竹信三恵子『雇用劣化不況』まとめ

竹信三恵子『雇用劣化不況』まとめ
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H.Takano @midwhite

バブル崩壊後の不良債権問題は企業に人件費削減を迫り、04年までに派遣が自由化したことで05年には非正社員が3人に1人、15歳~24歳の若者ではほぼ半数にまで上った。95年から05年までに非正社員は590万人増、正社員は446万人減を記録した。(竹信美恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-25 08:56:01
H.Takano @midwhite

一方で正社員には過大な負担が課せられた。仕事のストレスによる鬱病などで精神障害になり、労災の申請する人は2000年の212件から04年は400件以上に膨らみ、07年には900件を超えた。90年代末に3万人を上回った自殺者数の水準は現在も続く。(竹信美恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-25 09:00:29
H.Takano @midwhite

また一方で02年から「戦後最長の景気回復」が始まり、テレビの討論会で国会議員は構造改革の奏功を主張し、経営者が日本企業の努力の成果と胸を張ったが、福祉の研究者は「人件費削減に懸命に耐えた労働者は、その貢献に報いてもらっていない」と嘆いた。(竹信美恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-25 09:05:16
H.Takano @midwhite

景気回復が労働者の犠牲の上に築かれたという意識がなければ、景気回復の成果を割り戻そうとする政策や経営が採られるはずがない。景気回復で増加した企業の利益のうち、労働者に分配された比率を示す労働分配率は、その後、下がり続けた。(竹信美恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-25 09:10:09
H.Takano @midwhite

経営側は、企業の業績が急速に回復する時は賃金の上昇がそれに追かないだけと反論した。しかし07年4-6月期に従業員給与は前年比0.2%減、役員報酬は8.7%増で、大手に限れば従業員給与8.7%増だが役員報酬は20.7%も増えている。(竹信美恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-25 09:16:19
H.Takano @midwhite

80年代にサッチャー政権下で雇用の規制緩和と公務の民営化を推進してきたイギリスは、08年のリーマンショックを境に大きく論調を変えた。雇用を柔軟化し多国籍企業を誘致すれば確かに素早く仕事を作れるが、不況が来るとすぐに撤退され失業率が跳ね上がる。(竹信美恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-25 09:51:13
H.Takano @midwhite

製造業派遣が解禁されたのは04年。契約期限の1年を過ぎると自社で直接雇用を申し入れなければならない規定が入った。06年に契約期限の上限が3年に延びたため、09年に大量の派遣社員へ直接雇用を申し入れる期限が来る。これを09年問題と呼ぶ。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-25 12:24:39
H.Takano @midwhite

トヨタは2000年から3年間で3割のコスト削減に成功し、営業利益は同年の4100億円から07年には2兆円を超えた。一方、下請けの中小企業は利益の増加に応じて社員のボーナスを増やす時も親会社からコスト削減の「改善指導」が入った。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-25 12:35:13
H.Takano @midwhite

トヨタ自動車の工場では怪我をしたら辞めてもらうと宣言され、熱中症で倒れた派遣社員は派遣会社の社員がこっそり箱に詰めて隠して敷地外に運び出し、工場内では起きなかったことにするという。工場内の労災は工場の管理職にとって大きな責任問題だからだ。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-25 13:00:14
H.Takano @midwhite

07年の労災による死傷者数131478人のうち派遣労働者は5885人に上り、製造業派遣が解禁された04年の約9倍に急増した。業種別では運輸交通316人、商業308人を大きく引き離し、製造業が2703人を記録している。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 13:20:14
H.Takano @midwhite

製造業での経験年数別の被災者は、1ヶ月以上3ヶ月未満が28.7%、1年以上3年未満が21.5%など、短期で変えられる派遣の働き方の歪みが浮かび上がる。これら表面化した労災の陰に、派遣会社に責任を転嫁することで隠されたいくつもの労災がある。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 13:28:12
H.Takano @midwhite

低賃金の非正規労働者の急増は消費の低迷を招き、不況からの本格的な脱出を妨げただけでなく、消費の活性化に必要な優れた製品を作り出す現場も破壊した。私たちは「不況を乗り切るための雇用劣化」から「雇用劣化による不況」への道を辿りつつある。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 13:34:59
H.Takano @midwhite

発言力の小さい非正社員の増加によって、顧客からの情報が遮断される。さらに非正社員には技能や熟練を要する専門職が多いため、彼らが組織の論理に左右されず知識に照らして独立した立場を取れなければ、危険回避や真のニーズ汲み上げに支障を来す。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 14:40:43
H.Takano @midwhite

2008年に石川県金沢市議会で、教員出身の山本由起子市議は教員の「見えない仕事」の急増を指摘した。生徒指導、保護者のクレーム対応に加え、教育委員会や保護者の「説明責任」を求める動きに応じた報告書の作成などで、授業準備の時間は大幅に削られる。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 15:01:59
H.Takano @midwhite

厚労省によれば福祉施設職員の月給は06年までの4年間で2万円近く低下し、全労働者平均と比べた水準は70%から64%まで下がった。介護報酬が下がると事業者利益を確保するためには人件費削減しかなく、福祉系大学で就職先の「福祉離れ」が起きている。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 16:06:38
H.Takano @midwhite

自治体における非正規職員数は06年度に約40万人で、公務員の4人に1人にまで増えた。その平均年収は01年の約180万円から05年の166万円に低下した。国家公務員の世界でも、06年7月時点で常勤が約30万人に対して非常勤は約15万人いる。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 16:26:40
H.Takano @midwhite

自治体の窓口で非常勤職員が住民の苦情を一身に受けて働いても、立場が弱く正規職員や自治体の上層部にも繋ぎにくい。苦情が仕組みの改善に繋がらず、苛立った住民が公務員を叩き、不公正な非常勤職員制度が改善されるどころか待遇の低下を引き起こす。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 16:43:21
H.Takano @midwhite

ある大手電機メーカーでは部署の正社員が5分の1に減り、正社員1人当たりの負担は重くなったが、目標を達成しても昇給しなかった。サービス残業が増えても、実働時間を申告すれば「生産性が低い」と評価を下げられるため、自主的に短い労働時間を申告した。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 17:53:52
H.Takano @midwhite

SHOP99のある店長はバイトが埋まらない時に店長として穴を埋めろと会社から言われ、入社した翌月から月に200時間、パートやバイトが見つからなかった時期は月300時間も働き、労働時間は年間3000時間にも上ったが、年収は約300万円だった。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 18:04:06
H.Takano @midwhite

労働基準法は「管理監督者」を労働時間規制から除いており、これが「残業代も払わなくて良い」と拡大解釈され、労働者に管理職の肩書きを与えることで残業代の節約と無制限の長時間労働を求める会社が相次いだ。それが「名ばかり店長」として注目を集めた。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 18:22:15
H.Takano @midwhite

ある人が新興の外資系IT企業のマネジャーに転職したところ、社員は全員がマネジャーなどの肩書き付きで、厳しい納期でプロジェクトを任され午前2時まで働くが、管理職だからと残業代はない。終電を気にしないよう職場の近くに転居する費用を会社が出した。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 18:28:19
H.Takano @midwhite

03年以降、労働基準監督署から残業代の未払いで指導を受ける大手企業が続出し、指導後に支払われた賃金の合計額は03年度に約238億円、04年度に226億円まで上った。指導が無ければこの賃金に見合う労働時間がサービス残業になっていた計算だ。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 18:36:13
H.Takano @midwhite

経済同友会の幹事を務めた渡辺正太郎氏によると、製造業では多数の工場ブルーカラーの上に君臨する、意思決定に関わる少数の大卒社員がホワイトカラーとして採用されてきたが、銀行や小売業では高度成長期にこれとは異なる大量採用型の大卒社員を採り始めた。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 18:50:21
H.Takano @midwhite

営業部隊などで活躍するこうした大卒社員はグレーカラーと揶揄されたが、経済が拡大していたため雇用保障などもあった。しかし経済が縮小を始めると、会社は正社員を雇用保障の弱い周辺的正社員と、経営に携わる幹部候補に分け、待遇に大きな差をつけ始めた。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 18:54:40
H.Takano @midwhite

しかし非正社員をまとめる役割は本来、組織の要だ。にも関わらずこれを調整弁として利用し、成果主義や人件費削減の負担を集中させたことで、大量退職や士気低下が相次いでいる。「名ばかり正社員」は、便利なようで会社経営を揺るがし企業活動を衰退させる。(竹信三恵子『雇用劣化不況』2009)

2013-05-26 18:59:50