紫陽花のコラージュ

小さな愛おしい水玉の世界について(行雲流水さまのお話)
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行雲Nin流水・脱原発に一票* @clouddance2020

モリアオガエルという小さな緑のアマガエルとカタツムリが、ある梅雨の雨の日に、紫陽花の葉の上で鉢合わせしました。カエルはピョンとカタツムリの巻き貝の上に飛び乗ると、水色の大きな花を見に上の方へ連れて行っておくれよと言いました。カタツムリは頷くと濡れた葉の上をゆっくり登り始めました

2013-06-03 14:03:18
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紫陽花の茎を登るカタツムリの背中からズレ落ちない様に、カエルは足の吸盤の神経をグッと集中させて踏ん張って、貝殻にベッタリへばりついておりました。花の真下の額の処迄着くと、カタツムリは、あたしはここ迄、あとは自分で花の中に御行きよ、気をつけるんだよと言いました。

2013-06-03 14:40:57
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カエルはお礼を言おうと、カタツムリの頭の方迄駆け上り、キョロキョロ動くアンテナの先にある小さな目玉に向かって挨拶をしました。それからまた、ピョンと思い切り花に向かってジャンプをすると、柔らかい水色のフワフワのクッションの中に、落ちて行きました。そこは紫陽花の花びらの中でした

2013-06-03 14:47:46
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ここが前から一度来たいと思っていた、天辺に咲いてる紫陽花の天上界なんだな。成る程素晴らしい処だ。柔らかく包まれる様で、とっても幸せな気分になるぞ。ずっと此処に住んでいたいな。滑り台見たいで花ビラに囲まれていると楽しいな。一滴の水滴もカエルにとっては身体の入る程に大きな水の玉でした

2013-06-03 15:12:33
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紫陽花の水色の花びらの上の大きな水滴に、モリアオガエルの顔が映っておりました。僕は母さんが葉の裏に産み付けた白い泡の中から生まれてきたんだ。兄弟達も皆そこから産まれた。でもこの水の透明で綺麗な事と言ったら何だろう。水晶やダイアモンドってもしかしたら、この事なのかな、本当に綺麗だよ

2013-06-03 17:36:50
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澄んだ水滴を覗きこんでカエルは続けました。水は雨になり、池や湖になり、喉を潤してくれるし、その中で泳がせてくれる。水こそは、僕の神様だよ。僕は水さえあれば何も要らないよ。世界で一番美しいのは水なんだ。水さえあれば幸せなんだ。父さん母さんも皆水から生まれて水に帰ったんたよ。

2013-06-03 19:50:52
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茶色いビロードの様な翅をしたイチモンジセセリ蝶は優しい顔でカエルに言いました。あらまあ、アマガエルがこんなに天辺迄やって来るとは珍しいね。お家に帰れなくなったんじぁないのかい、坊や。蜜を飲んだら、御前を池のお家に連れて帰って上げようね。さあ背中に御乗り。カエルは空を飛びました

2013-06-03 19:59:43
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茶色い滑らかな絨毯を敷き詰めた様な蝶の背中に落ちない様にしっかり掴まると、顔には風が当たりました。目を大きく開けて見ると、蝶は紫陽花よりもずっと高い、池の上空を飛んでおりました。カエルの坊や、これが御空というものだよ。しっかり見ておきなさいよ。さあ着いた、そこはお家の池の畔でした

2013-06-03 20:07:13
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優しい蝶のおばさんは、カエルをお家に見送ると、池の水で喉を潤して、また何処か遠くに飛んで行って消えました。ずっと小さくなる迄、蝶の後ろ姿に手を振っていたカエルは、今日は本当に不思議な日だったよと、家族に自慢げに土産話をしたのでした。そしてまた今度あの紫陽花に登ろうと思いました

2013-06-03 20:14:41