橋下市長の発言を性暴力の文脈で考える＠白象さん

白象 @elephantcalli

橋本市長の発言でTLが盛り上がっているので、少しだけ。発言の是非についてはすでに議論があるので、ここでは性暴力の文脈から。日本でもそうであるように、世界的に見て性暴力の被害者は圧倒的に女性。そして子ども。おそらく歴史的にもずっとそうであっただろう。

白象 @elephantcalli

洋の東西を問わず、時代の新旧を問わず、女性は男性の静的な暴力の対象であったし、これだけ普遍的であるなら、それはもしかすると生物学的な人間の構造であるのかも知れない。けれども、だからと言って女性が犠牲になって良いと言う話は別。

白象 @elephantcalli

暴力に関するWHOのまとめの中には対人暴力の１つとしてDV、虐待、高齢者への暴力と並んで性暴力がある。性行為の強制、知らない人からのレイプ、武力紛争下での組織的レイプ、セクハラ、性的虐待、売春や生売買の強制、子どもとの結婚、女性の性的健全への暴力行為。

白象 @elephantcalli

毎年数十万の女性や少女が売春や性的奴隷として売り買いされ、学校、職場、医療、避難所での性暴力を受けている。その結果は深刻な深刻な身体的、精神的影響を残し、致命的なものは自殺、HIV感染、殺人など。

白象 @elephantcalli

殺人に関しては、名誉のための殺人など、性暴力の被害に遭った女性の側に問題があるものとして、一族の名誉を穢した者として名誉のために殺されていることを言う。最近インドでのレイプ事件が大きく報道されるけど、表面化してきた昔からあるこの性暴力の背後にも、この問題があるとの指摘も。

白象 @elephantcalli

危険因子は、威圧的な性的空想のあること、非人間的性関係を好むこと、女性への敵意。家庭内暴力の目撃、情緒的に距離のある父親。貧困、性暴力に寛容で制裁の弱い地域に住むこと。 性暴力や暴力の許容は次の性暴力を生み出す土壌になるという認識ははっきりとしている。

白象 @elephantcalli

強制された売春は性暴力である、というのがWHOの見解であり、おそらく国連の見解であり、その構成員たる各国の共通認識であるだろう。その売春について戦時中であれ、平時であれ、女性が喜んで売春を行っていると考えているとしたら、それがすでに性暴力の構造である可能性について考えた方が良い。

白象 @elephantcalli

日本の司法領域の人と話していて犯罪者の圧倒的多数が男性であるのは、同様の危険因子を抱えた人が性産業に吸収されるからでは、という発想はわりとよく出る。貧困、経済格差、教育の不足、家庭環境の劣悪さ、過去の性暴力、は男性において犯罪を、女性において生産業への従事を促すのではないか。

白象 @elephantcalli

性産業というものがあり、性産業に従事している女性がいるからと言って、それを仕方のないもの、良いものとして取り扱うのは、生産業に従事する女性が自ら望んでその選択をした、という「建前」に依拠した論ではないのか、という可能性について慎重でありたい。

白象 @elephantcalli

自ら望んで性産業に従事する女性もいるだろう。そのことを否定するつもりはないけれども、性産業の存在自体が、そしてそれは自ら望んで従事する人から成っているという仮定が、すでに性暴力の土壌を提供しているという現実を示しているのではないだろうか

白象 @elephantcalli

沖縄の米軍によるレイプ事件は堪えないけれども、性犯罪者が風俗に行って犯罪に手を染めないのなら、そんな話は更生保護領域でとっくに話題になっている。非公式にすら効いたことがないのは、性犯罪者がそれでは満足しないから。

白象 @elephantcalli

彼らは犠牲者を求めている。それはかつての自分であるし、自分の中の受け入れがたいものを受け取る相手であるし、それは心を持ったものであることもあれ、そうでないこともあれ、犠牲者を必要としているという意味で、風俗の枠には収まらない。

白象 @elephantcalli

性犯罪の危険因子には、貧困、経済格差、社会的孤立、養育関係、過去の性体験、性的空想、暴力性、自己愛、薬物乱用、アルコール乱用、孤独感、女性への敵意、など多くの個人変数がある。加えて文化的・環境的要因があるわけで、事態の改善を目指すなら最初に必要なのはアセスメント。

白象 @elephantcalli

沖縄に来る米兵は社会経済的に下層に属し、だから規律の維持が難しい、という話を聞いたことがある。例えばそうだとすれば、偏見、敵意との相関が高いことを前提に、性暴力を暴力と思っていない可能性がある。もしもそういうことなしに規律や訓練の憂さを晴らし、慰めを求めたいだけなら、話は違う。

白象 @elephantcalli

なぜ性犯罪にという査定なしに、風俗を代替とするのは暴力の力動に鈍感すぎるし、性産業が持っている危うさに対しても鈍感すぎる。逆に言えば、アニメを規制したからといって性暴力は抑制されない。男性が持っている女性への危険性を、性暴力は如実に物語るわけで、解決には知性が求められる。

白象 @elephantcalli

とりあえず、以上。誤字が多すぎてどうにも。最後に、従軍慰安婦がどのようにして成り立っていたかは別にして、それがとても痛ましいことであるという認識なしには、次にまた同じことが起きるし、それは虐待、DV、差別、格差、貧困などの生成と維持と一続きなのですよ、ということを述べておきたい。

白象 @elephantcalli

性産業が人類の歴史上ずっと存在していたことはおそらく揺るがしようのない事実であり、男性が女性と子どもへの性暴力の加害者になりやすいこともまた１つの事実だろう。その一方でそれが許されないことだという倫理観も同様に１つの事実として存在しており、どれか１つを現実ということはできない。

白象 @elephantcalli

現実は多重に決定されているという、それだけが全体としての事実なのであって、性産業が存在することは、それをもって正当性の根拠とはなしえない。生産業に従事する痛みや苦悩の存在もまた現実であり、男女の良くもまた現実であり、事態はそのように多重であるだろう。

白象 @elephantcalli

どちらが本音でどちらが建前かという問題ではなく、どちらもが紛れもない事実なのであって、その多重性を生きることが人生である時に、政治家のなすべきことは、より良い社会に向けて事態を切り開くことであり、一方の事実を取り上げてこれが現実です、と言い切ることではない。

白象 @elephantcalli

言葉はリニアであるので同時に1つのことしか語れないけれども、一方の事実を語る時に歯切れ悪く語るしかないまさにそのことが、異なる事実を仄めかしている。そうして多重性は言語とその語りに息づくことが出来る。１つの現実が孕む複数の事実を同時に語る、その知性こそが社会に求められている。

白象 @elephantcalli

性産業が認められつつも否定され、なおかつ否定的であることが正当であると言われるのは、それが建前だからではなく、それがより良い社会を指向しているからに他ならない。異なる複数の事実から成る妥協を超えていく未来が望まれているのであって、それこそが政治が為すべき仕事なのではなかろうか。

白象 @elephantcalli

現状を認識することそのものが悪いのではない。未来への思考が欠けていることが問題なのだ。あるべき社会について考えた時、そこにある痛みと犠牲を思えば、性産業について語る言葉は否定的色彩を前面に出す。淀む言葉の中に現状の認識が滲むとしても、語るべき言葉が何かを間違えるわけにはいかない。