連作詩「電気を消して」

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プロローグ

asaki @ki_mi_ni

朝を希うわたしのための、夜明け前。

2013-06-02 04:40:01

第一章

皐月猫 @satsuki_neko_m

電気を消した。 暗い部屋の中、美しい君の輪郭をなぞる。月明かりは、優しく冷たく、君の影を描いた。 君が消えてしまう気がして、放っておけなかった。怖かったんだ。 「ねぇ、どこにもいかないでー」 僕は、君の体温を不安な感情ごと掻き抱き、静かに少しだけ泣いた。

2013-06-01 22:24:48
ソーダアメ|140字小説 @sodaame140

静かに少しだけ泣いた夜がすぎて、鳥の声、朝の目覚め。君はまだ隣で寝息をたてている。 ねえずっと一緒だよなんて僕は信じないよ。いつかは離れるんだ。「ぼくはいなくなる。」 それまでは一緒だよ。きっと一緒。君の気が変わるまで、もしくは僕が出ていくまで。 朝の光で、僕は本を読む。

2013-06-02 09:20:16
皐月猫 @satsuki_neko_m

頁をめくる音を傍に、記憶を辿る。 ねぇ、どこにもいかないでー そう縋った貴方は、私の言葉なんて聴こえていないようで。永遠など無い。悲痛な表情には覚悟があった。 それでも私は、一緒にいよう。君が去ってしまうまで。 じわり、目頭が熱をもつ。寝返りをうつふりをして君から涙を隠した。

2013-06-02 09:56:56
asaki @ki_mi_ni

朝の光の中で本を読む僕の姿を、開かれた瞼の奥が見つめている。 ほんのすこし息を呑んで、それからゆっくりと目を細めた。僕は今、君の目の中にいる。 起きてたんだ。 うん、おはよう。 まだ夢を見ているような君の声。 まだ覚めない夢を見る僕。 ひどく幸福な、二度とない朝だった。

2013-06-02 10:04:58
ソーダアメ|140字小説 @sodaame140

ひどく幸福な、二度とない朝。 僕はそうつぶやき、今日の記憶を刻む。 忘れないように。 そして、もう思い出さないように。 僕は本の栞を挟み、いつかの夢に、終わりを告げた。

2013-06-02 11:43:38
蒼月 @gris_1505

ひどく幸せな二度とない朝を僕は塗り重ねる。 切り取られた記憶は複雑な色合いになり、ある時は光にある時は闇に映し出されて、尚深く心の深淵に沈む。酷く独りよがりの、その。 何か…言った? ううん、何も。 (愛してる) 言葉にすれば消えてしまう気がして。 吐息の形で、僕は飲み込む。

2013-06-02 11:21:50
ソーダアメ|140字小説 @sodaame140

吐息の形で飲み込んだ、淡い夢。ゆめ。僕は君の耳元でささやいて、君の夢を覚まそうと、吹きかける息。僕が君の夢を飲み込むから、君の悪夢を僕にちょうだい。 「おはよう」 僕は意識を取り戻して、現実に戻る。ああそうか、ここはまだ夢の中。 君は、まだ僕の隣りにいる。 そう信じてる。

2013-06-02 11:58:14

第二章

雪野 @you_ki_yu_ki

吐息の形で飲み込んだ想い、体の中に蓄積していく。 言えなかった、言いたかった、言わなかった、 「 」 朝が終わってしまったら、もう二度とやっては来ないから。 僕はゆっくりとページをめくる、 朝を、引きずっている。 君の目に誰かが入る日が来ても、 この朝は、消えないで。

2013-06-02 11:39:50
ソーダアメ|140字小説 @sodaame140

「消えないで」 君が寝言でつぶやいた声に、僕は反応するか迷って、そして口付けした。 君の夢を僕は飲み込む。悪い夢なら覚めればいい。幸せな夢なら冷めなければいい。 ベッドの上は少し冷えて、梅雨の風が心地いい。僕はまた本のつづきを読む。君が望むならお話は続く。終わらせないから。

2013-06-02 12:09:23
雨宮真水 @sucretic

この朝は、消えないでほしいと。ささやかな祈りにも似た、思いを指先に託して頁をめくる。ふと目についた一文がさわりと心の表面を撫でた。この幸福を留めておくことができるなら、と淡く微笑んで、そっと白い光を透かす。栞を挟んで目を閉じたら、時間が止まればいいのに。

2013-06-02 11:49:35
ソーダアメ|140字小説 @sodaame140

<淡く微白い光を透かす。栞を挟んで目を閉じたら、時間が止まればいいのに。> 僕の本のつづきは、夢とリンクしてるようで、ここが夢なのか現実なのか、または本の中なのかわからない。栞を挟むたびに止まる時間と、絶対に止められない現実の時間と。 僕は夢の中で恋をする。またね。僕の恋人。

2013-06-02 12:26:07
愁夢 @s_shumu

時間が止まればいいのに。 あなたの名が刻み込まれた本を閉じて、 ページを追い越していく文字を置き去りにした。 もし赦されるなら、 句点だけを、どうか。 読点で終わった日々が哀しい、 アイシテイタ、 沈殿したシーツを冷やしていく風。 でも、それが重たい表紙を捲ることはなかった。

2013-06-02 12:07:42
@kaze_tayori

重たい表紙を捲ることも、 ましてやこの朝を翻すこと、も。 ソシテ、コノ先モ 、 終わりのないことが ひどく虚しいと予測しながら。 盛られた毒に、 指を伸ばすように。 光の中、ふたりでいい。 呼吸さえも疎ましく その手を取り、沈む。 どこへ…? 泡になり、彼方。

2013-06-02 14:34:54
雪野 @you_ki_yu_ki

終わらせないと決めた。 昼が近づいても、しとしと降る雨は変わらない。 ぱたんと閉じた表紙をそっと撫でる。 物語は、あと一章だけ。 うーんと君は小さく伸びをする。 ブランチには、甘いフレンチトーストを作ろうか。 君は夢の話をする、僕は軽く頷く。 まだ続く夢物語、君がいればそれで。

2013-06-02 15:58:39

第三章

繰り返す夢の狭間で、僕は永遠に、君との恋を繰り返す。

賞味期限切れの感情を、集めて、溢れて、誤魔化して、使い続けた。

「もうゆるして」

君の声が、聞こえた気がした。

僕は捕らわれている牢から抜け出して、外に出る。

そして僕は気付いた。

僕の感情は、もはやその鳥籠の中で廻っていて、他の者を望んではいないのだと。

他の者を望む感情は、もはや残ってはいないのだと、気付いた。

雪野 @you_ki_yu_ki

落ち、て、いく、 その先。 終わりには辿り着かない、 ハッピーエンドしか認めないのなら。 色褪せた表紙をひとり、呆然と立ち尽くして。 そっと撫でた、あの感触、 を、僕は。 全てはそう、エンディングに収束しはじめるために。 この朝以降が蛇足でしかないのなら、 もう、いっそ、

2013-06-02 16:13:30
皐月猫 @satsuki_neko_m

もう、いっそ、 そう、いっそのこと選んでしまおう、僕は僕の手で。 エンディングなんて何処にもないなら。転がっているのが、僕の願いだけなら。 向こうの世界では色褪せていた表紙も、こちらではやけに鮮やかだ。 パ、ラレル、か。 君との未来を探して、僕はまた別な朝を彷徨う。

2013-06-02 16:26:30
雪野 @you_ki_yu_ki

僕はまた、別な朝を彷徨う。 何度も、何度も、何度も、 繰り返す。 シュミレーションは完璧だ、でも何故か収束するのだ、 ひとり、へ。 隣で寝ている君、愛しげに頬を撫でる。 (安心してね、僕が、必ず) 次こそは、寝言がそう聞こえた気がした。 いつもと違う、憂鬱な影。 次こそ、は?

2013-06-02 16:33:08
皐月猫 @satsuki_neko_m

次こそ、は。 瞼を閉じたまま、心の中で祈る。 独り彷徨う君を、幾度も見送った。 何度も、何度も、何度も、 「ねぇ行かないで。」 頬を撫でる手の優しさに、泣きそうになる。 次こそは、 君と時を刻めますように。 朝の光の中、また本を開いた君のシャツを、私はぎゅっと握った。

2013-06-02 16:58:36
雪野 @you_ki_yu_ki

君は、僕のシャツを引っ張った。 小さな手、この手で君は、 未来を掴もうと。 眠り続ける横顔に、涙が伝った。 悲しい夢を見ているの? 僕は、どこにも行かないから。 安心してと、囁いた。 終わりで始まりのこの朝から。 ふたり一緒に願えば、きっと。 実現する明日を、

2013-06-02 19:57:23
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