2013年5月25日

「量子力学ってどうも騙されているようで納得できない」人のための量子力学入門連ツイ

『日経サイエンス』の記者兼編集者、古田彩さんによる「量子力学ってどうも騙されているようで納得できない」人のための、日経サイエンス7月号「特集:量子の地平線」の前説連ツイ。まだ続くようなので、暫定まとめです。
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古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

その結果、量子コンピュータとか量子テレポーテーションとか、面白い技術がわんさか生まれ、逆に情報という切り口から量子力学を理解しようとの研究も盛り上がりました。量子力学の出発点を情報原理に求める発想は,その中から出てきました。(続)

2013-05-26 19:31:18
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

量子力学の出発点となる情報原理の候補は、いくつか提案されています。「かくかくしかじかの通信は不可能」とか「部分から最大情報を引き出せなくても全体からは最大情報を引き出せる状態が作れる」とか。ツイッターでこれ以上説明するのは難しいですが。(続)

2013-05-26 19:33:04
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

量子力学を丸ごと出せるようなものを見つけるには、もう一段の飛躍が要るでしょう。でも出発点が本当に物理原理になったら、量子力学の風景が変わると思います。(いったん了)

2013-05-26 19:37:17
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

追伸。木村先生の記事の紹介はこちらです。 http://t.co/eoMM11eyWP タイトルバックと表紙の原画も木村先生が描いて下さいました。

2013-05-26 19:57:24

第3講(最終回)

古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

「量子力学ってどうも騙されているようで納得できない」人のための量子力学入門連ツイ http://t.co/RrkfOSI3eq 最終回始めます。

2013-05-27 22:14:24
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

谷村先生は量子力学の出発点にある数学の性質そのものを量子の本質と考えており,木村先生はそういう数学のもとになる実験可能な物理原理を探していました。フォン・ベイヤー先生は第3の道で,量子力学の数学の意味を考え直そうと提案してます。http://t.co/lCAWTOkfkr (続)

2013-05-27 22:17:15
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

量子ベイズ主義,略して「Qビズム」。カナダの元気な物理学者,フックスらのアイデアです。記事の翻訳は杉尾一さん,監修は木村先生ですが,フォン・ベイヤー先生の見方に必ずしも賛成しているわけじゃないので,念のため。(続)

2013-05-27 22:18:20
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

ベイズ主義というのは確率についての考え方です。なんでいきなり確率が出てくるかというと,量子力学は高校の物理みたいに「位置は3」という答えが出て来るんじゃなくて,「もし位置を測ったら30%の確率で3と4の間でしょう」みたいな予言をするから。(続)

2013-05-27 22:19:44
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

量子力学の話でよく出てくる「波動関数」というのはざっくり言うと,測ったときにどんな値がどんな確率で出てくるかという分布のことです。一応は電子とか光子とか,ミクロなものに備わっている性質だ,ってことになっている。(続)

2013-05-27 22:20:36
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

だけどそれも問題はあって,有名なシュレーディンガーの猫の話では,箱の中に猫が毒薬の入ったミクロな瓶と一緒に閉じ込められています。10分以内に5割の確率で瓶は割れ,猫は死ぬ。猫は身をもって瓶の状態を測定し,10分後には割れたかどうか100%わかりますが,(続)

2013-05-27 22:21:28
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

箱の外にいる人間には瓶が割れたかを見ておらず,猫は生きてる状態と死んでる状態が重なってます。どっちかわからないんじゃなくて,どっちでもない。詳しくは谷村先生の記事を読んでほしいのだけれど,「測らなかった値は,あると思うな量子力学」なので。(続)

2013-05-27 22:25:26
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

で,このとき瓶の波動関数って何? 猫にとっての確率なら0:100だし,人間にとっての確率なら50:50なわけで。(続)

2013-05-27 22:26:56
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

Qビズムだと,波動関数というのは瓶の側じゃなくて,測定する側(人間でも猫でも可)が瓶について予想することを表している,と考えます。人間には人間の,猫には猫の波動関数がある。(続)

2013-05-27 22:27:52
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

「確率」の意味も変わります。同じ実験を何度もした時に「割れた」って結果がどれだけ出てくるかという客観的な頻度じゃなく,観測する側がどれだけ「割れた」と思うかという主観的な信念の度合いになる。これが量子「ベイズ主義」の名の由来。(続)

2013-05-27 22:28:53
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

観測される側の状態を記述するとされてきた波動関数を,観測者の側に持って行くのは,一見無茶ですが,物理と情報の関わりを考えたホイーラーや,その師である創始者ボーアに溯る,「観測者」の役割を重んじる伝統にのっとっている…ような気もする。(続)

2013-05-27 22:30:09
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

今年はボーアの原子模型100周年だし!( ← @Slight_Brightさん,無理やりつなげてみました)。(続)

2013-05-27 22:31:26
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

でも世の中には,測定の結果,観測する側が持っている情報が増えるんじゃなくて,逆に減るような阿漕な実験もあります(谷村省吾「光子の逆説」2012年3月号)。さっき谷村先生とちょっと話したけど,この場合Qビズムだとかえってすっきりしなさそう…(続)

2013-05-27 22:33:41
TANIMURA Shogo @tani6s

遅延選択実験や量子消去へのQビズムの適用はすっきり納得できないと私は思っていますが、Qビズムをよく知る方から、その点は大丈夫だと言われました。 /https://t.co/gggsIE6GUD

2013-07-09 12:54:56
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

波動関数とは一体何なのか。それは何を表しているのか。物理的実体はあるのか。百年議論されてきた問題に簡単に決着がつくとは思えませんが,量子力学を理解するには「確率とは何か」がカギになるというのは,結構多くの人が感じていることだと思います。(続)

2013-05-27 22:35:55
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

というわけで,決着がつかないまま終わります。7月号には私のテキトーなまとめじゃなく,もっとちゃんと書いてあるので,是非お読み下さい。(中締め)

2013-05-27 22:38:28

専門家向けにお知らせ

古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

えーと,書くかどうかちょっと迷ったんですが,物理の専門家の方向けに,今売ってる7月号の内容をごく簡単にご紹介します。

2013-05-28 00:12:43
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

谷村先生の記事は,代数的量子論の一般向け解説とも言える内容です。ベルの不等式の破れによる局所実在性の否定,ハイゼンベルク描像での物理量の時間発展,ミクロとマクロの差など量子論の基本的概念を,物理量の非可換性の観点からわかりやすく論じて頂きました。

2013-05-28 00:13:10
古田彩 Aya FURUTA @ayafuruta

木村先生の記事は,何らかの物理原理(情報原理)を課すことで,一般確率論から量子確率論を導出する試みの紹介です。情報因果律からベル不等式のチレルソン・バウンドを導出したパヴオフスキーの研究,純粋化可能の原理から量子確率論を概ね導出したダリアーノらの結果などを取り上げて頂いています。

2013-05-28 00:16:44
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