掌小説語り~自作つぃのべる集4~

自作twnovelまとめです。2012年10月分
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リュカ @ryuka511

「お主の孫どうにかならぬか。」げんなりした様子でからくり猫は持ち主の老婦人に愚痴をこぼす。婦人の幼い孫は玩具の彼に餌を食べさせようと口にツナ缶を詰め込んだ。彼の顔中の油を拭いてやりながら婦人はくすくす笑う。「でもあなた、まんざらでもない顔してますよ。」「むぅ。」 #twnovel

2012-10-01 23:15:20
リュカ @ryuka511

「お主が黄金を産み出す者か。」人里離れて暮らす錬金術師の庵に殿様が現れた。自分の黄金像を作るのだと言う。「では殿の目方を計り必要な黄金を準備するのでしばし留まり下さい。」数日後、城に黄金像が届くが以来殿様の姿を見た者はいない。黄金像は売られ困窮する民は救われた。 #twnovel

2012-10-03 00:08:55
リュカ @ryuka511

「お前またナンパされたのか?」隣を歩く俺の恋人は綺麗な顔立ちをしていてしょっちゅう声をかけられる。だが俺の心配を余所にこいつはあっけらかんと笑った。「うん。でも大丈夫だよ。」「何がだ。」「僕が男だと解っても口説き倒す変な男はお前くらいだから。」「うるせー。」 #twBLnovel

2012-10-03 23:20:34
リュカ @ryuka511

夏のある日部屋に現れた幽霊と会話できるようになった。和服姿の知らない老人で街を案内しろだの夜中に淋しいから話し相手になれだの騒ぐわがままな奴だったが、夏の終わる頃突然いなくなった。名前くらい聞けば良かったと妙に淋しくなる。祖父が生きてたらあんな感じなんだろうか。 #twnovel

2012-10-04 23:32:42
リュカ @ryuka511

娘の結婚に反対しなければと男は悔やむ。孫が生まれ和解のチャンスだと妻が言った矢先の事故。婿が男手一つで孫を育てていると聞いたが会う勇気がないまま男は寿命を迎える。気付けば孫の部屋にいた。娘に似た少年は自分が見えるようで夏を共に過ごす。だが名乗る事は出来なかった。 #twnovel

2012-10-05 23:25:06
リュカ @ryuka511

反逆者に父を殺され国を追われた僕は復讐の為お城に向かった。簒奪者に民は苦しんでると思っていたのに、街には革命を祝う張り紙が貼られている。父王の政治は厳しかった。それが国を正しく導くと信じていた。けど今の街は活気に溢れている。幸福そうな民の姿に僕は立ち尽くした。 #twnovel

2012-10-06 23:58:30
リュカ @ryuka511

キスは愛を伝える行為だと知った時、ロボットである彼の頭脳には自分を作ってくれた女性の笑顔が浮かんだ。その途端、回路の制御が利かなくなり身体が熱くなる。何故? これが愛なのか? それとも愛という知識を得ただけなのか? 答えを知りたいと、彼は愛しい女性の下へ走った。 #twnovel

2012-10-07 23:20:49
リュカ @ryuka511

あれは秋祭りに賑わう月夜の晩の事です。私の飴売りの店に幼子を連れたお侍がいらして、子供に飴を買いたいが銭が無いので代わりに、と日本刀を差し出されました。私でも名を知る名匠の作、飴代には高過ぎますと言うと、自分にはもう必要無い物だから納めてくれと仰います。 #twnovel 1/2

2012-10-08 23:36:17
リュカ @ryuka511

返答に困り刀を受け取るとお侍は淋しそうに笑って礼を仰いました。何があったか存じませんがあの淋しい笑みが忘れられません。その刀ですか?無論大切に保管しております。いつ取り戻しにいらしてもいいようにね。刀も待ってます。お侍と刀とはそういうものでありましょう。 #twnovel 2/2

2012-10-08 23:36:42
リュカ @ryuka511

ご主人様が悪い男に殺された。僕は一部始終を目撃したけど刑事さんには猫の言葉が通じない。僕は奴が落としたレシートを持っていく。ご主人様が好きなワインのレシートだけど、調べれば犯人のだって解るはず。「これは……警部!」早速指示が飛ぶ。刑事さん、ご主人様の仇とってね。 #twnovel

2012-10-09 23:17:51
リュカ @ryuka511

無防備は罪だ、と思う。幼馴染みのコイツは俺の友人の彼女。なのにコイツは「宿題写させて」と俺の部屋に上がり込む。無意識だろうがポテチ食べて指を舐めるのは止めろって。俺も男だって事コイツは解ってんだろうか。俺が「好きだ」って言ってもコイツは笑い飛ばすんだろうな……。 #twnovel

2012-10-10 23:19:58
リュカ @ryuka511

あの海を越えたら、もう故国は見えなくなる。不安そうに闇夜へ消える国を見つめる君をそっと抱き寄せた。未来も将来も解らない。僕らはただ、僕らの愛を禁じられない世界へ行く。未来の見えない闇夜の国から、星屑を映す海に揺られ、光を求める僕らに、どうか祝福を。 #twnovel

2012-10-11 23:51:57
リュカ @ryuka511

同じ歌手を愛した私達は、淋しいだけだったんだろう。彼の歌う愛が私達の愛だと思ってた。けど彼の訃報は私達の終わり。愛の指針を無くした私達は愛する事に疲れ彼は私の前から消えた。捨てられずにいた彼専用のマグカップを思い切って捨てる。2つの別れを受け入れ前に進むために。 #twnovel

2012-10-12 23:42:45
リュカ @ryuka511

「そんな黒歴史捨ててくれ!」懇願する俺に彼女は手紙を手ににんまり笑う。酒に酔って書いた手紙なんてロクなもんじゃない。酔わなきゃ素直になれない俺が悪いんだが。公開されたくなきゃバッグ買ってと言われ解ったよと嘆きつつ、手紙を保存してくれてちょっと嬉しかったりもする。 #twnvday

2012-10-14 23:25:35
リュカ @ryuka511

草原を吹く風に彼は目を細める。陽光を受けた草が柔らかく煌めき、上質な絨毯の様な緑色が広がるここは彼の思い出の場所だ。君がくれた首飾り、大事に持ってるよ。あれから世界は綺麗になったけど、僕は淋しい。地球上から人間だけが滅びた後、かつての飼い主を思い犬は細く哭いた。 #twnovel

2012-10-15 23:30:09
リュカ @ryuka511

誇り高き獣人族にとって人化は忌むべき事態である。だが青年の人化は進行していた。彼は苦悩の末恋人に銃を託す。俺が俺である内にという彼に頷いた。「ちゃんと殺めてあげるから、安心してお眠りなさい。」溢れる涙をそのままに彼女は引金を引き、銃口を口にくわえ銃声を響かせた。 #twnovel

2012-10-16 23:47:31
リュカ @ryuka511

神が世界を滅ぼし、善良な者を方舟に残して新たな世界を作ると告げた。自分は選ばれないだろうと思った少年はある日、天地が逆さになったような衝撃を感じる。沢山の人や物が空へ落ちた。衝撃が治まり少年は気づく。地球が方舟そのものだったのだと。今後はもっと大切にしなくちゃ。 #twnovel

2012-10-18 00:08:52
リュカ @ryuka511

暗くなり始めた冬の午後4時、僕達は会話も無く歩く。2人には夢さえ無いと解ったけどもう少しだけ横を歩きたかった。僕無しでは生きられないと言った君は離れて行く事を選んだ。恋人の笑顔を向けた君。いつもの夕暮れなのにどこか違う。僕は別れてもきっと君を愛し続けるんだろう。 #twnovel

2012-10-18 23:35:28
リュカ @ryuka511

小さい頃は私の方が背が高くて足も速かったのに、気付いたら追い越されてた。あいつの笑顔を眩しく感じる。いつからそんな男っぽい顔するようになったの? いつの間にあんな可愛い彼女なんか作ったの? ずっと一緒だったから、あいつに恋してたなんて気付けずにいたのが悔しい。 #twnovel

2012-10-19 22:56:24
リュカ @ryuka511

文机に向かい皇子は溜息を吐く。城を抜け出し知り合った町娘に想いを馳せた。貧しい暮らしに自ら働く彼女。父の治世が彼女のような者を生んでいると気付き、また来てねと笑う彼女に胸が針で刺された様に痛む。彼女と結ばれる事は叶わないが自分の治世には彼女達を救うのだと誓った。 #twnovel

2012-10-20 23:31:40
リュカ @ryuka511

戦に赴く青年は苦悩の末恋人に別れを告げた。自分の事は忘れ幸せになってほしいと。涙ながらに頷いた彼女はそれでも彼の帰りを待つ。やがて待つ日々に疲れた彼女は剣を手にとった。幾つもの戦に参戦し、戦乙女として名を馳せた彼女は、現在恋人の副官として共に戦場を駆けている。 #twnovel

2012-10-21 23:45:34
リュカ @ryuka511

会えなくなった大切な人はいませんか? 言えなかった言葉や、言ってしまった一言を悔やんではいませんか? この扉をくぐれば、一度だけその瞬間をやり直す機会が得られます。扉の先でどう振る舞うかはあなた次第。私は過去への扉の番人。路地裏の奥で、訪れる人を見守っています。 #twnovel

2012-10-22 23:22:21
リュカ @ryuka511

村にケチで強欲な男がいた。ある日旅人が男に一杯の水を求めたが男は断固拒否し旅人を追い払う。旅人は近くの森で倒れ賢者に救われた。賢者は男を懲らしめようと言うが旅人は首を振る。あの男は優しさを得られないまま孤独に最期を迎える、可哀想な人に追い討ちも必要無いです、と。 #twnovel

2012-10-24 00:06:09
リュカ @ryuka511

長年の間に人の手を流転したこの宝刀にはかつての持ち主達と刀匠の魂がこもっている。刀を手にすると彼らの生き様が伝わった。それはとても鮮烈で自分の記憶なのか過去の想いなのか分からなくなる。自分も過去の存在であるような錯覚さえ感じた。否、それは本当に錯覚だろうか……? #twnovel

2012-10-24 23:44:35
リュカ @ryuka511

画家の道を断たれ私は路面電車の走る故郷へ戻ってきた。空いた電車は虚無感を募らせる。ふいに車内に猫が乗り込んできた。私の前に座りくわえていたペンを置く。そしてさも描けと言わんばかりにポーズをとった。もう描かないと決めたのに猫の佇まいは私の意欲を掻き立てる。 #twnovel 1/2

2012-10-25 23:43:39