林浩一さんの「ロストスキーヤー現象」の解説

株式会社ウルシステムズディレクター、ピースミール・テクノロジー社代表 林 浩一さんの「ロストスキーヤー現象」の解説 「ロストスキーヤー現象」とは、 いつの間にか当初思っていたのとは違う行動をとってしまうということ。「結局やりたいのはXXだよね」「じゃあ◇◇をやるべきだよ」という流れになる。 続きを読む
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林浩一 @ko1hayashi

【L00】これから数回にわたって「ロスト・スキーヤー現象」と筆者が呼んでいる典型的な議論の混乱パターンを解説します。位置づけは、コラム http://ow.ly/2hdjbの「ロスト・スキーヤー現象とその悪用(1)」の続きなのですが、簡単なまとめから始めます。 #maltweet

2010-07-27 23:37:17
林浩一 @ko1hayashi

【L01】「ロスト・スキーヤー現象」というのは、筆者が名付けた典型的な議論の混乱パターンのひとつで、いつの間にか当初思っていたのとは違う行動をとってしまうというものです。基本的な流れは「結局やりたいのはXXだよね」「じゃあ◇◇をやるべきだよ」というものです。‥ #maltweet

2010-07-28 02:05:30
林浩一 @ko1hayashi

【L02】業務改善の基礎データを集めるため、関係者にメールで調査票を配布して提出を依頼したとします。しかし、提出者が少なく、裏付けとして十分なデータになりません。メールや電話で催促しても多忙を理由に提出してくれません。どうやったら提出してくれるか悩んでいます。 #maltweet

2010-07-31 22:58:37
林浩一 @ko1hayashi

【L03】そこで上司に、関係部門の責任者から調査票の提出を強制してもらう依頼をしたところ、次のように言われました。「その前にやることがあるだろう」「結局、やりたいことは調査票を提出してもらうことでなく、各項目への回答を得ることだろう」さて続く上司の回答は?‥ #maltweet

2010-07-31 23:05:19
林浩一 @ko1hayashi

【L03追伸】ちなみに、問題のない例から説明をしています。あと最後に「‥」が着いているときは、続きはまた明日というコンベンションです。では‥ #maltweet

2010-07-31 23:09:04
林浩一 @ko1hayashi

【L04】たとえば、上司は次のように続けます。「各項目への回答を得たいのなら、調査票の提出を待つまでもなく、電話で聞けばいいじゃないか。調査票への記入は君がすればいいだろう。電話がつながらなければ、直接行って聞いてその場で調査票の記入をすればいいだろう。」 #maltweet

2010-08-01 23:54:16
林浩一 @ko1hayashi

【L05】この例で上司は一旦、目的(項目への回答を得る)に立ち返り、最初に考えていた施策(調査票の回収)でなく、目的達成する別の方法(電話・口頭で聞く)を指示しています。煮詰まっているときは、この目的と施策を上下する手法で突破口を見つけられることがあります。‥ #maltweet

2010-08-01 23:56:08
林浩一 @ko1hayashi

【L06】一旦目的に立ち返った議論は、膠着状態では希望の光に見えます。ハッとして、「どうしてこのことに気づかなかったんだ!」という感動すら呼びます。そこに落とし穴があります。この例で、上司の指示通りにやってうまくいくこともあれば、うまくいかないこともあります。 #maltweet

2010-08-03 12:57:25
林浩一 @ko1hayashi

【L07】うまくいかない例を示して問題点を考えてみましょう。例えば、電話で回答を聞いたところ次のように言われました。「この場ですぐ答えろと言われても、過去1年のデータを集計しないとすぐには答えられない質問だよ。その時間がとれずに提出できないって分かってる?」‥ #maltweet

2010-08-03 17:55:32
林浩一 @ko1hayashi

【L08】目的に立ち返って施策を考えるときの落とし穴は、そのときに考えた代替施策がとても素晴らしく思えてしまうことです。例えるとスキー場でリフトで上に登って、眼下を見下ろすと今までいたところが小さく見えます。あんなところでぐずぐずしていたのかと思う感覚です。 #maltweet

2010-08-03 21:10:26
林浩一 @ko1hayashi

【L09】上から見下ろせば、小さな障害に見えてもいざ下におりると、それまで以上に大きな障害だったということは珍しくありません。代替施策を考えるとき、上位目的からの視点だけで、具体的な地に足が着いた検討をせずに採用すると、結局問題解決できないことがあるのです。‥ #maltweet

2010-08-03 21:11:54
林浩一 @ko1hayashi

【L10】担当者の苦難は続きます。電話の相手から続けて次の指摘を受けます。「大体、データの集計を我々がやるのを待つ必要ないでしょう。結局、集計は誰がやっても同じなんですから、そっちで集計すればどうです?元データは本社の管理部門に言えば、直接もらえるはずです。」 #maltweet

2010-08-04 22:06:53
林浩一 @ko1hayashi

【L11】データをもらえば自分で集計できることに気づいた担当者は、管理部門にデータをもらいに行きました。そこでの指摘は「そのデータならすぐに出ます。ただ、こんなデータ集計したところで、面倒なだけで業務改善のために有用なデータになるような気がしませんけどね。」‥ #maltweet

2010-08-04 22:08:19
林浩一 @ko1hayashi

【L12】以上の状況を整理しましょう。目的に立ち返って、新しい施策を実施するということが複数回繰り返されています。施策:調査票の提出を待つ→目的:項目データを集める→施策:電話で聞く→目的:項目データを集める→自分で元データから集計する。といった流れです。 #maltweet

2010-08-06 02:27:39
林浩一 @ko1hayashi

【L13】この例では目的と施策の上下を繰り返す中で右往左往する結果になっています。目的のレベルが変化すると一層混乱します。より上位の目的から考えると代替施策の選択肢はたくさん現れます。相手の意見を否定するのは、目的を相手の想定より上位にシフトすれば簡単です。‥ #maltweet

2010-08-06 02:28:34
林浩一 @ko1hayashi

【L14】よく上司が部下に対して「目的を明確にして作業するように」という指導を行っているのを見かけますが、これまでの説明からそれがそう簡単な話ではないことがご理解いただけると思います。目的にはレベルがありその設定次第で最適な作業が何かが変わってしまうからです。 #maltweet

2010-08-09 01:56:32
林浩一 @ko1hayashi

【L15】目的のレベルを上下させた結果、元々やろうとしていたこととは別のことを行ってしまう状況をMALTでは「ロスト・スキーヤー現象」と呼びます。上で説明したようにリフトで上に上ってしまった結果、元の場所に戻れなくなってしまったスキーヤーに似ているからです。‥ #maltweet

2010-08-09 01:58:14
林浩一 @ko1hayashi

【L16】さて「ロスト・スキーヤー現象」は通常、問題解決のための施策を実行しようとする際にちぐはぐな行動をとるという形で現れます。しかし、悪用とまでは言えないにしても人によっては急場をしのぐテクニックとして、無意識的にこの現象を使っていることがあります。 #maltweet

2010-08-10 01:07:28
林浩一 @ko1hayashi

【L17】こうした「悪用」の例をいくつか見ていきます。ひとつは「言い訳」です。要件定義書の作成が期限どおりに間に合わなくなったとします。「えーと、要件定義の目的は何だっけ?設計工程に対して要件がちゃんと伝われば良いんだよな。じゃあ」この続きは想像つきますよね‥ #maltweet

2010-08-10 01:09:08
林浩一 @ko1hayashi

【L19】続きは「要件定義のうち詳細な部分は、自分が口頭で伝えることにして、記述を省くことで時間短縮を図ろう」となります。もちろんこれは一歩間違えると後の工程に重大な支障を生じます。少なくとも省略した内容を必要な時に必要な人に漏れなく伝えるのは極めて困難です。 #maltweet

2010-08-11 00:15:21
林浩一 @ko1hayashi

【L20】人間せっぱ詰まると、落ち着いて考えるとかえって面倒な状況を引き起こすとわかる綱渡りも、目的に立ち返ることを言い訳に、選択することがあるので要注意です。次の「悪用」パターン「無茶振り」に移ります。当初の想定外の仕事を納得してやってもらうのに使います。‥ #maltweet

2010-08-11 00:20:46
林浩一 @ko1hayashi

【L21】担当者に他部門のマネージャが無茶振りする例を見てみましょう。マネ「私が見ているコールセンター部門のシステム検討のリーダーをお願いしたい」担当「ちょっと無理です。今取り組んでいる商品配送部門の作業ミスを減らすためのシステム連携の活動に集中したいのです」 #maltweet

2010-08-13 00:50:43
林浩一 @ko1hayashi

【L22】マネ「その活動には私も大賛成だ。ところでその配送業務のシステム連携は何のためにするんだい?」担当「作業ミスをなくして効率化するためです」マネ「なるほど。じゃあそれをするのは何のため?」担当「それはお客様に対して商品を間違いなく素早く届けるためです」‥ #maltweet

2010-08-13 00:53:36
林浩一 @ko1hayashi

【L23】マネ「じゃあ、お客様に対して商品を間違いなく素早く届けるのは何のため?」担当「抽象的ですが、当社の製品を購入したお客様の満足度を高めるためではないでしょうか」マネ「そのとおり。サービスの満足度は製品だけでなく配送からサポートまでトータルで最大化する」 #maltweet

2010-08-15 01:59:42
林浩一 @ko1hayashi

【L24】マネ「当社製品は品質の評価は高いもののトータルなサービスという点で競合と見劣りする。そこを変えたいという点で、君がやろうとしていること私がやろうとしていることは同じなんだ。協力してもらえないだろうか」担当「ではリーダーは無理ですができる範囲で‥」 #maltweet

2010-08-15 02:07:26