2013.5.1 福島第一原発事故 不動産賠償について 紛争解決センターが和解案を提示 解説 中所克博先生

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リンク t.co 原発事故 不動産賠償で新たな和解案 NHKニュース 原発事故の不動産賠償について、国の紛争解決センターが「転居先で住宅を確保できるよう、事故前の不動産価格より賠償額を引き上げるケースもある」と&
弁護士中所克博 @K_Nakajo

土地の賠償につき,紛争解決センターが「生活再建」に配慮した和解案を提示した。近く詳しいコメントをするつもりである。とりあえず,第一報をご紹介しておく。最後に登場する妙なオッサンは無視していただきたい。  http://t.co/yxtviEv4jE

2013-05-01 00:26:28
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投①】先日,不動産賠償について非常に大きな動きがあった。紛争解決センターが,東電の賠償基準の不足を前提に,一歩踏み込んだ和解案を提示した。NHKが30日早朝のニュースで僅かに報じただけである。http://t.co/yxtviEv4jE

2013-05-01 15:41:02
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投②】ある被災者は,双葉町に土地建物を所有している。自宅として利用してきたが,原発事故のために避難を強いられた。土地は約520㎡と広大だが,公示地価(固定資産評価額ではなく)は1万8500円/㎡に過ぎない。いつ帰還できるか分からないため,移転も考えておられる。

2013-05-01 15:44:32
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投③】東電の土地賠償基準は,事故前価格と事故後価格とを単純に比べっこし,その差額を機械的に「損害」と見て同額を賠償するというもの。支払を受けた賠償額で他所に同等類似の土地を確保できるか否かなど知ったこっちゃない!そういうスタンス。特に地価が低いエリアの被災者は困ってしまう。

2013-05-01 15:48:41
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投④】センターの和解案も,そのことを正面から認めた。NHKのニュース画面に見えるのは,和解案の一部である。かなり見えづらいので引用すると「本件宅地の事故前価格の賠償額だけでは,赤字が生じる」と書かれている。http://t.co/yxtviEv4jE

2013-05-01 15:51:16
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投⑤】センターの和解案は,こう考えた。①双葉町の近傍で移転先を見つけるのは不可能である→②常識的に見て浜通りの被災者はいわき市への移転を希望すると想定する→③双葉町の公示地価は1万8500円/㎡だがいわき市の平均土地売買価格は2万9000円/㎡→④赤字が出てしまう。

2013-05-01 15:55:26
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投⑥】近傍類似の代替地取得が不可能→より地価水準の高い代替地への移転も相当である→より高くなる差額分の全額加算はさすがに抵抗あり→一部の加算を認めよう。・・・・・これがセンター和解案の思考である。

2013-05-01 15:59:02
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投⑦】センターによる2つの絞り。その1は,いわき市の平均土地売買価格2万9000円と双葉町の公示価格1万8500円の差額(1万0500円)の半分である5250円に限定して加算する。その2は,約520㎡全部でなく,我が国の都市部の標準的な宅地面積を考え300㎡の限度で加算する。

2013-05-01 16:02:49
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投⑧】な~んだ,双葉町といわき市の価格の半分だけのオンか。しかも所有している地積全部ではなく,300㎡止まりか。しかも,この2つの絞りの根拠がはっきりせず,「フル」と比べてニギリで約半分だけを加算したようなカンジ・・・。たしかに,このような不透明さがあることは否めない。

2013-05-01 16:06:01
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投⑨】だが,不透明さを越え,遙かにでっかい価値があると私は思う。画期的なのは次の3点。まずはその1。この和解案は,被災者の「生活再建」という視点を持っていること。対して,血液の循環がないサイボーグ的な東電基準(背後にある経産省の考え方も同じ)にはこの視点が完全に欠けている。

2013-05-01 16:12:28
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投⑩】画期的な理由その2。東電がサイボーグ的な基準に従い不動産賠償を始めた直後,いきなり「事故前価格の賠償額だけでは赤字が生じる」とダメ出しを食らわしたこと。ここに言う「事故前価格の賠償」とは,東電の不動産基準に基づく賠償である。のっけからアカン!と言った,しかもセンターが。

2013-05-01 16:16:08
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投⑪】そして3番目。不法行為損害賠償の世界では,いわゆる「差額説」が通説的な地位を占めてきた。差額説も,実は論者によって様々であるのに,不法行為前の状態の”金銭評価”=「¥」の差が「損害」であると信じている人々が少なくなかった。東電も経産省も,ともすれば裁判所もそう。

2013-05-01 16:19:54
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投⑫】今回の画期的な和解案を,不法行為損害賠償理論のどこに位置づけるのか?あるいは,人の予測を超えた前代未聞の大事故に遭遇し,実際の被害に目を向け思考した今回の和解案を契機として,何か不法行為損害賠償理論を考え直す必要性がありはしないか?損害論?因果関係論?あるいは懲罰?

2013-05-01 16:23:48
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投⑬】3番目は,問題提起に止める。私には,これ以上に何か考え意見を述べるだけの能力がないからである。だが,交通事故事案の処理を通じて確立され,簡単には動きそうにないとさえ思われた不法行為の損害賠償理論。人の根っこを奪う原発事故は,寝た子を起こする原動力として十分ではないか。

2013-05-01 16:28:59
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投⑭・最後】おお,画期的な和解案が出たぞい!これだけで終わらせるべきではない。この和解案は,大きな1歩ではあるが,決して2歩ではない。被災者のために使える武器にするには,この和解案を分析し,長所と短所を整理し,訴訟の場でも十分に通用する理論の形にまで仕上げておく必要がある。

2013-05-01 16:33:01
弁護士中所克博 @K_Nakajo

【連投(外伝)】センター和解案は,移転先候補地の地価との差額(一部)の上乗せを認めただけではない。東電基準は「増改築工事」の加算しか認めないのに対し,「改修費」もその一部が「建物の現存価値増加に寄与した」と言い,その加算を認めている。

2013-05-01 16:39:42
弁護士中所克博 @K_Nakajo

いまは,センターが被災者と東電の双方に書面で和解案を提示した段階。東電は呑むとも呑まないとも答えていない。だが,東電は「5つのお約束」を公表し,その3で「和解仲介案の尊重」を宣言している。これによれば,もはや東電に呑まないという選択肢などないはずである。

2013-05-01 16:44:03
弁護士中所克博 @K_Nakajo

NHKの取材では,【連投】で呟いたのとほぼ同じ内容をカメラの前で喋った。だが,限られた時間しかないので,大幅にカットされ編集てごく一部が放映された(放映された内容に文句はない!)。テレビでカットされた部分を,【連投】として呟いた次第である。疲れたので,書面の起案に戻ることにする。

2013-05-01 16:48:45

弁護士中所克博 @K_Nakajo

不動産賠償の疑問点を三つ。一つ目は、不動産の汚染により、被害者のどんな権利や法益が害されているのだろう?二つ目は、賠償と補償はそれほど異質なものなのだろうか?三つ目は、そもそも損害とは何を指すのだろうか?以上が疑問点、しかし無責任な言いっぱなし。だけ。

2013-05-01 19:00:06