第十九話:たんさんいんりょう 第二十話:ご飯 第二十一話:悋気
- C_N_nyanko
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人通りの多い商店街なんかを歩いていると、道の隅にペットボトルが置き去られていることがある。 気分が悪くなるから見かけた範囲でゴミ箱まで持って行くようにしているんだけれど、中身が入っていると始末が悪い。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 15:20:02そのまま捨てるのは嫌だし、かと言ってわざわざ中身を処理してから捨てるだけの手間を割けるほど出来た人間でもない。 イライラしつつも、見て見ぬふりをしてしまう。 今日は、黒い液体の入ったペットボトルを見かけた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 15:27:26神社に続く階段の途中だった。 随分放置されているらしい、中で少し蒸発している。置いたやつめ、バチが当たるぞ、と思いながらも、仕方なく見て見ぬふりをする。 と、ランドセルを背負った小学生たちが駆け下りてきた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 15:29:21ジャンケンで勝った分だけ階段を上り下りするゲームに興じているらしい。一戦終わったので、またやりなおすのだろう。 元気がいいなぁと彼らを眺めていると、階段の途中でひとりが声を上げた。 「あ、バクダンだ!」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 15:32:42指差しているのは例のペットボトルである。 参ったな、と僕は頭を掻いた。あれをおもちゃにした彼らが、万が一誤飲でもしたら大変だ。 「ごめん、それお兄さんのなんだ」 仕方なく声をかけて、階段を下った。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 15:38:06子どもたちが見つめる中、ペットボトルに手を伸ばす。しかし持ち上げた途端、指先に痺れが走った。 「わっ」 思わず取り落とす。ペットボトルは束の間滞空し、ゴロゴロと階段を下った。子どもたちがはしゃいで後を追う。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 15:41:56「待て!」 僕は慌てて怒鳴った。 あのペットボトルは、ただのゴミじゃない。 見たのだ。ペットボトルの底に、動物の牙と爪が沈んでいたのを。 だが子どもたちは我先にとペットボトルを追いかけていく。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 15:45:33ついに一人がペットボトルを掴んだ。いたずらっ子なのだろう、ニヤリと笑ったと思ったら、ペットボトルを激しく振った。噴射させる気だ。 なんて悪ガキなんだ! 僕は階段を駆け下りて、その子のシャツの襟を引っ掴んだ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 15:53:16ペットボトルはパンパンに膨れて、既に破裂寸前だ。 「返すんだ! いい子だから!」 急いで手を伸ばす。 と。 子どもがキュ、とキャップをひねった。 ただの液体より遥かにマズいものが、僕めがけて噴射した。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 16:00:21咄嗟にかがんで避けたから、何が吹き出したかはよく分からない。 飛んでいった後ろ姿から察するに、多分化けた蝙蝠の精か何かだったのだろう。どういう経緯で閉じ込められたのか、なぜ置き去りだったのかは完全に謎だった。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 16:06:14子どもたちはポカンと空を見上げていた。僕は、妙なもので遊ぶなと説教をして、空になったペットボトルを没収した。 帰宅の途中でふと思いついて、蝙蝠の餌を買った。捨てようとしたのを逆恨みされちゃいけないしね。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 16:17:05それで、餌をベランダに置いて、お詫びで頭を下げた。 ちょうど今、外に例の蝙蝠が来ている。随分巨大で、これを頭からかぶっていたらと思うとゾッとするよ。 もう二度と子どもとペットボトルには関わらないつもりだ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 16:22:17これは本当にちょっとした話。 昨日夕飯の時に、普段なら食べきる白米を少し炊飯器の中に残しておいた。今朝食べようと思ってね。 それで、焼き魚と味噌汁と一緒に食べようと思って炊飯器を開けたら、何か居る。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 23:29:32豆粒程の大きさの真っ白い奴らが、ごちゃごちゃ集まって喋ってるんだ。 「どうしよう、僕もう硬くなってきちゃった」 「このまま食べてもらえないのかなぁ」 「寂しいよぉ」 「畑に帰りたいよぉ」 えらい騒ぎだ。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 23:31:59と、一人が顔を上げて僕に気がついた。ばっちり、目が合った。しばし互いに沈黙。 気がついたら、炊飯器の蓋を閉じていた。 「……何だ今の」 まだ夢でも見てるんだろう。そういうことにして、僕はそのまま二度寝した。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 23:35:04目が覚めてから蓋を開けると、そいつらはもういなくなっていた。僕は味噌汁と魚を温め直して、少し遅い朝食をとった。白米は美味しかったよ。 あんな無邪気なのを食べちゃったのかと思うと、寝覚めは少し悪いけどね。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-22 23:37:06せっかくの映画の帰りなのに、君は不機嫌だった。近頃ずっとこの調子だ。 「君、最近何か不満があるんじゃないか」 見かねて訊くと、君は息を吐いた。 「あんたに話してもどうせ何も解決しないわよ。大したことじゃない」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-23 00:41:00「ふぅん」 お決まりの相槌を打つ。気が進まないように切り出す君が、本当は僕に何か話したくて仕方がないのだとよく知っているからだ。 「それで、どんな話なの」 君はチッと舌を打った。 「それ普通、本人に訊く?」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-23 00:41:29「え?」 僕は面食らった。 「僕が原因なの?」 目を瞬かせると、君は苛立ちを現わにした。 「他に何があるってのよ」 「聞かなきゃわからないじゃないか」 反論すると、君はチッと舌打ちして苛立ちながらぼやいた。 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-23 00:42:20「なんであたし、あんたみたいなドン鈍いのと一緒にいるのかしら」 そう言われて、流石にムッとする。 「その言い草はないだろ」 君は一層鋭い目でこちらを睨んだ。 「じゃああんた、何も心当たりがないって言うの?」 http://t.co/Yoa5FrowrV #角川小説
2013-05-23 00:42:33