濱口桂一郎『新しい労働社会』

濱口桂一郎『新しい労働社会』要約。 労働問題について幅広く取り扱う内容。
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H.Takano @midwhite

日本の若年男性のうち週60時間以上も働く人は2割を超える。これは1911年の工場法の上限時間に当たる。工場法は女工の健康を守る安全衛生規制だが、戦後に制定された労働基準法は余暇を確保し文化生活を保障するものとされ、1日8時間を上限とした。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-11 09:13:04
H.Takano @midwhite

そのため労働基準法には協定によって無制限に労働時間を延長できる三六協定が盛り込まれた。もっとも、当初の労働基準法は女子労働者の時間外労働の絶対上限を定め、工場法の思想を保っていたが、それも男女雇用機会均等の流れで撤廃されてしまった。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-11 09:25:00
H.Takano @midwhite

EUの労働時間指令は労働者の健康と安全の保護が目的で、残業代は労使に委ねている。週労働時間は時間外を含めて48時間が上限であり、それを超えて働かせることは許されない。ただしイギリスには労働者の同意による延長を認めるオプトアウトがある。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-13 10:41:22
H.Takano @midwhite

イギリスではオプトアウトを適用した場合も、休息期間規制があるため結果的に週労働時間の上限は78時間を超えることはできない。それでも労働者が個別に労働時間の延長を拒否することは難しく、この制度は激しい非難を浴び続けている。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-13 10:47:03
H.Takano @midwhite

年功賃金制度は中高年期の生計費も含めて保障する生活給という側面と、若年期にその働きに見合う分以下の賃金しか受け取らない代わり中高年期にその働き以上の賃金を受け取ることで長期的なバランスを取る一種の企業内再分配的な貯蓄という側面がある。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-14 14:39:08
H.Takano @midwhite

かつて非正規労働者とは主婦のパートと学生のアルバイトが主流だったが、バブル期に一部就職情報誌業界が超売り手市場の中で敢えて正社員を選ばないという新しいライフスタイルを宣伝し、貧困とは正反対の自由に生きる若者としてのフリーター像が生まれた。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-15 08:04:18
H.Takano @midwhite

バブル崩壊後、企業は新卒採用を急激に絞り込み、多くの若者が就職できないまま不本意のフリーターとして労働市場にさまよい出た。しかし社会の目は依然として彼らをバブル期の「夢見るフリーター」と見ており、フリーター対策も精神論が優勢だった。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-15 08:16:00
H.Takano @midwhite

90年代から声高に唱道された成果主義とは、建前としては士気の高揚とか納得性のある制度とか称されたが、本音としてはベビーブーム世代が40代後半から50代に差しかかる中で、その賃金コストを表面的に正当な形で下方修正するために導入された。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-15 08:49:25
H.Takano @midwhite

2000年代半ばの景気回復より新卒採用が活気を取り戻したにも関わらず、就職氷河期に非正規労働者にならざるを得なかった年長フリーターは取り残され非正規雇用に滞留したまま次第に中年化し、社会保障システムの脆弱化や少子化の進展が懸念された。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-15 09:47:30
H.Takano @midwhite

そこには多様な能力・適性・進路による選別を否定することが、結果的に一元的な成績によるふるい分けを不可避にしているのではないかという反省は見当たらず、職業教育を高卒後に回すことが企業内人材養成と極めて親和的であるという認識も無かったようだ。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-16 17:11:22
H.Takano @midwhite

職業教育の意義が高まってくる時代とは、普通高校の存在意義が改めて問われる時代でもある。フリーターやニートを生み出しているのはむしろ普通高校だ。同時に大学も存在意義を問われている。今や大学進学の可否は本人の能力ではなく親の経済力が決める。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-16 17:31:40
H.Takano @midwhite

同時期の欧州では就労可能な人々による福祉への依存が問題とされ、アクティベーション政策が始まった。これは単なる就労促進に止まらず、就労を中心とする社会参加によって積極的に社会の主流に統合していく「社会的統合」という考え方に基づいている。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-17 13:20:51
H.Takano @midwhite

雇用保険の失業給付は、拠出制社会保険制度と雇用政策手段という2つの性格を併せ持っている。社会保険制度としての目的は失業者の再就職までの所得保障だが、雇用政策手段としての目的は完全雇用を実現するための失業者の速やかな再就職である。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-17 13:37:09
H.Takano @midwhite

現在の生活保護受給者は高齢者世帯が45%、傷病・障害者世帯が36%と圧倒的に就労困難ないし不可能な者が多数を占め、欧米では過半を占める母子世帯が日本では8%、その他の世帯は11%に過ぎない。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-17 15:08:38
H.Takano @midwhite

労働基準法が制定された当初の労働紛争は労組が反対しているにも関わらず使用者側が一方的に不利益変更した就業規則の効力を争う内容だったが、高度成長期を過ぎる頃から労組の同意した就業規則の変更から不利益を被る個別労働者が無効を争う内容が増えた。(濱口桂一郎『新しい労働社会』2009)

2013-05-17 15:13:13
H.Takano @midwhite

【読了】『新しい労働社会―雇用システムの再構築へ (岩波新書)』濱口 桂一郎 ☆4 http://t.co/BuCqjixkGg #booklog

2013-05-17 18:57:08