メイキング・アゴニィ・フェイタル・ガール  前編

忍殺二次創作とは違う、いつものノリで書いたSS 後編:https://togetter.com/li/516597
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劉度 @arther456

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2013-06-09 20:00:45
劉度 @arther456

メイキング・アゴニィ・フェイタル・ガール #1

2013-06-09 20:02:22
劉度 @arther456

(このSSは忍殺二次創作ではありません。と言いたいのですが、思いっきり忍殺要素が入っています。ぶっちゃけどう扱ったらいいかわかりません。とりあえず人体が両断されて血がドバーッって出るぐらいにはグロテスクなので、ダメなかたはミュートなり何なりして下さい)

2013-06-09 20:03:58
劉度 @arther456

(あと、感想タグを思い切って作ってみました。#ryudo_ss です。何の捻りもありません。こっちに感想を書いてくれると私が読みなおして毛布を抱えつつゴロゴロ悶えます)

2013-06-09 20:05:07
劉度 @arther456

灰色の空、工場のスモッグとネオンの光に覆われた街。華やかな大通りから一歩路地裏に入れば、そこは素行不良の者たちが手ぐすね引いてカモを待っている。そうした連中から幾らかの上前を受け取る代わりに、テリトリーの中で好きにさせる黒いスーツの集団、ヤクザと呼ばれる者たちがいる。1

2013-06-09 20:05:48
劉度 @arther456

拳銃や長ドス、果てはマシンガンやロケットランチャーまで持ち出す暴力集団だ。一般市民の、カタギの人間が立ち向かえる集団ではない。だが、それはあくまでも『一般的な』人間同士での話である。2

2013-06-09 20:09:29
劉度 @arther456

「て、てめえ……っ!」この街を仕切るヤクザの事務所は今、凄惨な死体置き場へと変わっていた。この日詰めていた10人のうち9人は既に斬り殺され、残る一人も拳銃を構えたまま動けない。3

2013-06-09 20:12:41
劉度 @arther456

この惨状を生み出したのは、部屋の中央で刀を構える、目付きの鋭い、オールバックの男だ。銃を突き付けられても、表情は一ミリも変わらない。「ザッケンナコラー!」最後のヤクザが引き金を引く。火薬の音とともに、鉛の弾が男の顔にまっすぐ飛んでいく。4

2013-06-09 20:15:40
劉度 @arther456

そして男に避けられた。常人ではあり得ない速度で銃撃を掻い潜った男は、そのまま一息にヤクザの懐に飛び込み、「イヤーッ!」気合一閃、下段に構えていた刀を振り上げてヤクザの腰から肩へ斜めに斬り捨てた。分離した上半身と下半身が血飛沫を上げながらゆっくりと倒れる。5

2013-06-09 20:20:21
劉度 @arther456

ヤクザ10人を斬り殺して息一つ乱さない男は、その鋭い目を部屋の奥の椅子に座る"11人目"に向けた。先の10人のように武器は持っていないし、若くもない。だがその風格だけで、彼がこのヤクザたちの親分だということは分かる。そして彼と同じ、異常人の類であるということも。6

2013-06-09 20:24:25
劉度 @arther456

「魔法使いがやってきたと聞いていたが……なるほど、身体強化の魔法の使い手とはな。これは珍しい」「お前が田神か。魔術協会からの依頼だ、ここで死んでもらうぞ」「私の相手にサムライ気取りの若造一人か。これだから協会の連中は。戦力の計算が……」7

2013-06-09 20:29:03
劉度 @arther456

田神が喋り終わる前に日本刀の男は飛び出した。机ごと斬り捨てる勢いで刀を振りかぶる。だが、振り下ろす直前に何かを察知し、横に飛んだ。直前まで男がいた空間を銃弾が突き抜け、机に突き刺さる。8

2013-06-09 20:32:10
劉度 @arther456

「まるでなっていない。一人が10人に勝てるわけがないだろう」振り返った男は見た。たった今自分が斬ったヤクザたちの死体が、よろよろと武器を構えて起き上がるのを。その顔にも動きにも生気はない。死体が動いている、という表現がぴったりの様子だった。9

2013-06-09 20:35:57
劉度 @arther456

「屍霊術かっ」飛び込んできたヤクザゾンビのドスを避けて、男が呟く。死体を動かす禁忌の魔法、屍霊術。田神の得意な魔法は呪術だと聞いていたが、こんな魔法まで使ってくるとは聞いていない。魔法使いの犯罪者を仕留めるように依頼しておいて、魔術協会は何を調べていたのだろうか。10

2013-06-09 20:41:46
劉度 @arther456

ゾンビの群れの向こう側にいる田神を倒さないと、埒があかない。立ち塞がるゾンビを男は斬り捨てる。斬られたゾンビが倒れ、また立ち上がる前に、男は一歩前に進む。更に別のゾンビが長ドスで切りかかってくる。それを受け止め、返す刀で喉元を抉る。一歩踏み出し、飛んできた銃弾を避ける。11

2013-06-09 20:44:35
劉度 @arther456

「諦めろ。貴様が何度剣を振ろうと、こいつらは止まらんよ」だが男は聞く耳を持たない。銃を持ったヤクザの懐に飛び込み、銃を持った腕を切り飛ばす。更に体当たりで突き飛ばして、次のゾンビの下に駆け寄る。「聞いているのか? 刀で切ってもゾンビは止まらないと……」12

2013-06-09 20:47:30
劉度 @arther456

勝ち誇っていた田神が不意に言い淀んだ。ゾンビの群れに囲まれて、銃弾を避け続けるのに手一杯なはずの男が、徐々に自分の側に近づいている。ゾンビに太刀を浴びせ、踏み込み、避けながらも前に進み、一切呼吸を乱さずに、田神の首を狙って進んでいる。13

2013-06-09 20:50:07
劉度 @arther456

男の剣術は道場での一対一の戦いで純化されたものではない。敵味方入り乱れた戦場で、確実に大将の首を獲りに行くための、荒々しい、勝利のための戦闘法。まさにこのような多勢に無勢を想定された剣術だ。14

2013-06-09 20:53:08
劉度 @arther456

田神のズボンに赤い血が飛んだ。男が振るう刀から飛んだ血だ。男はそれだけ近づいている。間にいるのはヤクザゾンビが2体。だが魔法で身体能力を強化した男が、その間を掻い潜って来ない保証はない。追い詰められた田神は、切り札を切ることをためらわなかった。15

2013-06-09 20:57:19
劉度 @arther456

「出てこいっ! 仕事だ!」部屋にあった、閉じられたドアに向かって田神が呼びかける。その途端、ドアを突き破って光る何かが男に向かって飛来した。最後の一歩を踏み出そうとした男は、後ろに跳んでそれを避けた。16

2013-06-09 21:00:29
劉度 @arther456

男の鼻先をかすめ、壁に突き刺さったのは大きな針だった。裁縫や刺繍に使うよりもずっと太い、タタミ針と呼ばれるものだ。その針先からは血が滴り落ちている。次にタタミ針が飛んできたドアの方を見る。閉じられていたドアは開かれ、その向こう人影が立っていた。17

2013-06-09 21:03:42
劉度 @arther456

奇妙な、余りにも異常な風体の少女だった。着ているのは、体のラインが見えるほどぴっちりとした黒いラバースーツと、顔を半ば覆う包帯のような黒い眼帯だけ。その上から無数のタタミ針が彼女の全身に突き刺さっている。なのに彼女の顔は、苦痛に歪むどころが恍惚とした笑みを浮かべていた。18

2013-06-09 21:06:33
劉度 @arther456

「アハー……ドーモ、アガ、吾野仁夏、です。そちらのタガミ、サンの護衛をしておりマス」古い音声データのような、途切れ途切れの声で少女が名乗る。「邪魔する気か」 男が刀を構えなおす。触れれば切れる刃先を見つめる少女は、少し怒った様子で答えた。19

2013-06-09 21:11:20
劉度 @arther456

「ワタシがアイサツして、るんですから、アナタもアイサツして、下さい」「はぁ? 何言って……」「いい、から! 失礼、デスよ?」 仁夏の顔から恍惚が消え、どろりとした目で刀の男を睨みつける。それに気圧された男は思わず自分の名前を口にしていた。「……紅谷光彦だ」20

2013-06-09 21:13:36