京大法学部卒で法律に詳しいはずのパンダ先生の著作から学ぶ正しい自衛隊のROE

自衛隊の交戦規定ってだいぶ現実的になりましたよね
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副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

武器使用基準とイラク特措法に関する幾つかの考察 ドーモ、皆さん。フクアカです。 また例によって例のごとく、篠山半太@SHINOYAMA_Hanta先生絡みの長文です。

2013-05-26 23:25:12
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

具体的な内容としましては、先生の著作「君が衛生兵で歩兵が俺で」内、イラク派遣中の小隊が武装勢力に攻撃を受ける部分で描写されている「部隊行動基準」取り扱いについての検証、

2013-05-26 23:26:00
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

作中でその小隊を率いていた小隊長「繭川2等陸尉」に対する、兵卒としての私の評価、の2本でございます。 当初は後段を作る予定は無かったのですが、繰り返し読んでいる内に前段とは別の違和感を感じるようになり、とうとう1本書き上げてしまいました。

2013-05-26 23:27:01
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

では、そもそも何故今更、彼の本を掘り返すような事を始めたのか、から話を始めましょう。

2013-05-26 23:27:41
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

先日、仕事の関係で知っておくべき法令教育を受けました。その中で「部隊行動基準」「武器使用規定」「国際連合平和維持活動等における協力に関する法律」等の項目に触れる機会があったのですが、服務小六法のページを繰りながらふと「君が〜」の中にそんな記述があったのを思い出してしまいました。

2013-05-26 23:28:20
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

記憶が新しい内に、と課業後に小六法と当該物件を照らし合わせてみたところ、作中の法律解釈にとんでもない違和感を覚えました。

2013-05-26 23:29:09
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

「君が〜」を読まれていない方向けに、まず場の設定を軽く解説します。 平成17年8月17日、イラク サマーワ近郊にて、繭川巴2尉(当時)が指揮官を務める1個小隊の車列が武装勢力の設置した地雷に触雷、直後より武装勢力による激しい銃撃を受けます

2013-05-26 23:34:44
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

この時自衛隊は『部隊行動基準』により反撃能力を削がれており、武器使用は威嚇射撃のみとされています。しかし繭川2尉は車輌から下車している部下に「以前から決めていた」命令を発します。 「小銃班射手、目標は敵散兵!射撃用意!」

2013-05-26 23:35:52
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

しかしここで車輌に同乗していた防衛事務官の後藤田正義がその指示を職権により取り消します。 「待て、指揮車の後藤田事務官だ!職権で今の命令を撤回する!…繭川2尉、部隊行動基準で本小隊に認められているのは、威嚇射撃だけだ。指揮所の許可を待て!!」

2013-05-26 23:36:34
はんがー@横鎮霧島提督 @signal_army81

@ATOR86 補足:通常、規則や命令で明示されていない場合は事務官が命令を取り消すことは出来ません。命令系統がことなるからです。

2013-05-26 23:42:19
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

そして指揮所に無線を繋ぎ、指揮所に「戦闘事案」が発生している旨を告げ、指示を仰ぎますが、指揮所からの返答は 「現在対応を協議中。現時点での要撃は許可できない。全力で現状を維持せよ」 というもの。

2013-05-26 23:37:49
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

そうしている間にも部下は1人、また1人と敵弾に倒れてゆき、繭川2尉は腹を括ります。 「小銃班、及び指揮車射手、目標同じ、射撃用意!安心なさい、すべての責任は私が取ります!」 「射てッ!」

2013-05-26 23:39:04
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

繭川の射撃命令の直後に指揮所はイラク特措法に基づく要撃を許可し、タッチの差で繭川の基準違反は無かった事になる…というのが問題の事件です。 さて、ここで私が疑問に感じたのは3点。

2013-05-26 23:39:51
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

1.イラク特措法に武器使用の規定があるが、部隊行動基準がこれを制限し、武器使用を威嚇射撃のみに留めるという事は実際あり得るのか?

2013-05-26 23:40:27
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

2.またそれらの基準は隊員の身体、生命に切迫した危険が存在し、武器使用によってのみ回避されるという局面でも有効か?

2013-05-26 23:41:06
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

3.前述の前提において戦闘状況に突入した際、交戦するか否かの決定を後方の指揮所に確認するという事はあり得るのか?

2013-05-26 23:41:42
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

私が教育で学んだ状況対処は、確かに「これマジで守るの?」と言いたくなるような決まり事がいくつか存在しますが、それでもここまで徹底的に現場の人間の身体、生命の安全をないがしろにするような内容ではありませんでした。

2013-05-26 23:42:12
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

交戦規定で縛られる事を「手を縛って戦場に放り込まれる」と表現する事がありますが、これでは手を縛るどころか簀巻きにされて戦場に転がされてるようなもんです。

2013-05-26 23:43:08
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

そんな訳で我が中隊の幹部にタバコ吸いがてら質問をしてみました。 結果、雑談の域を超える興味深い話を聞く事ができ、また同じ質問を自衛官であるSIGNAL_ARMYさんにもしたところ、氏からも大変詳細な解説を頂き、その内容についても中隊の幹部の法解釈と概ね同じラインを辿っていました。

2013-05-26 23:44:28
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

無論、法律解釈というのは画一的なものではなく、解釈をする人に応じて色々と内容が変わるものです…が、作者と現職自衛官2名の解釈内容に、ストーリーの根幹を崩壊させるレベルの違いが見られるというのも中々興味深いので、今回の検証レポートを作る事にした次第です。

2013-05-26 23:45:10
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

今回の長文は自衛隊法、イラク特措法等を多数援用しています。要所を抜粋してはいますが、条文を全部記述するのは難儀なので気になる方は条文をググッて確認してみて下さい。 尚、解釈主文についてはSIGNAL_ARMYさんから頂いた回答文を使用させて頂いております。

2013-05-26 23:49:22
副赤@ 新刊鋭意製作中。 @ATOR86

用語の解説から始めます。「部隊行動基準」(以降ROEと表記)とは、一般的には「交戦規定」「Rules of Engagement→ROE」と呼ばれる決まり事を自衛隊語訳したものです。

2013-05-26 23:50:23