ディスカバリー・ヨウジタイコー

ニンジャスレイヤーの二次創作です。サバジョでヨウジタイコーで○○縛りでなんか書いた。個人的にはフロッグマン重点です。
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AMN @keroyoninja

@IMG_F 木の根に生えた苔を齧りとっていたバイオカモシカは、不意につんとした鼻先を上げ、見事に枝分かれした角を振りながら周囲を見回した。大丈夫だ、気づかれてはいない――。息を殺して地面に身を沈めていたフロッグマンは、再び頭を下げたバイオカモシカを見て、胸を撫で下ろした。1

2013-04-24 05:00:28
AMN @keroyoninja

@IMG_F 弓を構え、慎重に狙いを定める。彼の手に、仲間の一週間分の食料がかかっている。失敗は許されない。仲間は腹を減らしている。もう二週間まともな食事をしていない。冬に入り、人里から遠い山の中での食料の調達が想像していたよりも遥かに困難であることを一行は思い知らされていた。2

2013-04-24 05:05:03
AMN @keroyoninja

@IMG_F プレッシャーで額に汗が浮かび、目が霞む。こんなものではないはずだ。あの人のプレッシャーは。(((おれだってこれしきのことでヘコたれているわけにはいかねぇんだ)))弓を引き絞り、放つ。その瞬間――。3

2013-04-24 05:11:01
AMN @keroyoninja

@IMG_F バイオカモシカは猛全と走りだした。ジャンプするような軽快な動きで、林の中に姿を消してしまう。「な……」弓を構えたまま呆然とするフロッグマンの背後から、がさがさと藪をかき分ける音。同時に、聞き慣れた仲間の声。「フロッグマン=サンー! 大変なことになった」4

2013-04-24 05:15:34
AMN @keroyoninja

@IMG_F 「大変なのはこっちだ、馬鹿野郎!騒がしくしやがって!逃げちまったじゃねえか」気配を消すことなく近づいてきたハイドラに、フロッグマンは怒りに任せて罵声を浴びせる。「それどころじゃねーんだ!ディスカバリー=サンが崖から落ちた!」「なんだと」5

2013-04-24 05:18:54
AMN @keroyoninja

@IMG_F 一瞬慌てたものの、いくらノーカラテとはいえ、ニンジャが崖から落ちたくらいで大怪我を負うわけはないと思い直す。実際、ファーリーマンに背負われてやってきたディスカバリーには、目立った外傷も痛がる様子もない。なぜかきょとんとした顔でフロッグマンを見ているだけだ。6

2013-04-24 05:21:17
AMN @keroyoninja

@IMG_F 「どこ怪我したんだ、ディスカバリー=サン」「怪我してるんじゃねえ、病気なんだ」ディスカバリーが答える前に、ハイドラが口をはさむ。「おまえ、さっき崖から落ちたって」「崖から落ちて、気がついたら病気になってたんだ!」「……なんだよ、頭でも打ったのか?」7

2013-04-24 05:23:34
AMN @keroyoninja

@IMG_F フロッグマンは、ぼんやりと地面に座り込んでいるディスカバリーの前で腰を屈めた。「別に、なんともないだろ?」顔を覗きこみ、問いかける。小首を傾げるような仕草で見つめ返され、彼は面食らった。いつも斜に構えた態度の男は、滅多なことでは正面から目を合わせることはない。8

2013-04-24 05:26:47
AMN @keroyoninja

@IMG_F 「カエユ……」「はぁ?」ディスカバリーが舌足らずに何か呟いた。「トカゲ…モフモフ…」フロッグマン、ハイドラ、ファーリーマンを順に指さし、最後に抱きつく格好で毛むくじゃらの身体に顔を埋めた。「なっ……」あまりに異常な様子に絶句する。「な、だから言ったろ、病気だって」9

2013-04-24 05:26:47
AMN @keroyoninja

@IMG_F 「病気だと?」詰め寄ろうとするフロッグマンを、ファーリーマンが首を振って制す。「頭、打った。記憶、ない。子供、戻った」「記憶喪失だと?」ディスカバリーは頭を半ば毛に埋もれさせながら、様子を伺うようにこちらを見ている。その表情にあどけなさに落ち着かない気分になる。10

2013-04-24 05:29:04
AMN @keroyoninja

@IMG_F 「アニキ、いいだろ、ディスカバリー=サンは病気なんだ。医者に連れていってやろうぜ」ハイドラは兄貴風を吹かせられるのが嬉しいのか、甲斐甲斐しくディスカバリーの頭を撫でてやっている。それに反発する様子がないのをみて、フロッグマンはいよいよ頭を抱えた。11

2013-04-24 05:32:37
AMN @keroyoninja

@IMG_F 「よりによって大将がいないときに……」サヴァイヴァー・ドージョーのリーダーであるフォレスト・サワタリは、セントール、カマイタチを連れてバイオインゴットを調達している。インゴットはサワタリが、食料はフロッグマンが、生命維持に必要な物資の補充を手分けしている格好だ。12

2013-04-24 05:35:47
AMN @keroyoninja

@IMG_F それだけに、サワタリの不在時に情けない姿は見せられない。サワタリが戻る前に、任された仕事をこなす。獲物をとる。それがケジメだ。フロッグマンは己にそう言い聞かせ、仲間に向き直った。「病院には行かない」「なっ、なんでだよ」13

2013-04-24 05:39:03
AMN @keroyoninja

@IMG_F 「食料確保が最優先と判断した。ディスカバリー=サンはここに置いて狩りを続行する」「ディスカバリー=サンはいま、子供と同じなんだぞ!薄情ものっ」「心配ならついていてやるがいい、ハイドラ=サン。おれはひとりでも行くぞ」それが生存のために最善策なのだ。14

2013-04-24 05:39:04
AMN @keroyoninja

@IMG_F そう言って歩き出したものの、少し間をあけて仲間がついてきたことに、フロッグマンは思わず胸を撫で下ろした。ディスカバリーはファーリーマンに背負われている。ほっとしたのは一人で行かずに済んだからではないのか。疑念を投げかける声を無視して、彼は前に進むことに集中した。15

2013-04-24 05:41:15
AMN @keroyoninja

@IMG_F それから一行は歩き続けたが、野うさぎの一匹も発見することができなかった。「くそっ、なんでだ」やはり、自分には大将の代わりは無理なのかもしれない。悔しさに拳を握り締める。「フロッグマン=サン、休憩か?」息を弾ませながら、ハイドラが問いかける。16

2013-04-24 05:44:22
AMN @keroyoninja

@IMG_F 見ると、ハイドラはディスカバリーを背中に背負っていた。フロッグマンの視線を感じてハイドラが照れ笑いした。「いつまでもファーリーマン=サンに任せきり、ってわけにはいかないだろ!」「ハイドラ=サン」「いいんだぜ、オレの方が先輩だからな!」17

2013-04-24 05:47:34
AMN @keroyoninja

@IMG_F ディスカバリーはハイドラの背ですっかり寝入っている。「いい気なもんだな」一行が足を止めた所為か、ディスカバリーが目を覚ました。丸めた拳で両目をゴシゴシこすり、とろんとした目でフロッグマンを見た。何か、見ては行けないものを見たような気がして、彼は目をそらした。18

2013-04-24 05:50:46
AMN @keroyoninja

@IMG_F 正直落ち着かない。狩りにこだわり続けるのは、このいかんともしがたい状況から気を逸らしていたいからかもしれない。どうすればいいか検討もつかないが、少なくともいまのディスカバリーの状況は治療でどうにかなるものではないだろう。19

2013-04-24 05:53:50
AMN @keroyoninja

@IMG_F 「休憩しよう」自らも疲れが溜まっているのを自覚して、フロッグマンは言った。「やったぜ!」ハイドラが喜びの声を上げてディスカバリーを背中から降ろす。疲れていたのか、ハイドラは座り込むと同時に船を漕ぎ始めた。その様子をディスカバリーが目をまるくして見つめている。20

2013-04-24 05:56:56
AMN @keroyoninja

@IMG_F 「邪魔してやるなよ」思わず声をかけると、ディスカバリーは口からしゃぶっていた指を放して、こちらに伸ばした。ぎょっとしてから、腰に下げたカエルに興味を示していることに気づく。「こ、これはダメだ」慌てて、背を向けて座り直すと、ファーリーマンが近づいてきた。21

2013-04-24 06:00:00
AMN @keroyoninja

@IMG_F 振り返ると、さっきまでディスカバリーがいたはずの場所に誰もいない。「ディスカバリー=サン!」慌てて、周囲を見回す。すると、一行が休憩していた道から外れた傾斜を下っていく渦巻き模様の装束が見えた。「あいつ、また崖から落ちるぞ。ディスカバリー=サンそこて止まれ!」23

2013-04-24 06:02:40
AMN @keroyoninja

@IMG_F 「獲物、いない。ファーリーマン、罠、つくる」「そうだな……」忸怩たる思いがこみ上げる。自分の力不足だ。ハイドラにも無理をさせた。「……休憩が終わったら、おれがディスカバリー=サンを……」その時、ファーリーマンが突然立ち上がった。「いない」「え?」22

2013-04-24 06:02:41
AMN @keroyoninja

@IMG_F声が届いたのか、ディスカバリーが足をとめてこちらを振り返る。ほっとして、駆け寄る足を緩めた瞬間、ディスカバリーの身体が傾いだ。手を延ばす間もなく、彼の姿が地面の向こうに消え去る。血の気が引いて、フロッグマンはディスカバリーのいた場所に駆け寄った。24

2013-04-24 06:05:52
AMN @keroyoninja

@IMG_F 地面か崩れ、黒い土が露出している。ディスカバリーは半ば土に飲まれる形で倒れていた。フロッグマンは慎重に崩れた場所を滑り下り、ディスカバリーを助け起こした。どうやら、地面の空洞になっていた部分が崩れたらしい。「ディスカバリー=サン、大丈夫か?」25

2013-04-24 06:08:20