伊東乾先生@itokensteinの「指揮という仕事の基本は音楽劇の進行にある」

歌手が違えば声も違うが、それ以上に心も気持ちも違う。異なる人のさまざまな解釈や思い、その美点を広く掬い取りながら個人のイメージの箱庭を超えた豊かなものが生まれる。それがオペラ by 伊東乾
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Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

Ph.D Prof. Komponist-Dirigent / Raummusik Kollegium Berlin. Habe viele Interesse an der Wissenschaft und am Mitleben dadurch.

Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

30年くらい前だったかな、オーケストラなど器楽合奏の指揮の延長のような形で「オペラも振れなくちゃ」といった事が日本でも言われるようになった。これがどれだけ間違っていた事か、実際に仕事を始めてすぐに知れる所となった。オペラ「も」ではないのだ。指揮という仕事の基本は音楽劇の進行にある

2013-05-23 00:43:54
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

幾度か書いた事だがどうしても思い出してしまう。数年前に出した「指揮者の仕事術」に頂いた日本人読者の感想で、第九の歌詞の解釈を丁寧に記しているあたり「もう指揮なんかどこかいっちゃってるけれど面白い」的なリアクションを頂いたのだが、根本的に間違っていて、それ「が」指揮の仕事そのもの。

2013-05-23 00:45:48
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

というかテキストの内容を理解していない、なんて問題外は捨て置くとして、詩の言葉を歌としてどう成就させてゆくか、その解釈のない、例えば「冬の旅」のリサイタルとか録音とかありえないというのはさすがに分かるでしょう?そんな歌手ソリストたちのアンサンブルを作る指揮という仕事の正味の内容、

2013-05-23 00:48:19
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

ブラスバンドやアマオケなどの前で手旗信号で1,2,3,4とか踊りを踊るのは、音楽を指揮するという仕事とは別のものだとわきまえたほうが良い。日本人はすぐに「芸道」を作りたがる傾向があるけれど器楽のあわせだけに特化したバトンなんてカレーやシチューの野菜の皮むきみたいな下準備に過ぎず、

2013-05-23 00:50:26
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

変に一部だけ突出して事大主義的に考えても、音楽という大きな樹木の幹を養うものにはならない。例えばバッハという音楽家の全体像を考えるとき、平均律やフーガだけ取り出してテクストのあるカンタータや受難曲を無視したらどうなりますか?また受難劇の意味や表現を無視してバッハが演奏できますか?

2013-05-23 00:54:45
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

役者に名優と大根が別れるのは、言葉というものが、本当に極微の違いで天地の違いが出てきてしまうからだと思いますが、実際、そうした極微の差異に人間は敏感でもあるし、あるいはきわめて鈍感でもあり得る。このあたり考えさせられる所です。安手の広告みたいに露出頻度と連呼を良しとする場合も多く

2013-05-23 12:44:53
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

安易に善し悪しを言うことは出来ませんが、まあ概して、機械的な反復とか棒読みといったものは、特定の効果をあげることはあるにせよ、あまり推奨出来るものではありません。もっというなら、微細に「かゆいところ」があっても、そこに手が届かないような隔靴掻痒は、いかんともしがたいものがあります

2013-05-23 12:46:40
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

大学の中にはピアノを備えた教室が殆どなく(学生サークルスペースのほうが遙かに充実しているらしい)もろもろあってやむを得ず電子ピアノのたぐいを併用することがありますが、基本僕がそうした電子楽器が「苦手」なのは物理的に響くものどうしの引き込みあいなど、協力効果が欠如しているためで、

2013-05-23 12:48:37
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

典型的なのがペダリング。「ハーフペダル」のようなことが電子楽器には一切通用しない。残響ペダルは踏み込みの深い浅いで羊毛が弦に当たる圧力に変化が出るので、これでまあだましだまし、響きを聴きながら普通のピアノだと音楽を作って行くわけですが、これが皆無というのはピアノ的には厳しく

2013-05-23 12:51:15
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

オルガンとか、チェンバロ音色とか、別種のものであれば電子鍵盤でもいろいろ便利も便利なわけですが、例えばオペラを読み込もう、とピアノに向かうとします。電子鍵盤で30分くらい譜読みしてると、何というか窒息感みたいのが来て、どうもダメなんですね。古い楽器にチューンされた人間の限界ですが

2013-05-23 12:53:00
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

音楽との向き合い方には色々あると思いますが、僕はどちらかというと、完成された小世界を神経質に作り込んでゆく、というより、ある可能性の場を作って、そこに予想を超えたおもしろさが生まれてくる様態を楽しむ所があって、楽器で一音鳴らすにしても決まり切ったサンプリング音の反復だと息が詰まる

2013-05-23 13:00:55
Ken ITO 伊東 乾 @itokenstein

例えばオペラなどという音楽作りは、一つの決まり切った理想像を思い描いても豊かなものは決して生まれてこない。歌手が違えば声も違うが、それ以上に心も気持ちも違う。異なる人のさまざまな解釈や思い、その美点を広く掬い取りながら個人のイメージの箱庭を超えた豊かなものが生まれる。それがオペラ

2013-05-23 14:52:14