「社会的なもの」と「新しい労働社会」 by 市野川 容孝×濱口 桂一郎
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21)市野川:日本的雇用といったら、メンバーシップ型で、具体的には1)終身雇用、2)年功序列、3)企業別、ということだが、揺らぎ始めたのは95年ぐらい?
2013-06-13 21:55:1222)濱口:企業側の動きとして、1995年に日経連が「新時代の『日本的経営』―挑戦すべき方向とその具体策」を出して労働者を長期蓄積能力型、高度専門能力活用型、雇用柔軟型の3グループに分けるべきと提言。天下三分の計、これが一つのきっかけだった。
2013-06-13 21:55:3223)濱口:社会的意識の分水嶺としては、バブルの最中ぐらいから、会社の中に閉じ込められるのはウザい、という意識の変化が出て来ていた。こういう反発はいわばリベラル。あの頃、細川から村山の流れの中で、構造改革とか規制改革とか叫ばれて、リベラルな感覚に満ち溢れていた。
2013-06-13 21:56:0524)市野川:石水喜夫さんが『日本型雇用の真実』という本で書いているが、1995年は村山首相で、政治のドクトリンとしてリベラルがあった。この頃急速に社会的なものは脱臼した。石水さんは"やっぱ会社でしょ"という。職業は個人のものではなく会社のもの。
2013-06-13 21:58:0325)市野川:濱口さんはジョブ契約を盛り込んでいけと。ソーシャルなものの現れ方とは対極的。仕事はいろんなつながりの中にある。個人のものにしてしまうのがリベラル。会社のものにしてしまうのがソーシャル。それで70年代みたくみんなが満足していたら良かった。
2013-06-13 21:58:2126)市野川:でも90年代には、もうみんなそういうソーシャルでは満足できなくなった。今は企業組合からはみ出る人をuniteするのが難しい。労組は避けて通れない。これまで包摂されなかった人たちを新しい産業民主主義で、労働組合のあり方を組み替えていく必要性がある。
2013-06-13 21:58:5227)熊沢誠さんは、今必要なのはリベラルではなく、社会民主主義だと言う。(会場から質問)画一主義、官僚主義への反発が「リベラルな欲望」として表れた。そこでは「リベラル」という言葉の変容がある。経済的でない部分でのリベラルな欲望を満たせるのか。
2013-06-13 21:59:16(一部修正したので差し替えます)
28)市野川:アメリカではソーシャルは民主党で、福祉に力を入れている。
(aliceメモより発言者不明)社会民主主義は文化的には多様、社会的には平等
29)市野川:(質問者に)リベラルが文化的でソーシャルは経済的だという意見?(質問者)そうです。市野川:社会的なものと文化的なものをつなぐ回路、どうなのかなぁ。
2013-06-13 21:59:4430)市野川:北欧の研究しているオザワさんという方の話で、スウェーデンはソーシャルな国だけど多文化主義にどれだけ開かれているのか、という。福祉国家と多文化主義は本来相性が悪い。貧困の人たちが「なぜ自分がこうなのに外国人が」となって排外主義になりがち。ソーシャルの理念の限界。
2013-06-13 21:59:5031)濱口:社会保険や医療保険や年金は本来社会的なもので、国全体でわかちあっている。皆でわかちあい分け与えるものだから、仲間意識があるのなら本来それをもらう人を叩くのはおかしい。
2013-06-13 21:59:5832)市野川:私たちの身近にある社会的なもの。1920年代から80年代までは、被用者本人はタダだった。80年代からだんだん増えて今は3割負担。身近にあるはずのソーシャルが見えなくなり、アフラックとかアデコの方が「保険」といったら通りがいい。
2013-06-13 22:00:0833)市野川:ソーシャルであるはずなのにソーシャルに見えなくなり、そうでないものがソーシャルとして台頭している。見えないものをもっと見えるようにするのが今後の課題。
2013-06-13 22:00:1534)濱口:ソーシャルなものはナショナルなものと手に手を取って、抜本的に拡充されたのは世界大戦のとき。戦争のために、ラチェット的に。社会的なものはシオニズム(?)を招きよせるものが埋め込まれている。だからリベラルがないとバランスが崩れる。
2013-06-13 22:00:24(濱口さん)すいません、発音が悪くて。ショービニズム(排外主義、国粋主義)といったつもりでした。
35)市野川:言葉として「リベラル」しかないことが問題。両方の理念が支え合っていかないと。東独の統一前の憲法で「私たちの国はソーシャルな国」と。リベラルとセットになって初めてそうなった。リベラルがなければソーシャルも立ち上がれない。
2013-06-13 22:00:3236)濱口:グローバル化の中で、企業が組合と延々話し合ってたらダメだ(効率が悪い)という風潮になった。日本で労組の組織率が最も高かったのは、1946年で、GHQの圧力でそうなった。その時でも60%。それ以来減り続けている。
2013-06-13 22:00:4437)濱口:マクロの話だけではそれを支える底辺の仕組みをどう作るのかが見えてこない。唯一成功したのがGHQだということをもっと考える必要がある。
2013-06-13 22:00:50