2013年6月17日

高橋源一郎さんの河出文庫『「悪」と戦う』刊行記念・「メイキングオブ「悪」と戦う」

高橋源一郎さんの河出文庫『「悪」と戦う』刊行記念・「メイキングオブ「悪」と戦う」。
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河出書房新社 文藝夏季号🐱特集「もふもふもふもふ」発売中🐶🐏🐰🐼🦁 @Kawade_bungei

【告知】高橋源一郎さん『「悪」と戦う』文庫化を記念して、単行本時に話題となった<メイキング・オブ「悪」と戦う>を再ツイートいたします(高橋さんよりご快諾いただきました!)。近日中に数回、本アカウントより行なう予定です。お楽しみに!

2013-05-31 21:44:08
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来週6月6日発売の河出文庫『「悪」と戦う』(高橋源一郎)を記念して、単行本刊行時に連夜ツイートされた<メイキングオブ「悪」と戦う>をリツイートします。「すべて即興。準備なし、メモなし、すべて記憶が頼りです。途中で立ち往生したらその日はそれでお終い。」という前提での連続ツイート。

2013-06-02 23:48:18
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本日は、<メイキングオブ「悪」と戦う>記念すべき第一夜をリツイートします。いまから3年前。2010年5月1日。高橋源一郎さんがツイッターを初めて4月目の「挑戦」でした。「文学」と「世界」が繋がる試み。是非、お楽しみ下さい。

2013-06-02 23:51:39
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メイキングオブ『「悪」と戦う』① この間、ゼミで村上春樹さんの『1Q84 』BOOKⅢを読んで、みんなの感想を訊いた。みんなはそれぞれ、テーマやメッセージや隠された謎やその解釈についていろいろしゃべってくれた。なかなかのものだった。その時、T君が、突然こんなことを言い出したのだ。

2013-06-02 23:52:21
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メイキング② 「テーマもメッセージもなにもないと思うんです。空っぽなんだと思うんです」。「じゃあ」とぼくは言った。「そこにはなにがあるの?」。すると、T君は、「村上さんは、小説を書いているんだと思う。というか、小説を書きたいんだと思う。ただそれだけ。他にはなんにもなし」

2013-06-02 23:52:34
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メイキング③ 「いちばん大切なのは、小説を書くこと、他はどうでもいい!」。T君の発言は、みんなを困らせた。なにがなんだかわからない。でも、ぼくはものすごくおもしろいと思ったんだ。村上さんのその本が、そうであるかは置いておくとして、T君は、ふつうの人が思いつかないことに気づいた。

2013-06-02 23:52:49
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メイキング④ ふつう、小説で大切なことというと、作者が言いたいことや、物語や、テーマや、文体やら、ということになる。でも、T君によれば、小説は、なにも積んでいなくても、ただそれだけで価値がある、積載物ではなく、それを積んでいる本体(車体?)の方に意味がある、のだ。

2013-06-02 23:53:06
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メイキング⑤ なんだか抽象的な話になっちゃいそうだなあ。いかんいかん。具体的な話をしてみよう。「小説しかない」という小説の、最近のもっともいい例は東浩紀さんと桜坂洋さんの『キャラクターズ』だと思う(もちろん、「小説しかない」わけじゃなく、それ以外のものもたくさん詰まっているが)。

2013-06-02 23:53:23
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メイキング⑥ ぼくは『キャラクターズ』の評価が低いことに、というか、際物扱いされることにほんとにガックリしていた。東さんの『クォンタム・ファミリーズ』は「文学作品としては」『キャラクターズ』よりずっと上かもしれないが、「小説の強度」としては、『キャラクターズ』の方が上だ。

2013-06-02 23:53:39
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メイキング⑦ 『キャラクターズ』をの読者は(というか、批評する側は)、例外なく困惑する。作者がふたりいること、にだ。ぼくたちは、作者というものは一人であり、その一人しかいない作者のメッセージを解読することが「読む」ことだと「思わせられている」。

2013-06-02 23:54:09
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メイキング⑧ もしふたりの作者が、作品内で勝手に、それぞれの道を行ってしまったら、読者はどう解読していいのか、自信をもって言うことができなくなってしまうだろう。でも、それでいいのだ。わからなくっても。というか、わからなくするために、作者は、小説という手段を用いているのだ。

2013-06-02 23:54:24
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メイキング⑨ 小説というものは、ほんとうは「『私』は、『私』以外の他人、『私』以外の『私』を実は理解できない」ということを証明するために書かれているからだ(とぼくは思っている)。だから、誰が書こうとほんとうは小説なんか意味がわからないのだ(他人の考えていることがわかりますか?)。

2013-06-02 23:54:40
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メイキング⑩ なのに、ふだんぼくたちは、わかったような気がしてしまう。他人が考えていることがわかるような気がしてしまう(そんな気にさせてしまう点こそ、多くの小説の重大な「罪」)。そんなぼくたちの目の前に、ふたりの作者が書いた一つの作品が現れる。ただそれだけでぼくたちは不安になる。

2013-06-02 23:54:56
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メイキング⑪ ふたりの異なった意見を持つ他人が目の前にいる。面白いのは、そのふたりがお互いに理解し合ってはいないように見えることだ。だから、ぼくたちは不安になる。彼らの間にコミュニケーションがないように、ぼくと彼らの間にも理解し合えるものはなにもないのではないか。

2013-06-02 23:55:18
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メイキング⑫ 以前、ある雑誌で阿部和重さんと中原昌也さんが「共作」するという話が出た。実現はしなかったけれど(たぶん)、その話を聞いた時、ぼくは「さすが」と思った(「馬鹿なことやってる」という反応が大半だった)。小説がほんとうはなに(でありうる)のか彼らにはわかっていたのである。

2013-06-02 23:55:32
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メイキング⑬ 小説はひとつの「公共空間」だ。公共空間とは「複数の、異なった、取り替え不可能な『個』がいる空間」だ。なぜ、そんなものを書こうとするのか、それはぼくたちが日々「公共空間」を生きているからだ。もしくは、いま生きている世界に「公共性」を取り戻したいと考えているからなのだ。

2013-06-02 23:55:58
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深夜の連投、失礼いたしました。明日は、第2夜をリツイートいたします。<『「悪」と戦う』を執筆していた時に起こった「事件」、そして、45年前に大江健三郎さんの小説に起こった「事件」、その二つについてツイート>となります。果たして、小説とは「著者」のものであるのか。お楽しみに。

2013-06-03 00:01:36
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早い所では明日より河出文庫が並び始めます。本日は『「悪」と戦う』(高橋源一郎)刊行記念<メイキングオブ「悪」と戦う>第2回目をリツイートします。当時、高橋さんが「最上の路上演奏家のように」と仰っていた「すべて即興。準備なし、メモなし、記憶だけが頼り」のこの試み。お楽しみ下さい。

2013-06-04 19:29:15
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メイキングオブ『「悪」と戦う』2の① 去年の正月、当時2歳と9カ月の次男(しんちゃん)が急病になり、救急車で病院に運ばれた。ただの発熱と嘔吐から、病状が一変したのは1月1日の早朝のことだった。水を飲ましても口からこぼし、話しかけても返答はない。時々獣みたに吠えるだけ。

2013-06-04 19:29:45
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メイキング2の② 病院に着いたしんちゃんはすぐに腰椎穿刺を受け、MRIとCTの検査を受けた。ぼくと妻を控室に呼んだ医師ははっきりとこう言った。「急性脳炎だと思います。助かるかどうかわかりませんし、仮に助かったたとしても、重篤な後遺症が残る可能性が高いと考えてください」。

2013-06-04 19:29:59
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メイキング2の③ ぼくは集中治療室のベッドにほぼ全裸でくくりつけられているしんちゃんを見た。体はほとんど動かないのに、その動かぬ体で、体から延びたチューブを外してしまわぬように、くくりつけられていたのだ。ぼくはすぐには事態を受け止めることができなかった。死ぬ? 麻痺? 植物状態?

2013-06-04 19:30:11
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メイキング2の④ 集中治療室を出たのは、救急車で運ばれてから1週間以上たった時だった。生命の危機は脱したが、体はほとんど動かず、首も座らなかった。目は開いているのだが、見えているかどうかもわからなかった。声をかけても反応はなく、なにもしゃべらなかった。言葉を失ってしまったのだ。

2013-06-04 19:30:23
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メイキング2の⑤ 医者は「小脳性無言症だ」と言った。小脳に強いダメージを受けたしんちゃんは発語機能を冒されてしまったのだ。ぼくはおそれおののいた。なぜなら、当時連載していた『「悪」と戦う』の中で、しんちゃんをモデルにした登場人物の「キイちゃん」はしんちゃんと同じ症状になるからだ。

2013-06-04 19:30:34
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メイキング2の⑥ 「キイちゃん」は、「悪」と戦い、その代償として「言葉」を失う。でも、それは、小説の中の「お話」のはずだった。日頃、冷静な妻がぼくにこう言った。「あなたがあんな小説を書いてるからよ。いますぐハッピーエンドにして、小説を終わらせて」。ぼくは答えることができなかった。

2013-06-04 19:30:51
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メイキング2の⑦ そんな馬鹿なと思われるだろうか。そんなものは偶然の一致だし、小説をどのように変えても、現実のしんちゃんの容体が変わるわけじゃない。もちろん、ぼくもそう思った。だが、そんな縁起の悪い話を書いているのなら、妻が言うように、ハッピーエンドにしてもいいじゃないか。

2013-06-04 19:31:02
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