(t)=ct^d(c,dは定数)の場合、 H(t)={ct^(d+1)}/(d+1)となる。

2013-05-03 22:06:44
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

したがってこの場合、「スクリーニング検出率」/「スクリーニング基準到達率」は、 H(t)/g(t)=t/(d+1)となり、いわゆる「平均有病期間」とは無関係である。

2013-05-03 22:10:58
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

仮にd=2とするとt=18歳に対して、H(t)/g(t)=t/(d+1)=6年となる。H(t)/g(t)はいわゆる「平均有病期間」ではなく、「スクリーニング基準に到達してからスクリーニングが実施されるまでの平均期間」と解釈したほうがよいものである。

2013-05-03 22:17:04
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

ちなみに、ICRP publ.103に掲載されているアジア人女性の甲状腺癌の通常の罹患率は50歳ぐらいまでは、だいたい年齢の2乗に比例しているそうです。 https://t.co/1kVPnvEwr8

2013-05-03 22:24:19
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

d=2とするとt=18歳に対して、H(t)/g(t)=t/(d+1)=6年となったが、0歳から18歳の集団に対してはそれぞれの平均を考えてみる。

2013-05-04 01:36:19
MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

τ=18歳として、<g(t)>={cτ^2}/3、 <H(t)>={cτ^3}/12より、 <H(t)>/<g(t)>=τ/4=4.5年となる。

2013-05-04 01:39:35

(ここで、< >はスクリーニングを受けた0歳から18歳までの集団における平均を表します。ただし、年齢の分布は一様であることを仮定しています。)

MAKIRINTARO @MAKIRIN1230

https://t.co/Vq5MGwmXOh pririnさん作成の表では、通常の18歳以下の罹患率と有病率はそれぞれ、10万人当たり0.21人/年、10万人当たり0.72人と見積もられたので、その有病率/罹患率は0.72人/(0.21人/年)≒3.4年であった。

2013-05-04 01:51:43

今回の福島県での甲状腺調査におけるスクリーニング基準到達率<g(t)>と罹患率<a(t)>を比較してみました。