オレの妹がカリフなわけがない！#15

カリフラノベ『オレカリ（略称）』 @caliphnovel

「オレの妹がカリフなわけがない！」 #１５

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「無碍様、垂葉を連れて参りました」 これがプラチナクラスの教室！目が眩む。エアコンもなく未だに木の机付き椅子のブロンズクラスとは天と地の差だ。飛行機のファーストクラス並みの席というのは誇張じゃない。しかしそんなことはどうでもいい。オレはここで妹と対決せにゃーならんのだ。１

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「ようこそ、ブロンズクラスから遠路はるばるこのプラチナクラスへ♪」 気後れするがこう言われては教室に入らないわけにはいかない。 「垂葉君が、私を差し置いて生徒会長になりカリフに就任した身の程知らずな妹を悔い改めさせる、というので、私が特別にこのプラチナクラスに招待したのさ」２

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あいつが無碍を蹴落として生徒会長に当選したことには何の文句もないし、むしろ、ざまぁみろ、だ。それにカリフに就任って、身の程知らず、とかいうレベルの話じゃないだろう。 とか、無碍にツッコミを入れても話がややこしくなるだけそうなので、奴は放っておき、オレは意を決して妹に向き合った。３

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なにしろ本当にブロンズクラスからプラチナクラスに来るのは遠路はるばるなので、昼休みの間にオレの教室に戻るには手短に話を済まさなければならないのだ。 「…生徒会長当選おめでとう…」 何を言っているんだオレ！ 「もう腕は大丈夫なのか？」 「言った通り、衣織の腕は確かです」４

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「それにしてもいきなり腕を切り落とすなんて考えなしな…」 「ちゃんと考えて左手を切り落としています。キーボードを打つ速度にも殆ど影響はないし、小太刀を扱うのにもなんの支障もありません」 無碍が口を挟む。 「お前たち、何を和んでいる！」 いや、少しも和んでないぞ、この会話は。５

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「ごほ、ごほっ…　え～と…　お前、生徒会長になったのはいいけど、カリフってなんだよ」 「カリフは、幼稚園の園長ではありません」 あいつ、やっぱり昔のことをまだ根に持っていやがった。 「そんなことは分かっている！　…今は…」 「お兄さまはカリフの意味が分かっているのですか？」６

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「カリフというのはアラビア語でムハンマドの後継者という意味だ。カリフにはいろいろ資格があって男じゃないとカリフにはなれないんだ」 「カリフはアラビア語ではありません」 「えっ？だってカリフはイスラームの制度でイスラームの言葉はアラビア語だろ…」７

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「カリフは英語のcaliphが日本語読みされたものです。そしてcaliphはアラビア語のخليفةハリーファが訛ったものです」 「ハリーファ…？」 「日本の学問は全て欧米の請け売りです。イスラームもそうで、カリフという言葉も日本には欧米経由で入ってきているのです」８

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「 カリフの意味を正しく理解するには、アラビア語を知らないといけません。アラビア語のハリーファの最後の文字はター・マルブータです。 ター・マルブータは名詞の女性語尾、つまり、ハリーファは女性名詞です。だからカリフは本来女性がなるべきなのです。９

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校祖天馬真人の大アジア主義を校是とする君府学院は外国語で中国語、アラビア語、ペルシャ語、トルコ語を選択できたが、愛紗は密かにアラビア語、ペルシャ語、トルコ語をマスターしていたのだった。 「カ、カリフが本当は女性だなんて初めて聞いたぞ…」１０

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「世界はあなたがネットを覗いて想像しているよりもずっと奥深いものなのです。」 愛紗のやつが言った。 「さぁ、あなたのクラスに帰りなさい。ぐずぐずしていると４限に遅刻します。これ以上成績が下がって、奨学金を打ち切られて除籍放校になりたいのですか」１１

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「この役立たず！」 オレは藤田波瑠哉にプラチナクラスの教室から叩き出された。１２ （#１５終わり #１６に続く）