[公開読書] 新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論【第8〜10章】
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[公開読書] 新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論, 2011, ウヴェ・フリック:著, 小田博志:監訳, 小田博志・山本則子・春日常・宮地尚子:訳, 春秋社 http://t.co/ePr11LtnIS
2013-05-09 23:54:46第三部:研究デザイン 第8章 質的研究のプロセス 質的研究は、簡単に方法を入れ替えることが出来ない。量的研究との組み合わせも容易ではない(3章)。量的研究は研究の段階を分離して扱うことができるが、質的研究はプロセスの各部分が依存し合っているので、はっきり分離できない。
2013-05-10 00:25:40●直線的プロセスをたどる研究 量的研究では、研究モデルはフィールドに入る前にあらかじめ文献研究などで作られ、そこから仮説が生成される。その後、実証的に仮説を検証する。データと結果を一般化することは重視される。関連した事象は様々な変数に分解される。
2013-05-10 01:17:05量的研究は、調査対象よりも理論と方法が優先される。理論は検証され、場合によっては反証される。理論を拡張するときは、仮説が追加され、それの検証のために再び実証的な研究がされる。
2013-05-10 01:18:52●グラウンデッド・セオリー(GT)研究におけるプロセスの捉え方 GTでは現場や実証データと関わる中で理論的仮定が「発見」され、記述される。被調査者は研究テーマの関連性を重視して選ばれる。事象の複雑性は複雑なままにする。研究対象に適している具体的な研究方法が選ばれる。
2013-05-10 01:26:05研究の際は、理論的知識から仮説を作ることに専念にするのは一旦保留する。自分の側の仮定や構造に縛られて、偏った見方をするのを避けるためである。 ただし、研究設問はしっかり決定しておく(9章)。
2013-05-10 01:30:23GTの調査プロセスでは、以下の要素が含まれる。理論的サンプリング(11章)、理論的コード化(23章)、理論の記述(30章)。これらはデータの解釈に強く焦点をあてる。 GTにおいて、これらの要素は密接に関係しているので、そのようなものとして扱うのが肝要である。
2013-05-10 01:35:36●プロセスの直線性と循環性 互いに関係し合うというGTの循環性は、多くの質的研究に影響している。しかし、直線的な研究モデル(理論→仮説→操作化→サンプリング→データ収集→データ分析→妥当性検証)が前提となって評価される場合は、以下の2つの問題が横たわる。
2013-05-10 02:28:12・研究プロジェクトの助成金を申請する場合 ・研究結果を評価する場合(28章) しかし、循環性はGTの強みである。なぜなら、研究者は研究プロセスを常に振り返り、他の研究段階に配慮しながら特定の段階に取り組むことになるからである。
2013-05-10 02:30:47●世界のバージョンとしての研究プロセスにおける理論 グッドマン(Goodman 1978)は、理論とは「世界のバージョン」であると主張した。それは暫定的で、相対的である。出発点は調査の対象やフィールドに関する先行理解である。
2013-05-10 02:40:03クライニング(Kleining 1982:231)は「研究対象に関する先行理解は暫定的なものであり、新しい矛盾した情報を取り入れて更新すべきだ」と述べた。 理論的研究は、研究の流れの中で修正され、練り上げられる。それは、研究対象をより理解することにつながる。
2013-05-10 02:42:55研究プロセスの直線的モデル(量的研究)と循環的モデル(質的研究)を図示したのがこれである。 http://t.co/yhUWMaHKhx
2013-05-10 03:17:06第8章のまとめ ・質的研究におけるプロセスは、多くの場合いくつかの段階に明確に分離することが難しい ・質的研究の本当の強みは、研究プロセスの主要部分が互いに結びつけられるときに発揮される ・この理解の仕方は、グラウンデッド・セオリー研究に由来するが、他のアプローチにも有益である
2013-05-10 03:18:48第9章 研究設問 研究設問が研究成功の鍵を握るが、従来の質的方法の解説では軽視される傾向があった。質的調査の前に仮説を立てる事は戒められるが、それは研究設問を立てるなという事ではない。研究者は自分の研究設問を明確にしていくと同時に、時には予想を超えた発見にも心を開いておくべき。
2013-05-14 15:13:13●設問を刈り込む 設問は、研究者の個人的な人生経験や社会的背景に由来する。 設問を具体的にする上で、調査現場の多様性を削減し、構造化する必要性がつねに出てくる。つまり、ある側面は押し出され、ある側面は脇におかれたり除外されたりするというプロセスをとる事が、設問を具体的にしていく。
2013-05-14 16:04:52●研究領域の特定化と研究対象の限定 調査現場は複雑であり、多様な切り取り方ができるものである。しかし研究設問を定式化した結果、その現場の特定の領域に焦点が当てられることになる。
2013-05-14 16:14:01複雑性が高い(制度的な)現場を対象に、そこから行為する一人・複数人の視点を理解する為の研究を行う事ができる。 ある生活世界の記述に照準を合わせる事もできる。 行動の主観的・客観的理由づけを再構成する事を目的に調査する事もできるし、それによって人間行動の説明に結びつける事もできる。
2013-05-14 16:16:49多様な側面全てを包括した研究は、質的研究の場合無理である頃が多い。利用可能なリソースや整合性のある研究デザインをまず考え、それから研究設問やフィールドを定めるのが賢明なやり方である。これによって多数の他の設問を暗黙のうちに立ててしまう事や、実証的調査の方向性が混乱する事を防げる。
2013-05-14 16:21:24●感受概念と視角のトライアンギュレーション どうすれば特定の側面を無視しつつ扱いたいものを失わないように出来るのか。ひとつの対策は「感受概念(あるフィールドで見られるプロセスをできるだけ広くカバーできるような概念)」を使用すること。
2013-05-14 16:32:15もうひとつの対策は、ひとつの問題のいろいろな側面をできるだけ多く取り入れることが出来るように、複数の視角や方法を組み合わせること。ある問題の構造的側面と、それに関わる人々にとってそれがもつ意味の再構成とは結びつけられるべきだという見解がある(例:「カウンセリング」と「信頼」など)
2013-05-14 16:35:31感受概念を使用して研究対象に関連性の高いプロセスを捉えることと、視角のトライアンギュレーションによって事象の多様な側面を明らかにすることによって、研究対象である事例やフィールドへの近接性(proximity)が増す。これによって新しい発見がなされる余地も開かれる。
2013-05-14 16:37:24研究設問は、その由来にまで立ち返って批判的に検討される必要がある(今の研究設問はどこから出てきたのか?)。また研究設問は、研究デザインの整合性とデータ収集・分析の方法の適切性とを点検するための一基準点となる。これは研究結果の一般化を評価する際にも当てはまる。
2013-05-14 16:39:19