稲川淳二　つぶやき怪談　2013年5月28日

稲川淳二 @Junji_Inagawa

こんばんは、稲川淳二です。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

稲川淳二の「つぶやき怪談」、怖・楽しい時間を、共有しましょう。

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何が起こっても、責任はとれませんけど。

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岡山で会社勤めをしている、若い女性で、仮に綾子さんとしておきますが、彼女が入居したアパートは、畳は新しいし、壁も台所も綺麗だし、それでいて、家賃が安い、と、結構な物件なんです。

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ただ、狭い路地を挟んで、同じようなアパートが建っているんで、陽が射し込むのは、一日のうち、せいぜい昼をはさんだ、わずかな時間に限られてしまって、室内はいつも薄暗い。

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雨の日などは、朝でも夕方のように暗いんですが、それでも家賃は安いし、部屋もリニューアルされて綺麗なんでさほど気にもしなかった。

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ただ気になるといえば、綾子さんの部屋は１階の一番端なんですが、狭い路地を挟んだ向こうのアパートの端の部屋とちょうど窓と窓が向かい合った恰好で、その、向かいの部屋の窓には、四六時中、ブラインドが下ろされたままで、

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それもいつ見ても、ピッタリと閉まっている事なんですね。

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もともと、陽の当らない窓に、日除けのブラインドを下ろしているなんておかしな話で、それは恐らく窓が向い合っているんで、部屋を覗かれたくないという、自分に対する意志表示のように見えて来て、

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まるで自分が、他人の部屋を平気で覗き見るような、モラルの欠如した人間と思われているようで、少々、不愉快に感じていたんですがね。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

（まあ感じの悪い人と顔を合せるよりいいか）と、納得する事にした。

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そうして、日が過ぎてゆくうちに、（多分、向いは入居者のいない空き部屋なんだなぁ）と思うようになった。

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そんなある日、職場の同僚の、紗也香さんから、「ねえねえ、怖い話、教えてあげようか？」と、噂話を聞かされた。

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それというのは、３０代後半の独身のＯＬが、鍵の掛かったアパートの自室で、変死体で見付かったというんです。

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死因は自殺でなくて、過失による窒息死で、死後、既に一週間程経過していて、部屋の中は、酷く汚れて、耐え難い異臭が漂っていたそうです。

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その女性は、自らの嘔吐したものの中に、顔を沈めて横たわっていたという。

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話では、このＯＬは、職場での人間関係とストレスから、精神を病んでいたようで、休暇をとっていたんだそうですが、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

酒と薬物の多量の摂取で、体の自由を奪われて、起き上がる事が出来ずに、嘔吐しながら部屋の中を這いずり回って、血も吐いていたようで、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

それが、喉に詰まって呼吸が出来ずに、踠き苦しみながら、窒息死したというんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

死ぬまでに、たったひとりで苦しむ時間が、かなりあった事が哀れだった。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、そんな事からか、この部屋に、死んだＯＬの怨霊が取り憑いてしまって、時々姿をみせるというんです。

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と、まあこんな話を聞かされて、ついでに、「その怨霊のいる部屋っていうのがねぇ、どうもねぇ、あなたのアパートの近くらしいのよ」

稲川淳二 @Junji_Inagawa

と教えられて、驚くのと同時に、（待ってよ、それって、ブラインドの下がった真向かいの部屋の事なんじゃないかな・・・）と、ふっと思った。

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（幽霊の出る部屋なんかがあったら、他の部屋も借り手がつかなくなっちゃうし、雨戸が閉まったままじゃ、怪しまれちゃう。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ブラインドを下ろしておけば、空き部屋かどうかわからないし、外から幽霊が見える心配もない・・・・か。なるほど、それで向かい合ってる私の部屋は、家賃が安い訳なんだ）