- kaikinotane
- 3538
- 0
- 0
- 0
鎌田さんの家は元々百姓だったのだが、明治時代に牛肉を食す事が流行り、それに便乗した曽祖父が、食肉業を始めた事で財を成し、四代に渡って食肉加工業を生業としていた。
2013-06-24 19:36:59その鎌田さんの家の庭隅には、小さな祠が有るのだが、それは曽祖父が牛を殺生をしている事への罪悪感から、弔いの為に建てたのだそうだ。しかし鎌田さんは、老朽化した家を改築する際に、 「祠の敷地分が無駄になってて勿体無い。」 と言い、祠をそのまま破壊してしまい物置を置いてしまったのだ。
2013-06-24 19:42:07それからだ。 毎晩、 「ブモォォォ!!」 と言う、断末魔の様な牛の鳴き声が庭から聞こえる様になった。 鎌田さんは、その都度に庭を隈なく確かめてみるのだが、牛の姿など何処にも無い。自宅は勿論の事、近所で牛を飼ってるの所など無いので、そもそも牛の鳴き声が聞こえる訳が無いのだ。
2013-06-24 19:43:05しかし、その牛の鳴き声は止む事は無く、その内、庭から聞こえていた鳴き声は、家の中からする様になった。 そして、恐怖のあまり鎌田さん一家は眠れなくなってしまい、遂には霊媒師を呼び、御払いを行うに至ったのだそうだ。 それが功を奏したのか、牛の鳴き声が止んだと鎌田さんは言っていた。
2013-06-24 19:44:30ところが、それから半年も経った頃だ、二十歳になったばかりの、鎌田さんの一人息子が亡くなったのだが、その亡くなり方というのが異常だった。 突然、夜中に奇声をあげながら外に飛び出し、自宅前に設置されている、木製電柱の足場用ボルトに頭を打ち付け、自らの眉間を貫いて命を落としたのだ…。
2013-06-24 19:45:08警察は、状況から自殺と結論付けたのだが、地元では祠を壊したから祟られたんだ、と言う噂が広まっていた。 それは、その死に方が屠殺された牛の様だ、と言う事でそんな噂になっていたのだ。
2013-06-24 19:46:12そして今度は、奥さんの運転する車が、土建会社のトラックに追突をしてしまい、トラックの荷台に積んであった鉄筋が崩れて、それが車のガラスを突き破り、奥さんの眉間を貫いてしまった。 即死だったそうだ。
2013-06-24 19:47:34息子さんに奥さんを、立て続けに亡くしてしまった鎌田さんは、精神的に参ってしまい、段々、会社にも顔を出さなくなり、等々、家からも出なくなった。 あまりにも、姿を見せない鎌田さんを心配した、会社の専務が家を訪ねたのだが、何度呼びかけても全く返事が無い。
2013-06-24 19:49:15堪りかねて玄関の引き戸に手を掛けると、鍵は掛かって居らず、戸が少し開いた。 「社長、入りますよ…。」 そう専務が声をかけ、家の中に顔を入れた瞬間、途轍もない悪臭がした。
2013-06-24 19:50:07この臭いから、嫌な予感がしたのだが、意を決して家の中に入ると、居間に腐敗仕掛かった、鎌田さんの死体が有った。 その鎌田さんの死体の側には、ネイルガンが転がっており、眉間に釘が打ち込まれた状態で亡くなって居たのだ。 専務は慌てて警察へ連絡をした。
2013-06-24 19:51:16しかし地元では、「家族全員が屠殺された牛の様に死んだ、祟りで全滅した。」と、噂され、数十年経った今でも鎌田さんの家は、呪われた家と、密かに言われ存在する。 朽ちつつ有る、廃屋として誰にも近寄られる事無く、今もひっそりと…。
2013-06-24 19:54:19