【twitter小説】火焔気球の街#2
ギルド員たちは男たちに向かって一斉に火炎放射器を構える。銃口にはすでに火種が燃え盛っていた。 「火焔気球を我らが手に!」 無謀にも男たちはギルド員たちに向かって突撃する! 26
2013-06-03 18:19:57「放て!」 ギルドリーダーが右手を振り下ろすと同時に一斉に火炎が放射された。大部分の男たちはその炎に焼かれて死んでいく! だが、一瞬先にジャンプで避けた者が数名いた。手には魔法で怪しく光る短刀! 「装剣!」 27
2013-06-03 18:23:03ギルドリーダーの合図でギルド員たちは火炎放射器に短剣を装備し槍にしようとする。捨てることはできない。なぜならば、火炎放射器はパイプで背嚢と繋がっているからだ。だが遅い! とびかかった男たちは短刀をギルド員に振り下ろす……その時である。 28
2013-06-03 18:25:42カシャリと機械音が間抜けに響いた。これは……カメラのシャッター音である。この戦場で写真を撮るのは、レッドだ。一同は硬直してしまっている。まるでカメラのフラッシュに射止められたように。 「あ、気にせず。続けて続けて」 29
2013-06-03 18:29:42呆気に取られて動きを止めた男に火炎放射器の槍が次々と突き刺さる! あっという間に男たちは一人残らず殺されるか縄で拘束されてしまった。ギルドリーダーはレッドにどしどしと歩み寄る。 「お前は……何者だ」 30
2013-06-03 18:32:40「え……観光客ですが……」 「麻痺ガス吸っても戦場でぴんぴんしている観光客がいるか!」 「はぁ……観光客にもピンからキリまでいるので……」 「もういい、さっさと去れ! ここは我等ギルドが封鎖する!」 辺りは赤と青のテープで手際よく封鎖されていった。 31
2013-06-03 18:46:06救急車も到着し、麻痺ガスで動けない重症患者を運んでいく。火の巫女はようやく動けるようになったようだ。ギルドリーダーが話しかける。 「帝都から通達があったのだ。火焔気球を破壊せよと。わたしはギルドリーダーのゴラス」 「えっ、破壊するって……」 32
2013-06-03 18:49:23「この街は更地になるのだ。火の巫女はこの街を取り仕切っているというな。残念ながら帝都の命令は絶対だ。我々に協力してもらう」 「そ、それは大変です!」 火の巫女は突然あわて始めた。 33
2013-06-03 18:52:49「巫女さん、残念ながら決まったことなのだよ。なぁに、街の表層で燃えている火の燃料であるガスを止めて、天蓋の魔法の布を下ろすだけでいい」 「急に言われても……時間をください!」 どうやら気球の破壊自体は飲み込めてくれたようだ。 34
2013-06-03 18:57:21フィルとレッドはテープの向こう側で一部始終を眺めていた。巫女とギルドリーダーは色々話し合っているようだ。 「巫女さん、何か知ってるのかな」 「火焔気球……いったい何なんだろうね」 35
2013-06-03 18:59:55巫女は護衛を引き連れて急いでその場を発ってしまった。ギルドリーダーは現場検証を進める。襲撃してきた男たち……彼らが何者かはある程度目星がついていた。気球教団だ。気球教団はこの街に古くから存在する秘密結社だ。一般の街のひとは知らない組織だ。 36
2013-06-03 19:02:58気球教団はこの街の火焔気球を完成させて月まで飛び立つというという思想の元集まっている。月は神々の住む神秘の大地だ。そこは楽園とされ不老不死が叶えられるとかなんとか。しかし火焔気球の存在は長い間夢物語とされた。気球教団はなにか完成への糸口を掴んだのだろうか? 37
2013-06-03 19:05:48しかし火焔気球は帝国によって破壊指定になった。そのためこの街にグランガダル・ギルドが派遣されたのだ。指令はごく簡単なものだった。街の火を燃やすガスの供給を止めること。そしてガス供給施設を破壊することだ。しかし火の巫女にいくら聞いてもその場所は教えてはくれなかった。 38
2013-06-03 19:08:51ギルドリーダーは巨大な赤皮獣の死体を撤去するよう指示した。致死毒の弾丸が撃ち込まれたらしい。街の住人は不安そうにこちらを見ている。火の巫女は破壊自体には了承している。だが、何かと準備がいるとのことで後回しにさせられているのだ。住人の一人が声をかけてきた。 39
2013-06-03 19:12:32「あのう……破壊指定って、この街はどうなるんです?」 「火が消えるだけだ。問題ない。補償やらは帝国の指示を受けろ」 気球教団員の死体は紺のバッグに入れられ、すでに撤去されていた。火の巫女は何を考えている……? しばらくは警備を厳重にせねば。 40
2013-06-03 19:15:29ギルドリーダーは街の中心にある小高い丘を見つめた。その丘は全て火の巫女の一族の所有物だ。丘は人の住むことのない工場で覆われ、中心に宮殿があった。火の巫女は何かを隠しているのだろうか? 工場からはいくつもパイプが伸び、火を吹きあげていた。 41
2013-06-03 19:17:59火の巫女は焦っていた。中枢の解体はまだ全然手が付いていない。それも何千年と後回しにされてきた作業だ。出来ればしたくなかった。だが、やらねばならない。血の責務にかけて。薄暗い書斎で書類を探す。 43
2013-06-03 19:24:08マッチを擦りランプに火をつける。設計書を机に広げ、該当箇所を探す。 「これは大変な作業だ……」 そのとき、不意にドアが開いた。火の巫女はぎょっとして扉を見る。まさか、気球教団がこんなところに……! 45
2013-06-03 19:28:57「こんばんは、火の巫女さん。名前はルシリミアでしたっけ」 酷く場違いな気の抜けた声がした。ルシリミアは恐る恐るランプで入口を照らす。 「あなたは、さっきの!」 そこにいたのは……フィルとレッドの二人だったのだ。二人ともスーツ姿にカメラという姿だ。 46
2013-06-03 19:30:29「何でここに……ここは立ち入り禁止ですよ」 「ええと、僕らこの屋敷を観光に来て……僕はフィル。あっちの小さいのがレッド」 「標準身長だっ、お前が高いだけだ」 ルシリミアは奇妙に思った。この屋敷は夕方の事件を受け警備を厳戒態勢のさらに3倍にしているのだ。 47
2013-06-03 19:49:21グランガダル・ギルドの保護もある。とにかく、一般人がほいほい侵入できる場所ではない……ルシリミアは急に怖くなった。 「何が目的なんです……? 火焔気球は貴方達の手に余るものです」 「僕たちは火焔気球の秘密を知りたいだけさ」 レッドはそう言って突然写真を撮る。 48
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