ぼくがかんがえた超電磁砲×虐殺器官2「妹達」編
- Dr_crowfake
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すんません渡辺零先生のために書く予定だった超電磁砲×虐殺器官のト書きだけでこれは長編化やむなしと思わざるを得なかったのでここでもう公開しちゃいますね。ボツト書きってことで。
2013-06-24 19:48:30当地のPKFはほぼ完全に外注化されており、美琴のチームはそれを仕切る「紛争コーディネーター」の指揮下に置かれていた。彼は複数のPKFや国際派遣部隊の活動――治安維持・訓練・兵站・武装解除・社会再統合を取りまとめる事業のプロフェッショナルで、戦争屋と自嘲するがその手腕は確かだ。
2013-06-24 19:55:50その彼が、学園都市きっての超能力者である美琴に依頼したのはウェットワーク――すなわち武装解除に抵抗し武装闘争を続ける組織の「第1階層」を殺害することだった。
2013-06-24 19:56:11無論、ただの民兵など、恐るるに足らない。美琴は警戒線をくぐり抜け、「第1階層」を射殺する。だが、園となりにいた少女が、スコープ越しに――あたかも弾道から逆算したかのように美琴を見つめる。その顔立ちは、少女の頃の美琴、そのものだった。
2013-06-24 19:56:39美琴から報告を受けた白井黒子は「妹達」計画がどこかで再び行われていると推測する。布束が学園暗部に消えた後でも、彼女の残した学習装置と妹達育成技術は凍結保管されているのだから。
2013-06-24 19:57:11黒子の調査の結果、学園都市内部でその計画が凍結解除された形跡はなかった。しかし布束がもし学園暗部から外部へと「持ちだされ」ある種の強要のもとに同様の計画を進めているとするならば?
2013-06-24 19:57:39黒子は考える。おそらく布束あるいは彼女の技術を手に入れた組織が目論んでいるのは、戦争遂行の方式において画期的な革新をもたらすであろう「能力者量産」及び「情報共有化」技術によって、外注化が際限なく進んでいる世界の軍事市場でのアドバンテージを得ることだろう。
2013-06-24 19:58:08ましてや布束の作り上げたシステムは廉価に兵士を量産できるものだった。兵士のリソースがかつて無いほど高まっている現代の風潮を完全に覆し、誰もが安価に戦争へと踏み切る選択肢を取ることができるようになる。それは世界の安全保障において極めて重篤な危機をもたらすと、黒子は判断した。
2013-06-24 19:58:39黒子は学園都市統括理事会に掛けあい、この案件を自身の部隊で解決することとする。そして美琴は、わずかに姿を表した敵の影――アサワド地域において発見した「妹」の追跡行に入る。それは彼女が16年前に経験した闇、現在の自身の原点となった場所への追跡行だった。
2013-06-24 19:59:03アサワドで活動するいくつかのケル・タマシェクの部族を渡り歩き「妹」を探す美琴。その探索は困難を極めたが、意外にもWHOの螺旋監察官が現地協力者となった。キリエと名乗るその女性は、アサワドで大規模な医療倫理違反が行われている可能性を別ルートから探り出し、独自に調査を行なっていた。
2013-06-24 19:59:33美琴は黒子の調査やキリエの情報を突き合わせた結果、「妹」が現在、アサワド北部の武装勢力においてなんらかの活動を行なっていること、それはPMC大手ユージーン&クルップスが主導している計画であること、そこに計画の中枢である布束もいることを知る。
2013-06-24 20:00:06美琴は黒子に連絡し、Eの字が進めようとしているこの計画を潰すための大掛かりな合同ミッションを実行するよう提案する。黒子はそれを了承し、現地の紛争コーディネーターの統括の下、学園都市・PKF・WHOの合同作戦が開始され、美琴とキリエは敵情を把握するため先行する。
2013-06-24 20:00:35アサワド北部の武装勢力、そこはまるで16年前の再現のような光景だった。「妹達」の量産施設が存在し、すでに製造された「妹達」がそれを警備している。ここを拠点に、黒幕は「能力者量産による戦争形態の劇的変化と、それによる軍事産業でのアドバンテージ」を得ようとしているのだろう。
2013-06-24 20:01:05そのように美琴は判断し、キリエやチームメンバーとともに施設へと潜入、施設の中枢にたどり着く。そこには16年たっても相変わらずの布束と、まるで美琴が現れるのを待っていたかのような表情を浮かべた「妹」がいた。
2013-06-24 20:01:27「妹」はいう。「ようこそお姉さま、と、ミサカは挨拶をします」そして布束は顔をしかめ、良心の呵責に耐えられないように目を伏せる。
2013-06-24 20:01:56「貴方たちの目的は判ってる。そんなことのために、私の遺伝子を使うなら、そんなの絶対許さないって、あんたたちのボスに伝えなさい」そのように凄む美琴。しかし「妹」は頭を振る。「この組織にもう黒幕はいません。いるとしたら、ミサカたち新しい「妹達」のネットワークだと、ミサカは宣言します」
2013-06-24 20:02:34「どういうことなの……」美琴は絶句する。廉価能力者兵士の大量生産により戦争形態を決定的に変える巨大ビジネスの黒幕が、すでに存在せず、その主体が「妹達」に移っていること。それは何を意味するのか。
2013-06-24 20:03:07「妹」はその疑問に明瞭に応える。「ミサカたちは確かにお姉さまが黒幕と呼ぶ勢力に作られましたが、その計画をネットワークを応用して簒奪し、自分たち自身の計画にしましたとミサカは答えます」
2013-06-24 20:03:30「どうしてそんなことをしたの?」「それがネットワークの生存と継続に最も適切な判断だと、ミサカたちは合意に達したとミサカはいいます」
2013-06-24 20:04:17「そんなことをすればこの世界はひっくり返る! 戦争を起こしたがってる奴らが誰も彼もあんたたちを買っていく。そして戦場ですりつぶす。世界はあんたたちのせいでめちゃくちゃになり、あんたたちもめちゃくちゃになるのよ!」
2013-06-24 20:05:14「そう。その混沌こそが、ミサカたちが自身の存在を世界に拡大し、継続していくために必要なプロセスですとミサカはいいます」「戦争の道具として生まれたあんたたちは、戦争の拡大という手段で自己の存続と拡大を図るってわけ……」「端的に言うとそういうことだと、ミサカは冷静に答えます」
2013-06-24 20:05:42「それで多くの人達が犠牲になっても? それであんたの妹達が犠牲になっても?」「ネットワーク総体としては発展し、拡大していきます。ヒトはこれを善と呼ぶのではないでしょうか?」「善ですって?」意外すぎる言葉に御坂は驚愕する。だが「妹」は冷静だ。
2013-06-24 20:06:10「あるひとつの価値を維持し、未来へとつなげていくこと。ミサカたちミサカネットワークはそれ自体がひとつの価値ある存在であり、未来へとつながっていく権利を持ちます。それを正当に行使するために、ネットワークの維持拡大を行うのは正しい行為だとミサカは断言します」
2013-06-24 20:06:32このように「善についての話」をする「妹」を御坂は理解できない。御坂妹たちは人間と共存する形でこれまで存在し続けて来られた。にも関わらず、ここにいる「妹」はその慎ましやかな共存の形をかなぐり捨て、ひたすらに自己の維持と拡大を善として世界に混乱を撒き散らそうとしているのだ。
2013-06-24 20:07:03