2013年5月22日

第十六話:筆 第十七話:パカ、パカ 第十八話:ヘッドライト

角川Twitter小説コンテストにて執筆中の『チョッとした話』を読みやすいようまとめてみました。読了後面白いと感じてくださったら章タイトルや本文のファボやRTなどいただけるとありがたいです。 以下のURLからもどうぞ。http://commucom.jp/t/fo9FMO
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さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 これはだいぶ昔、僕がまだ中学生だった頃の話だ。  週に一度、習字の授業があってね。僕は普段の字はさして下手でもないけれど、習字はどうにも苦手だった。  力の加減が下手だったし、なによりやり直せないのが嫌でね。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-21 12:23:27
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 そうしていつも苦戦する僕の隣で、その子は随分上手に字を書いていた。その子が失敗と言って床の新聞紙に置き捨てる字にすら、僕の清書は遠く及ばなかったよ。  ある僕は、なぜそんなに達筆なのか尋ねてみた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-21 12:29:09
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 するとその子は、内緒だよ、と言って、書道ケースの奥から一本の小さな筆を取り出して見せた。相当に年季の入った品で、下手に扱うと毛が抜け落ちそうだ。 「これね、コッポウさまっていうの。この方が、助けてくれるんだ」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-21 12:33:31
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 母から譲り受けた品だという。その母は祖母から受け継いだらしい。その子は、代々続く書家の生まれだった。 「お守りなの」  そう言ってその子は、大切そうにコッポウさまを布にくるんで仕舞った。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-21 12:37:09
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 その子が良いというから、コッポウさまを手元において清書させてもらった。不思議なほど上手く書けたよ。まるで筆が一人でに動くようで。  そのことは僕とその子の秘密になった。もっとも、進学する頃には忘れたけれど。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-21 12:51:49
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 先日テレビを見ていたら、たまたまその子が出演していたんだ。それで、道具箱の隅に小さな布包が……コッポウさまが映った。それで久々に思い出してね。  それにしても相変わらず綺麗な子だったよ。  もちろん、字がね? http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-21 12:54:39
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 部屋の明かりがそろそろ寿命らしくて、点滅することが増えてきた。  替えを買わなきゃとは思うけど、外出すると忘れてしまう。今日も玄関先まで帰ってきてふと思い出してね。  結局面倒だったんで、そのまま帰宅したんだ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-21 14:27:09
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 大して気になるほどの点滅でもなかったしね。  僕は普段通りに雑事を済ませて、少し遊んで、寝ようと布団に入った。天井の明かりを見上げて、明日こそは替えを買わなきゃな、なんて呑気に考えてさ。  そのときだった。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-21 14:33:28
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 パカ、パカ。  明かりが点滅した。なぜか酷くゾクッとしたよ。とにかく早く消灯して眠ろうと思った。このまま起きていると、ろくなことにならない。それで明かりを消そうと手を伸ばすと、  パカ、パカ。  また点滅。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-21 14:38:59
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 点滅の間隔がかなり短くなった気がした。  パカ、パカ。  また点滅。その時はっきり感じた。  何かいる。何か怖いものが、僕をみている。  僕は、それを見ている。  パカ、パカ。  身を硬くして、目を凝らした。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-21 14:42:12
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 パカ、パカ。  白くてもやっとしたものが、一瞬見えた気がした。  パカ、パカ。  点滅するたびに、もやが徐々にはっきりしてくる。  パカ、パカ。  僕は恐怖した。目をそらしたいのに、そらせない。  パカ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-21 14:45:07
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 暗闇の中、僕は正面からそいつと向き合っていた。  そいつは巨大な目玉で僕を見下ろして、にたりと笑った。ゾッとするなんて生易しいものじゃない。もっと強烈な恐怖を覚えた。  そいつは口を大きく開けて、僕に迫った。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-21 14:53:28
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 と。  パカ。  明かりが、点いて、そいつはふっと掻き消えた。僕は恐怖に震えて暫く動けなかったが、我に返るや否や慌ててジャージに着替えてコンビニに行き、替えの明かりを買って即付け替えた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-21 14:57:36
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 それから恐る恐る消灯したけれど、そいつはもう現れなかった。心底ほっとしたね。生きた心地がしなかったから。  それ以後照明だけは必ずスペアを置くことにしている。君もそうしたほうがいい。  食われたくはないだろう? http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-21 15:03:05
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 僕と君は、夜道を並んで歩いていた。お互いレポートがなかなか仕上がらなかったのだ。ラーメンでも食べて帰るか、なんて話しながら帰路をゆく。と。 「そういえば、大した話じゃないんだが」  唐突に、君はポツリと言った。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-22 01:37:49
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「ふぅん」  お決まりの相槌を打つ。気が進まないように切り出す君が、本当は僕に何か話したくて仕方がないのだとよく知っているからだ。 「それで、どんな話なの」  君はポケットに手を突っ込みながら言った。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-22 01:39:44
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「最近自分の存在が薄くなった気がする」  君は一つ息をついた。僕は驚いて目を丸くした。君がそんなことを言うなんて、かなり意外だったのだ。 「君は自信の塊のようなやつだと思ってたよ」  そう言うと、君は少し呻いた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-22 01:41:31
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

「自信はある。大概のことは並より上手くやれるつもりだ。……だけど、どうしてだろう。最近自分が消えてなくなりそうな気がして……」  君にしては歯切れの悪い話し方だ。 「気のせいだよ。少し疲れてるんじゃないのか」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-22 01:43:45
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 君は肩をほぐすようにぐるりと回した。 「そうかもしれない。寝る暇もないほど忙しかったし」 「そうだよ」  僕は安易な同意をしたものの、内心落ち着かなかった。  君が消えてしまう理由に、少し心当たりがあるからだ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-22 01:48:10
さく@今日も生きる @C_N_nyanko

 僕の心配を知る由もなく、君はもう一度肩を回して言う。 「今夜は家に着いたらさっさと寝るよ。浮遊感がひどいんだ」 「うん。なるべくしっかり寝たほうがいい」  暗闇の中、僕は君の足元に目を落とした。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説

2013-05-22 10:05:57
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