嘲笑う（わらう）女

小泉怪奇＠怪談を蒐めるヒト @kaikinotane

OLの薫さんは最近、変な女に遭うのだそうだ。 その女は、黒髪のロングヘアで、赤いワンピースに赤い帽子という目立つ格好で、何故か何時も帰宅途中の道に立って居る。 そして、此方を見てはニタニタと笑って、姿が見えなくなるまで視線を向けて来るので、大変気持ち悪い。

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毎日のようにその女と遭遇するので、気味悪がっていた薫さんは、幾度と無く帰宅するルートを変えてみたものの、必ずその女と遭遇してしまうのだ。 その度に、顔を俯け距離をあけて横切っていった。女は特に何かをしてくるでもなく、ただニタニタ笑い、薫さんを見てくるだけなのだそうだ。 　

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当初は、刃物か何かで襲われるかもしれないと、思って怖かっていたのだが、先に言った様に笑ってるだけで、何もして来ないので、怖いという感情よりも、気持ちが悪いという感情が勝り、とにかく見て見ぬふりをし、無視して通り過ぎれば良い、と思う様になっていた。

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しかし、ふた月後に遭遇した時、物凄い怒りの形相して此方に向かって来た。 そして、 「なあ、見えてるんだろ。なあ、見えてるんだろ。」 と、言いながら薫さんの隣にピッタリと張り付きながらついてきたのだ。

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あまりの恐怖に薫さんは、黙ったまま俯いて早歩きで、その場から逃げようとしたが、女は尚もついて来る。 しばらくついてきていたのだが、諦めたのか立ち止まって静かになった。

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その事に、薫さんがホッした瞬間、 「チッ、見えて無いのかよ。見えていたなら連れてってやろうと思ったのに…。」 背後で女の呟きが聞こえた。

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薫さんは恐怖のあまり、その場から急いで逃げた。 それ以降、この女に出会う事は無くなったのだそうだが、今でも何時、あの笑う女に出遭ってしまうのかと思うと、帰路が恐ろしいのだという。