[公開読書] 新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論【第11〜12章】

新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論 http://www.amazon.co.jp/dp/4393499107/ 2011年2月28日初版 春秋社 続きを読む
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白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

[公開読書] 新版 質的研究入門〜〈人間の科学〉のための方法論, 2011, ウヴェ・フリック:著, 小田博志:監訳, 小田博志・山本則子・春日常・宮地尚子:訳, 春秋社 http://t.co/ePr11LtnIS

2013-05-16 11:10:38
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

第11章 サンプリング戦略 ●研究プロセスにおけるサンプリングの決定 サンプリングの問題は研究の様々な段階で発生する。 「誰にインタビューするか(事例のサンプリング)」「どの集団から事例を得るべきか(事例集団のサンプリング)

2013-05-16 11:12:52
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

「どのインタビューをさらに扱うべきか:どれを文字化して解釈すべきか(資料のサンプリング)」「テクストのどの部分を選択し解釈すべきか(資料の中でのサンプリング)」「得られた結果を論証するためにはどの事例やテクストのどの部分を使うと最も良いか(発表のサンプリング)

2013-05-16 11:15:15
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

●サンプリング構造の事前決定 サンプリングは「抽象的」と「具体的」の二極に位置している。 ひとつは推測統計学的なサンプリングである(標本→母集団)。この場合大事なことは、サンプルをとる際、サンプル構造の枠を出来るだけ均等に、すべての場合について埋めることである。

2013-05-16 11:21:00
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

また、それぞれの集団や領域内では、「理論的サンプリング(次節参照)」を使って、どの事例を取り入れるかを決めるのもよい。

2013-05-16 11:22:13
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

※質的調査における「完全調査」 特定の基準を設けてサンプリングを限定する時、その事例が少ないので全事例を対象にして調査すること。どの資料を選ぶかという「資料のサンプリング」問題はさほど問題にならない。

2013-05-16 11:31:42
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

※この方法の限界は何か? この戦略では、データ収集に先立ち集団の構造が決定されてしまうので、真に新しい知見は生まれない。発展途上の理論の研究にこの方法を使うと、発展可能性を限定してしまう恐れがある。 ただし、特定の集団を分析・細分化するのには向いている。

2013-05-16 11:31:49
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

●理論的サンプリング:研究プロセスにおけるサンプル構造の段階的確定 開発者はグレイザーとストラウス(Glaser and Strauss 1967)。実証的な資料(事例、集団、施設など)の選択および分析に関する決定は、データ収集と解釈のプロセスの中でなされるという考え方。

2013-05-16 11:34:22
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

「理論的サンプリングとは理論を産出するために行うデータ収集のプロセスである」

2013-05-16 11:35:13
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

理論的サンプリングでは、以下の2つのいずれかを決定することから始まる。 ・比較する集団を決める ・特定の人物に焦点をあてるかを決める どちらの場合も、統計的サンプリングとは違い、サンプルの代表性は無作為抽出に基づくものではない。

2013-05-16 11:39:23
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

理論的サンプリングでは、これまでの資料や知見に基づき、最も大きな洞察を得るのに有望そうな資料を選ぶ。 ただし、事例を選ぶ基準はある。例えば「次の事例はどの程度(理論に関する洞察を深める上で)有望であるか」「理論の開発にどの程度意義があるか」というものである。

2013-05-16 11:43:27
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

理論的サンプリングの場合大事なのは、「事例の取り入れをどの段階でやめるか」ということである。この基準として「理論的飽和」という考え方がある。すなわち「新しいサンプルを検討しても何も新しいものが浮かび上がらなくなった」ときに、サンプリングは終了する。

2013-05-16 11:46:11
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

理論的サンプリングと統計的サンプリングの相違点を表でまとめるとこうなる。 http://t.co/pTYxJbSfDl

2013-05-16 11:51:42
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白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

●質的研究の一般原則としての段階的選択 質的研究の方法を比較すると、理論的サンプリングの他にも。事例や資料を段階的に選択するという原則が用いられている。この考え方はデンジン(Denzin 1989b)の「データ・トライアンギュレーション」の考え方と共通点がある。

2013-05-16 11:56:05
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

「データ・トライアンギュレーション」とは、時間・場所・人という条件の異なる多様なデータ源を統合すること(32章)。デンジンは切り口を変えて「同じ現象」を観察すべきと述べる。これは、理論的サンプリングを人・集団だけでなく、時間、空間的な状況に拡大した点で一歩進んでいる。

2013-05-16 11:59:04
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

ズナニエツキ(Znaniecki 1934)の「分析的機能」という考え方もある。これは、暫定的な理論(パターン・モデル)を作った後、そこから逸脱した事例を探して理論を補強する。

2013-05-16 12:01:52
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

理論的サンプリングが、開発されつつある理論を豊かにする事に比べ、分析的帰納は理論を確実にすることを目指す。また、理論的サンプリングが浮かび上がりつつある理論によってデータ選択のプロセスを制御しようとするのに比べ、分析的帰納は逸脱事例を使って開発されつつある理論を制御しようとする。

2013-05-16 12:03:41
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

データ収集を継続したり検討したりする際に、理論的飽和はどちらかといえば不明瞭な基準であるが、逸脱事例にはそれを補う意味がある。

2013-05-16 12:04:56
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

理論的サンプリングは、質的研究におけるもっともベーシックな資料選択の方法であるし、より具体的で、日常生活に近い戦略である。これに対し、統計的サンプリングはより抽象的である。 統計的サンプリングがどれだけ質的研究に転用されるべきかは個々の事例によって検討されるべきである(28章)。

2013-05-16 12:09:18
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

●目的志向のサンプリング パットン(Patton 2002)は無作為抽出と目的志向的なサンプリングを対比させ、いくつか提言をしている。 ・極端な(逸脱した)事例を選択する。極端な点から全体像の理解を目指す。 ・典型的な事例を選択する。フィールドはその内部や中心から明らかにされる。

2013-05-16 13:36:16
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

・少数の、しかしできるだけ多様な事例を取り入れて、フィールドに含まれる多様性の幅や相違点を明らかにしようとする。 ・そのフィールドの特徴やプロセス、経験などが「強度」を持って現れ、研究上特に注目される事例を選択する。最も強度の高い事例や、強度の異なる事例を系統的に選択するなど。

2013-05-16 13:40:13
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

・決定的な事例(critical cases)を選択する。研究される事象や意味の関係性が(例えば専門家の意見に従うと)ことさらに明瞭な事例とか、研究で扱いたい領域を評価する際に、重要な事例を選択する。

2013-05-16 13:46:51
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

・政治的に重要もしくは微妙な事例を選択する。ただし、事例が衝撃的で、研究による提言に与える影響が危ういのであれば除外する。 ・利便性は重視すべき。与えられた状況の中で最も近づきやすい事例を選択しようということ。手間を省くという側面の他、限られたリソースにより止むなしという場合も。

2013-05-16 13:48:41
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

研究結果の一般可能性は、無作為抽出が最も高い。一方、利便性による選択は一般可能性が最も低い。しかし、質的研究は一般可能性がゴールではない。事例を得ること自体に意義がある研究もあるだろう。

2013-05-16 13:51:08
白川陽一(名古屋市青少年交流プラザ) @shirasan41

モース(Morse 1998: 73)は「良いインフォーマント(情報提供者)」を選ぶ一般的な基準を示している。これはインタビューによって事例を集める際の基準としても使える。

2013-05-16 13:54:56
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