メモ・5月後半

後半のネタメモ
ログ
0

少女の追想

酔宵堂 @Swishwood
何かを思い出せそうな気はするのに。とても、大事な何かを。それは確かこの街に越してくるよりもずっと前、とても夜が怖かったあの頃の話。わたしはもっとずっと小さくて、実のところ明日をも知れぬ命だったのだと云う。手術に耐えられるかも怪しいと、そう云われていた頃に見た——夢の記憶だった。
酔宵堂 @Swishwood
ビニールのカーテン越しに、少し歪に摩天楼が見える。暗い部屋にわたしの生命をつなぐ音だけが空気を染め上げるそこから、確かに見たのだ。それは背の高い僧侶のような姿をしていて、ビルの上にぼんやり光りながら佇んでいた。怖くなって必死に毛布を引き摺り上げようとしたその時、確かにそれを見た。
酔宵堂 @Swishwood
父がそう名乗り出られない理由なら、入院中には勘づいていた。と云っても、漠然とだが。身体の血の巡りが悪い分か、頭だけは回ったらしく、学校に通うと云うのも本当は必要ないのに……とはなかなか云い出せず。そんなわたしを母はなんと云って諭したのだったか。今にしてみれば、感謝する他ない。
酔宵堂 @Swishwood
学校には通えない分を通信教育で補っていたのだが、好奇心のままにやっていたらどうも学年だとかを大きく逸脱してしまったらしく。本来であればそろそろランドセルが一度嫌になる頃合いにはもう、ふつうに中学生の問題と戯れていたのだった。そこに、転院の話だ。なんでも、母の郷里でもあるらしい。
酔宵堂 @Swishwood
何をされるのか尋ねたことがある。返ってきた答えに(まあ、人体実験みたいなものよね)と、その時は思ったものだ。けれどそれは裏返しに、父とは名乗れぬその人の出来る最大限の愛情だった。お蔭で、今のわたしがこうしてある。胸にうっすらと残る傷痕は、その記憶そのものでもあるのだ。
酔宵堂 @Swishwood
荒事には慣れたけれど、元来身体を動かすのは得意な方ではない。この時も確か、覚束ない足どりでリハビリに励んでいたのだったか。私はいなくなるかもしれない、と、そう母は何気ないふうに口にしたのだった。とうぜん、その意味など知る由も無い。それが何のことか知らされるには、まだ時間があった。
酔宵堂 @Swishwood
母は留守がちな人で。家のことは昼のうちにやっておいてくれる人に専ら任せっきり、と云う有様だった。生憎どんな人だったかは記憶に定かではないのだが、寝込んで休んだ時に世話もしてもらっていながら薄情なものだとは思う。だから、"その日"が本当に来るなんて——思っては、いなかったのだ。
酔宵堂 @Swishwood
本人がいなくなってしまってもう随分経つ。こんなことならそう邪険にするものではなかった……などとは、今だからこそ云えるのだろう。それでも、ほんとうに、感謝はしているのだ。転校してきたその日から、何かと気にしてくれていたのも、中学が同じだったのも本当は——嬉しかったのだった。
あまゆき @nekocarpaccio
クーほむちゃんになってからも、杏子からしてみればなぜか自分をよく知り信頼を置く人物だからねほむらちゃん。杏子は長らく死に場所を求めてひとりで過ごしてきたんだ。「この同類は短期間のうちに自分を理解したのか?信じていいのかもしれない…」なんて勘違いしたい気分でもあるんだぞ。
酔宵堂 @Swishwood
「いや。ひょっとしたらコイツは、あたしなんかよりずっと"見てはいけない"ものを見続けてきたんじゃないだろうか。うまく云えないけど、その時そんな気になったんだ」
酔宵堂 @Swishwood
大前提まどほむの、ほむさや発さや→ほむ←杏経由の杏さや、からの後日ほむ杏、みたいな?(改変後
酔宵堂 @Swishwood
結局それはなんだったのだろうか。なにか大事なものを喪ってしまった気がするのに、思い出せないでいる。いや——大事なものと引き換えに、ひとつの名前だけは憶えている、そんな感じかもしれない。
酔宵堂 @Swishwood
とても大事だった気のするその名前を、誰に訊いても知らないと云う。よくわからなくなって、いつしか気づけば夕暮れの河川敷を歩いていた。 ——そう云えばあれから、一度お邪魔したことがある。大勢でご迷惑じゃありませんかって、そう訊いたら笑顔で「娘が出来たようなもんだよ」と返されたけど。
酔宵堂 @Swishwood
その子には随分懐かれてしまい、帰るのにひと苦労させられたのを覚えている。その時、そのことを口走ったのだったか。まさかそれを覚えていたり、気にされたりなどするまいと思っていたのだが。
酔宵堂 @Swishwood
そのことには、本当は少し躊躇いがあったのだ。だからその日は書き置きをして、家を出た。そうして帰ってきて、消し忘れでない灯りが灯っているのは……いつぶりのことだろう。「おかえりなさい」多分、数えるほどしかかけられたことのない言葉。「ただいま」で、よかっただろうか? 「ええ」、と。
酔宵堂 @Swishwood
顔を合わせたことなど、数えるほどしかない。けれどその人は微笑みを絶やさず「これで良いのです」と云う。お話ならきちんと伺っております、どうかご心配なさらないで、あの方達にならお任せ出来ますよ、と。再加熱でないスープは美味しいのに、やけに塩辛い気がしたのは不思議だった。
酔宵堂 @Swishwood
持ち出すほどの荷物はない。鞄が少し、箱が一つ。それで語り尽くせるほどの人生だ。「後は片付けておきますから」「すみません、何から何まで」「良いんですよ、こうして最後にきちんとお話し出来ただけでも」「ありがとうございます」温かく、抱きしめられていた。「自分らしく、幸せになるのよ」
酔宵堂 @Swishwood
みたいな経緯で、彼女は鹿目家に居候の身になるのだ——的な。多少無理はあるのだが、そう云うのを夢想する
酔宵堂 @Swishwood
放っておけなかったのはきっと、十数年前のあの夢の所為なのだろう。あの子と話しながら、私は"あの子"のことを思い出しかけていた。どうして今頃唐突にそんなことを思い出したのか、何か記憶がここまで出かかっているもどかしさを抱えながら「この感じ、つい最近にも……?」と思っていたのだ。

ときのわの、おとぎばなし

酔宵堂 @Swishwood
それは遠い遠い未来のこと、それとも。 ただ、世界がもう少し奇蹟に寛容でなかった頃のお話。
酔宵堂 @Swishwood
誰も知らない世界の終わりで。 それは人知れず目覚めます。だって、その頃には世界にヒトなんていないのですから。
酔宵堂 @Swishwood
それは云ってみれば、絶望そのもの。世界中のあきらめが、呪いを帯びて見えないカタチに凝り集まったもの。それは在るだけでほかの”在る”を許さない、そう云うものでした。
酔宵堂 @Swishwood
多くの、知る限りすべての世界の終わりで、です。 誰もその姿を見ることはかないません。
残りを読む(87)

コメント

ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする