おたべさんのストライクウィッチーズPMC話

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|日0☆TK @kyuumaruTK

21世紀、リベリオン合衆国。19歳になったアリシアは就職出来ず、かといってウォルマートでレジ打ちも出来なかった。チアでもなく、かといってギークでもなかったハイスクールを卒業して一年、プアーホワイトである両親の脛は齧るには心許なく、体を売る気もない #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 19:52:24
|日0☆TK @kyuumaruTK

街にはマリンコと空軍の事務所があったが、軍隊は怖い所だとリベラル志向な両親に教えこまれたアリシアは入隊する気もなかった。生きるためには仕事をしなければならない、焦りが募る日々。シリアルの空き箱とバドワイザーの缶が散らばる部屋でアリシアは苦悩する #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 19:54:43
|日0☆TK @kyuumaruTK

アリシアはとりあえず始めてみようと思った仕事に運送業を選んだ。運動神経が良い訳ではないし頭も良くはない彼女の数少ない良いところは持久力と物事を考えないが故の忍耐、いや、不感だった。  #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 19:58:42
|日0☆TK @kyuumaruTK

その選択は少なくとも正解でなくともベターだったのだろう。彼女は神経症気味の上司に怒鳴られ、配達先で客に罵られながらも俯きがちに黙々とこなした。 #ストライクウィッチーズPMC 

2013-06-03 20:00:57
|日0☆TK @kyuumaruTK

両親は心配そうだったが、心持ち喧嘩の回数が減った気もするし、夜中の口論も少なかった。ぱっとしなくとも、彼女は両親の一人娘であり、天使だったのだ。その娘の現状に耐えられなかった両親はお互いに責任を押し付けあっていたのだった。娘のせいにはせずに。  #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:03:07
|日0☆TK @kyuumaruTK

彼女は辞めるわけには行かなかったのだ。 ある日、高価な品物を壊してしまったとしても。  #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:03:56
|日0☆TK @kyuumaruTK

「困るんだよねぇ、アリスンくん。先方はカンカンだよ」 彼───アリシアの上司は細かい貧乏揺りをしつつ口を開いた。 アリシアは自分のナイキの爪先を見詰めながら口を開く。 「すみません・・・」 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:08:16
|日0☆TK @kyuumaruTK

「きみさ、謝って1000ドルが弁償できるなら苦労しないよ、ん?」 いやらしい口調。彼女は苦痛や不快感を感じにくい質ではあったが、それでも彼の言動には時折ひどく心がざわつく。 「・・・すみません」 「だからさぁ、この弁償はどうするのかって話だよ」 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:10:32
|日0☆TK @kyuumaruTK

どう、と言われても、彼女にはどうにも出来ないのも事実だった。 両親は相変わらず貧しいし、自分はというとこんなパートタイムの収入は親の脛に開く穴の開きを遅くするくらいの値打ちしか無い。#ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:13:21
|日0☆TK @kyuumaruTK

そもそもミドルスクールの時に親にもらった実家の子供部屋からここに通っているのだった。 深い倦怠感と諦めが心に這い寄る。 やめるわけには、いかないのに。 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:14:29
|日0☆TK @kyuumaruTK

「まぁ、君も反省しているようだし、僕が先方に対応してもいい」 急に軟化する態度。アリシアはキャップを被ったまま俯いた頭を上げ、上司を見る。 そこにあった粘ついた視線を見て、アリシアはそれが優しさではないことを悟った。 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:16:36
|日0☆TK @kyuumaruTK

ああ、またか。 アリシアはそう感じた、同時に、納得もしていた。彼に感じる嫌悪感の正体に。 今まで気付かなかった己の愚かさにも。 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:19:27
|日0☆TK @kyuumaruTK

アリシアは───アリシア・アリスンは物憂げで美しい顔立ちの少女だった。 本人がそのことを気に掛けないし、また鈍い娘でもあったので野暮ったい格好とそののろさがそれを帳消しにしていたが。 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:21:36
|日0☆TK @kyuumaruTK

ハイスクールでは、プライドの高いハニービー達に狙われないように、ジョクス達に襲われないように灰掛かったブルネットの前髪を伸ばして緑の瞳を隠して、隠れるように過ごしてきた。 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:23:43
|日0☆TK @kyuumaruTK

ばれると、良くないことが起きる。 彼女はそれを、それだけはよく承知していた。 「あの、その、チーフ」 「ん?」 にやりと、舌なめずりするような表情。 「もっと稼ぎのいい部署はありませんか、そのぶん弁償に回したいです」 忌々しそうな顔 「ああ・・?」 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:26:35
|日0☆TK @kyuumaruTK

「ないよ!ない!いいから僕に任せたまえ!」 神経質な甲高い声。耐えて、続ける。 「あの、あの・・どんなきつい仕事でもいいです、その、チーフの責任にはしたくありませんから」 廻りの遅い頭を必至に使い、彼女は自分の身を守る。 両親を悲しませたくない。 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:29:31
|日0☆TK @kyuumaruTK

苛立ち紛れに、彼はこう口にする 「ああ・・そんなにきつい仕事がいいなら、国外を含む長距離輸送業務がある」 考えなんて、なかった 「それで、それでもいいです、あの、わたし、やります、その、あの、やらせてください」 苛立たしげな顔。つらい、逃れたい。 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:32:38
|日0☆TK @kyuumaruTK

アリシアは、選択した。 それが始まりだったのかは、彼女には今でもわからない。 彼女は、賢くはなかったから。 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:33:54
|日0☆TK @kyuumaruTK

任地は、アフガニスタン。 業務は、リベリオンのSOCOM旗下部隊に対する補給業務。 彼女は、届け先の軍籍番号も部隊名も伝えられないまま、 ただ刻印すら無い気密耐衝撃コンテナを運ぶ。 届け先はUTM座標、時間指定配達は、GMT24h表記。 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:37:36
|日0☆TK @kyuumaruTK

紫色の空、這うように進む彼女の眼には、緑のどろりとした視界が広がる。 「グール66、ペリカン42、ギフトの配達です。門扉を開いてください」 『ペリカン42、グール。門は開いてる。降りてくれ』 照射されていた照準波が消える。 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:41:05
|日0☆TK @kyuumaruTK

幸か、不幸か、 彼女には高い魔力適性があった。 彼女はそれをどうとも思わないし、疑問を感じるほど聡くはない。 彼女はすぐさま『特別な』配達部門で『特別な』配送機材を使うこととなった。 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:43:50
|日0☆TK @kyuumaruTK

VTOLのステルス・ストライカーのウェポンベイをカーゴルームに改装し、ナイトストーカーズを呼べるほど公式な仕事でもなく、彼らの損失が嫌なリベリオンSOCOMが外注した仕事。 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:45:38
|日0☆TK @kyuumaruTK

死んでも、交通事故扱いか、はたまた行方不明扱いにでもなるのだろう。 彼女は、でも、仕事を辞めたくはなかったのだ。 両親がどう思うか、今となっては、それすら、どちらが先立ったか。 彼女は、聡くない。 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:47:16
|日0☆TK @kyuumaruTK

彼女は飛ぶ。 配達先で待っている人たちは、間違い無く彼女の客だし、荷が届かないと彼ら、彼女らがどうなるのかなんて、アリシアにもわかることだ。 彼女は飛ぶ。 荷物を届けに。 独りで、くらいそらを。 #ストライクウィッチーズPMC

2013-06-03 20:49:15