高野長英が翻訳した軍事書「三兵タクチーキ」について

「蛮社の獄」によって入牢するも脱獄、その後大名家に保護されたり、薬品で顔を焼いての変装をしたりして逃亡の日々を送りながら、ひそかに翻訳した西洋兵学の軍事書が歴史に大きな影響を与えました。 @Kominebunzoさんがその書について語ったことのまとめです。高野長英は吉村昭「長英逃亡」みなもと太郎「風雲児たち(ワイド版)」などでも有名。自分は三兵タクチーキを後者の漫画で知りました。
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Bunzo @Kominebunzo

フランス人軍事教官シャノワンは幕府の様式軍隊について、上級指揮官も「三兵タクチーキ」も理解していない、読んですらいない、と批判している。高野長英の訳本が出ているのにどうして読まないのか、という批判。これはどうしてなんだろう。何で読まれていないのか。

2013-06-26 08:03:09
Bunzo @Kominebunzo

高野長英訳「タクチーキ」は執筆環境のためか、資料、知識不足のためか、人名や用語について不明なものには「よくわからない」と正直に書かれている。実に誠実な姿勢なんだけれども、やはりテキストとするにはやっぱり長くてクドいかもしれない。

2013-06-26 08:09:21
Bunzo @Kominebunzo

高野タクチーキはちゃんと基本を押さえていて、歩兵の4割は散兵になる、散兵スクリーンの後方で隊列変換を縦横無尽に行うのが陸戦の肝、そして、騎兵は補助兵種で方陣防御より二列横陣の火力で対抗する、など最新の情報がしっかり伝えられている、という面もある。けれど何処かスパッと伝わらない。

2013-06-26 08:19:00
Bunzo @Kominebunzo

高野タクチーキの根本は仏式戦術ではあるけれどプロシア経由の解釈なので攻撃偏重の傾向が強く、三兵協同といいながらも砲兵の記述が比較的薄い。海防とリンクした徳川家の軍備には合わないのか、とも思えるけれども、そこを取捨選択するレベルにあったとも思えない。

2013-06-26 08:33:14
Bunzo @Kominebunzo

徳川陸軍の兵制改革の方向性を決めた文久2年計画の編制案もタクチーキとは直接の関係がない。それ以上の情報と知識で練られた仏式軍備計画で、歩騎砲の各部隊もペーパープラン上ではあるけれども、充実している。タクチーキは何処へ行ってしまったのか。

2013-06-26 08:40:27
ををつか @wowotsuka

@Kominebunzo 高野長英は、幕府にとって犯罪人ですよね、当時の旗本、御家人は、「科人の書いたものなど読んでは、お上に申し訳ない」と思考したのでは?

2013-06-26 08:45:23
Bunzo @Kominebunzo

@wowotsuka この本、本人の署名はありませんから。「誰が訳者だかペンネームなので不明」が公式のステータスなんです。

2013-06-26 08:47:22
Bunzo @Kominebunzo

三兵戦術と言いながらも徳川家ですら騎兵部隊の編成を完結する見通しがない。騎兵の戦闘力を支える騎砲兵を揃えるだけの馬匹入手の見込は絶望的。縮小編制で我慢するしかない。2.5兵といったところ。

2013-06-26 08:52:32
Bunzo @Kominebunzo

18世紀後半のトレンドだった散兵比率の上昇についても執筆時期の古いタクチーキではヒントしか得られない。日本の地形では欧州式の三兵戦術は無理かもしれない、とシャノワンが思うまでもなく、歩兵砲兵についての記述も食い足りない。良い事が書いてあるのに隔靴掻痒、というのがタクチーキだった。

2013-06-26 08:58:04
Bunzo @Kominebunzo

タクチーキは現場の指揮官用マニュアルとしては簡潔さと明快さに欠け、理論書としては根拠の提示を欠く傾向があり、欧州で自明の事柄(徴兵制など)も省略される。注目すべき基本を押さえているのでシャノワンは「あるんだから読め」と言ったけれども、良書であるとは言わなかった。

2013-06-26 09:03:54
Bunzo @Kominebunzo

それでは高野長英タクチーキは読んでも面白くないか、といえばそうとも限らない。例えば歩兵と騎兵の一日当りの行軍速度は概ね十数%程度の違いでしかない、といった話も読める。当時の軍事常識がどの辺りにあったかが日本語で読めるのだから面白くない訳がない。

2013-06-26 09:14:52
dada @yuuraku

大村益次郎のいた長州はともかくオークやトロルみたいな薩摩の連中に近代戦術が受け入れられたというのがちょっと信じ難い。

2013-06-26 23:51:10