ぼくがかんがえた至近未来的公安9課と社会福祉公社

ぼくがかんがえた至近未来的公安9課シリーズ(http://togetter.com/li/496405)とガンスリが混ざってなんかわけのわからないことになった。俺得。
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現場猫教授 @Dr_crowfake

「そういえば、上津課長はお聞きでしょうか? 子供の殺し屋を使う、我々とは別の対テロ機関を」桐島理事官は直球で質問した。排外主義テロリズムに対抗するため組織されたCTUは比較的まともな出自の人間が多く、操作方法も堅実だ。だがそこに全く異質な存在の影が差すのを、時々彼女は感じていた。

2013-05-04 18:24:23
現場猫教授 @Dr_crowfake

国家公安委員会直属の対テロ組織といっても、警視庁や警察庁、公安調査庁などといった組織との繋がりはある。そう云う場所から漏れ聞く噂、そして実際の任務におけるパターンの違和感。我々が知らない別の部門もまた、排外主義テロリズム対策に関与しているのではないかという疑念が、彼女にはあった。

2013-05-04 18:27:00
現場猫教授 @Dr_crowfake

そして、それが具体的な形を取ったのは、警備部の同期から聞いた噂だ。「おたくらCTUは、子ども兵を使ってるって聞いたぜ」「うちのアセットにはひとり未成年がいますが、大々的な運用はしてません。どこかで連絡が混乱したのでは?」桐島は答えるが、その言葉に戦慄を覚える。

2013-05-04 18:29:00
現場猫教授 @Dr_crowfake

日本における法の支配において、子供兵などという存在が許されるはずがない。それがもし必要とされており、実際に運用されているのであれば、それは日本警察の汚点であり、法治国家日本の法の支配の敗北を意味する。彼女はその場を早々に切り上げ、事態を掴んでいそうな上津課長と面談したのだ。

2013-05-04 18:30:46
現場猫教授 @Dr_crowfake

「ああ――国家公安委員会直属の外事2課、通称「アサガオ」だね。話は聞いてる。なんでもイタリアの「社会福祉公社」に範をとり、重度の身体傷害でQOLが著しく下がった子どもや、死病に犯された子供たちの保護者から認可を取って身柄を引き受け、完全義体化して運用してるらしい。ひどいねどうも」

2013-05-04 18:33:33
現場猫教授 @Dr_crowfake

上津はそう何気なさそうに応えた。桐島はさすがに唖然とした。「課長はその事実をお知りになりながら、我々にはお話にならなかった」「必要なかったからね。俺たち国内外の排外主義者を担当とするCTUと違って、アサガオはKRAのゲリコマ対策専任部隊だから。殺しに特化した連中だよ」

2013-05-04 18:36:16
現場猫教授 @Dr_crowfake

「しかしそのような組織が存在すること自体が、警察組織のおてんと、ひいてはこの日本の放置の敗北と、課長はお考えにならないのですか?」「上のほうはそう考えてないみたい。彼ら、イタリアでの一連の義体の活躍に目を留めてね。表向き福祉法人の形を取りながら、極秘で運用してる」「……!」

2013-05-04 18:38:36
現場猫教授 @Dr_crowfake

「まああれだ、上は多分子どもたちを使い潰して、適当な所で店じまいするつもりだろうな。実際、KRAの勢力撲滅には成功し続けてるし、今のところは、なんとかなってる。だけど君の言う通り、これが漏れたら大事だ。日本がひっくり返る」「課長個人はどうお考えですか?」

2013-05-04 18:41:08
現場猫教授 @Dr_crowfake

「「NEED TO KNOW」といいたいところだが、正直やきもきしてならんよ。しかも彼らは完全に独立部門だから、こちらから掣肘することもできやしない。上の連中の危なっかしい火遊びを、なまじ見える場所にいるからって見せられるのはたまったもんじゃない」「そうではなく、倫理的観点で」

2013-05-04 18:43:05
現場猫教授 @Dr_crowfake

「倫理的には完全にアウトだよ。使う側も使われる側もみんなそれは知ってる。知ってて見て見ぬふりをしている。でと。ぼくがなぜそんな情報を知っているかというとね、国家公安委員会からの通達があったんだ」「これは」「アサガオが「必要なくなった」場合、CTUが後始末をしろって命令」「……」

2013-05-04 18:45:32
現場猫教授 @Dr_crowfake

「命やQOLの代償として銃を持たされ、戦うための条件付けまで施され、担当官という相棒のためなら命を捨てることも厭わない、完全にしつけられた猟犬。人間の域からは、もう外されてしまってるんだよあの子供たちは。だから、必要がなくなれば処分される。処分できるのは、ぼくたちだけだ」「……」

2013-05-04 18:49:42
現場猫教授 @Dr_crowfake

「課長は、彼女たちを救えないとお思いなのですね」「義体システム・条件付けシステム自体が、緩やかな死への道筋であることはイタリアでもまだ克服されていないからね」「せめて自由にしてやるだけでも」「猟犬が飼い主を失った所で野良犬になるだけだよ。もうどうしようもないことなんだ」「課長!」

2013-05-04 18:52:51
現場猫教授 @Dr_crowfake

「我々にできるのは、アサガオが作戦しなければならないような状態を作り出さないよう可能な限り迅速かつ正確な捜査を行い、KRAの浸透を防遏し、可能なれば撲滅することだ。そして、最終的にアサガオの始末を秘密裡につけること。これだけだ。これ以外は、誰も得をしない。子供たち自身にとっても」

2013-05-04 19:03:10
現場猫教授 @Dr_crowfake

「それでは筋が通りません」「筋の通らないものを強引に通したせいで全てがおかしくなっているんだ。誰が悪いかというなら、まずはそいつだろうが……今更責任を問うても後の祭りだ」上津は気難しげにガラムを吹かし「ところで、なんであの子たちがアサガオって云われてるか知ってる?」と問う。

2013-05-04 19:05:28
現場猫教授 @Dr_crowfake

「朝に咲き誇れば、後は儚くしおれて落ちるだけの儚い花」「その通り。だからまあ、その間は少しでも面倒を見てやろうじゃないか」上津は遠い目をした。

2013-05-04 19:07:17
現場猫教授 @Dr_crowfake

「イタリアの義体化技術と条件付け技術は実のところ拡散していてね……。5年遅れくらいだが、KRAのゲリコマも義体化している可能性は高い。こちらとしても、対義体戦術を確立せにゃならん。そこでアサガオとの共同訓練になった」「いずれは始末する相手から技術を盗むんですか」「必要だからね」

2013-05-04 19:14:57
現場猫教授 @Dr_crowfake

「完全義体はこのように小柄だが敏捷で力も装甲倍力服並にあり、インファイトに入られたらまずい。できるだけ距離をとった戦闘を行うのが望ましいが、CQBでは困難だな」「のんきに講評してる場合ですか」「いや真剣に攻略法を考えているが」演習を見ながら秋山と鹿島がそんなやりとりを。

2013-05-04 19:18:21
現場猫教授 @Dr_crowfake

「しかしまあいつ見ても慣れんもんだ、俺の娘くらいの年頃のお嬢ちゃんが装甲倍力服装備の突入隊員を投げ飛ばして関節まで決めてるなんざな」「あんた娘がいたのか」「そりゃこの歳だしな……意外か」「ああ」「失礼ですな理事官殿」

2013-05-04 19:20:35
現場猫教授 @Dr_crowfake

「ほんの少し周りが優しくて、ほんの少し運の巡りが良けりゃ、そしてどっかのバカが不幸な子供を使い捨ての道具にするなんてふざけた判断をすることがなきゃ、あの子たちもきっと友達や家族に囲まれて普通に生きていけたんだろうな」「場を移すのは厳禁だぞ、最終制圧は俺達の仕事だ」「ああ」

2013-05-04 19:22:57
現場猫教授 @Dr_crowfake

「だがまあ正直完全義体相手じゃ通常の装甲倍力服では歯が立たん。第2世代の人工筋肉フィットネスタイプならもっと小回りがきくが、いかんせん俺らが振り回してるのはGMPGだ。対義体戦には、PDWのほうがよさそうだな」「そうだな。CQBマニュアルを書きなおす必要がありそうだ」

2013-05-04 19:25:54
現場猫教授 @Dr_crowfake

そのように、グラウンドの済に貼られたテントで話し合ってる秋山と鹿島のところに、とてとてと14歳くらいのスポーツウェアの少女が走ってくる。彼女は二人の前で頭を下げた。「今回は共同演習させてもらって、とても参考になりました! これからもよろしくお願い致します!」二人は顔を見合わせた。

2013-05-04 19:28:57
現場猫教授 @Dr_crowfake

「この訓練は互いに技術協力と交換を行うためのものだ。特段に感謝する必要はないよ。仕事の一部だから」と秋山。「しかしさっきの一本背負いはすごかったな、倍の体重のある隊員をぶんなげちまった」と感嘆を浮かべる鹿島。そこに彼女の「担当官」が現れる。一瞬で目つきが悪くなる二人。

2013-05-04 19:31:12
現場猫教授 @Dr_crowfake

「この娘が、なにか迷惑をおかけしなかったでしょうか?」担当官に対して「なに、たわいもないはなしをしていただけさ。休憩時間だ。好きにさせてやれよ」と秋山が険のこもった口調で応える。担当官は「義体の担当責任は24時間中ですからね……こちらも辛いところです」などという。

2013-05-04 19:32:57
現場猫教授 @Dr_crowfake

義体の少女は担当官の方を向いて「私、ご迷惑をお掛けしてませんよね?」と問う。それに対し、担当官はいかにも慣れた手つきで少女の頭をなで「ああ、第三部だよ。だけどあまり他のセクションの人と馴れ馴れしくするのは迷惑になるかもしれないから気をつけなさい」といって、彼女を連れ去る。

2013-05-04 19:34:32
現場猫教授 @Dr_crowfake

「気持ちが悪いな……まるでランバート・ランバートかヒギンズ博士を見てる気分だったぜ」「俺はもっとひどいものを思い出したよ。UNの文民警察官任務でアフリカに云ってた時見た、女衒と街娼だ。娼婦の方はあの子くらいの年頃だったよ」秋山と鹿島はぐったりした顔で互いに顔を見合わせる。

2013-05-04 19:37:40