マティアス・グリューネヴァルト『イーゼンハイム祭壇画』があなたの健康をお祈りします。

16世紀の北方の画家マティアス・グリューネヴァルトの傑作『イーゼンハイムの祭壇画』が施療院という場所でいかに機能したかについて。 参考資料: Andree Hayum "The Meaning and Function of the Isenheim Altarpiece: The Hospital Context Revisited" (1977)
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壺屋めり @cari_meli

とりあえず誰にも需要はないようなのだがマティアス・グリューネヴァルト『イーゼンハイム祭壇画』について読んだことを眠くなるまでつらつらとまとめることにいたす。

2010-09-18 13:04:37
壺屋めり @cari_meli

まず一番よく知られているのがこの図かな。中央にキリスト磔刑、それを指差す洗礼者ヨハネ、失神する聖母と抱きかかえる使徒ヨハネ、嘆くマグダラ。左翼にセバスティアヌス、右翼にアントニウス、下段にピエタ。これ実は祭壇画が閉じてるところ。 http://twitpic.com/2phkcy

2010-09-18 13:10:40
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壺屋めり @cari_meli

磔刑図が真ん中でパカッと開くとこうなる。左翼に受胎告知、中央に音楽を奏でる天使と聖母子、右翼に復活のキリスト。これが半開きの状態。まだ開く。 http://twitpic.com/2phmrn

2010-09-18 13:14:01
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壺屋めり @cari_meli

これが全開の状態。左翼にアントニウスとパウロの面会、中央は左からアウグスティヌス、アントニウス、ヒエロニムス。右翼にアントニウスの誘惑。下段にキリストと十二使徒。アントニウスだらけである。 http://twitpic.com/2php0h

2010-09-18 13:19:28
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壺屋めり @cari_meli

こんな豪華な構成だっただなんて初めて知った。っていうかパカパカ開閉するかたちの祭壇画だとは知ってたけど、まさか二重トラップになっていたとは…マティアスたんあなどれません><

2010-09-18 13:21:39
壺屋めり @cari_meli

祭壇画はイーゼンハイム(地名だよ)のアントニウス会修道院付属施療院に設置されるべくつくられたもの。祭壇画中に何度もアントニウスが出てくるのも納得である。しかしだねアントニウスが強調される理由はそれだけではないのだよ! ヒント: アントニウスは治療や養生の守護聖人

2010-09-18 13:28:51
ちょwwwぴwwんwww @yaiyan54

@davidsbundler それってヒンデミットの画家マティスの元ネタでしたっけ?

2010-09-18 13:26:13
ちょwwwぴwwんwww @yaiyan54

@davidsbundler 昔演奏するときに調べたときはそんな構造になってたなんて全然分かってませんでした。理解してちょっと感動してますw

2010-09-18 13:33:28
壺屋めり @cari_meli

@yaiyan54 それは良かったです。ちょっとこの絵のシンボリズムとかちまちま書いていくつもりなので、さらなる理解に繋がると面白いかと。

2010-09-18 13:40:34
壺屋めり @cari_meli

治療を司るアントニウスの修道院なのだから施療院の活動にも気合が入るね。ところで何の病気を治していたのかしら。そのカギは、この悪魔が握っている!→ http://twitpic.com/2phutq ※微グロ注意

2010-09-18 13:33:45
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壺屋めり @cari_meli

コイツは全開したときの左翼「アントニウスの誘惑」の左端にいる悪魔。悪魔とはいえ他のバケモンに比べてなかなか人間っぽい姿をしているし、この痛々しい皮膚もなにか特定の病気を表しているようである。19世紀にはハンセン病?とか梅毒?とかいろいろ想定されてきたが、どうも違うっぽい。

2010-09-18 13:39:45
壺屋めり @cari_meli

うー、ちゃんと画像全部準備してから始めるんだった。マイペースにいくぞ。

2010-09-18 13:41:59
壺屋めり @cari_meli

同じパネルの右手には小さな紙切れ。解像度の関係で読みにくいが、「イエス様はどこにいたの? どこにいたの? どうして僕の傷を癒すためにここにいてくれなかったの?」(意訳)とラテン語で書いてある。これは悲惨。 http://twitpic.com/2pi1rn

2010-09-18 13:52:46
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壺屋めり @cari_meli

こんなものを見たら病人はこのちょっと人間的な苦しみの悪魔に同情せずにはいられないのである。自身をも重ねるかもしれない。15世紀である。病にかかったが最後治らない人も多い。病人を治すことはもちろん、死にゆく人のケアも施療院の重要な役目であった。

2010-09-18 13:57:06
壺屋めり @cari_meli

16世紀だった。ごめん。

2010-09-18 13:58:11
壺屋めり @cari_meli

だが待てよく見ろそう囁いてるのは 悪 魔 だぞ!

2010-09-18 13:58:38
壺屋めり @cari_meli

いけないんです神を疑っては。病気は個人の健康管理が悪いからなるんじゃないんです神の罰です。自業自得なのにそのうえ神を頼るとはなにごとじゃ…というわけでこれは悪い例を示しているのですね…。話がちと逸れた。さてこの病気だが。

2010-09-18 14:01:08
壺屋めり @cari_meli

ハンセン病とか梅毒とか言ってた19世紀の人はしっかり史料見てないのかしら見つかってなかったのかしら。ちゃんと記録が残っているのです。アントニウス会の最も重要な目標は「聖アントニウスの火」と呼ばれる病気にかかったものの治療であると。

2010-09-18 14:04:12
壺屋めり @cari_meli

この「聖アントニウスの火」、ネタバレしちゃうと麦角中毒らしい。 http://bit.ly/c8xL1U パンに使われるライ麦とかが汚染していたりするとかかっちゃう、食中毒のようなものですね。でも原因が分かったの1597年だもーん天罰にも思えるよね。コレ相当痛いらしい。

2010-09-18 14:06:50
壺屋めり @cari_meli

逆に、この痛みは神が授けたもうた試練とも考えることが出来る。他人より多く苦しんでも信仰を持ち続ければ、死後の救済はもう手に入ったも同然! こう書くとなんか打算的だがそういう考え方。

2010-09-18 14:11:13
壺屋めり @cari_meli

だいたい半開きの状態で描かれるキリスト物語(受胎告知→生誕→復活)もそういうものたちに対する救済を暗示しているともいえる。キリストは原罪を負っているものたちのために死に、その罪をキャンセルしてあげたということから、「罪をなくす」=「神の罰もなくす」=「治療」みたいな。

2010-09-18 14:16:19
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