シマウマ(f_zebra)さんと考える『原子炉の健全な廃止』とは?

合理的な思考を排除した未来はどんな形になるのだろうか? (ギックリ腰は如何ですか?)
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Flying Zebra @f_zebra

原子炉の廃止処置について。1Fの1~4号機のように事故で損傷した原子炉の廃炉は事業者も元々想定しておらず、技術の蓄積もほとんどないので試行錯誤しながらやっていくしかない。そうではなく、健全に寿命を終えた原子炉の廃止処置について少し考えてみたい。

2013-06-26 12:29:46
Flying Zebra @f_zebra

原子力発電所は運転している期間だけで見ると燃料費もCO2排出も少なく効率の良い発電方式だが、建設のコストは同規模の火力発電所より高く、廃止した後にもかなりのコストが掛かる。使用済燃料の処理というのも原子力に特有の負担だ。発電コストは、これらを全て考慮して算出している。

2013-06-26 12:30:10
Flying Zebra @f_zebra

発電設備は原子力に限らずライフタイムが長いので、ライフタイムコストの算出はどうしても不確実性が高くなる。40年後の燃料費や労務単価を正確に予測することは難しい。原子力については、技術を開発しながらなので更に不確実性が高い。

2013-06-26 12:31:29
Flying Zebra @f_zebra

数十年前の想定より何かが大幅に高くなることは珍しくないし、当初は想定できなかった費用が追加で発生する場合もある。一方、技術的なブレークスルーにより大幅にコストを縮減できる可能性もある。そのため、一定期間ごとに費用は見直されている。

2013-06-26 12:31:56
Flying Zebra @f_zebra

原子力発電所のようにランニングコストが安く初期投資や廃止処置に大きなコストが掛かる施設の場合、基本的には供用期間を長くするほど費用対効果が良くなる。とは言え、安全性を含む所定の性能を維持しようとすれば、古くなればなるほど維持コストが高くなる。

2013-06-26 12:33:06
Flying Zebra @f_zebra

日本では、機器に対する安全性の審査は原子炉容器のように取替ができない機器の場合、60年間の運転を想定して行われている。つまり、実際にはもっと早く廃止するとしても、60年間は安全に使えるだけの性能を証明できないと運転が認められない。

2013-06-26 12:34:18
Flying Zebra @f_zebra

新しい基準では原子炉の寿命は原則40年に制限されるが、1回に限り20年の延長が認められているので、「ウチは40年で廃炉にするので40年分の評価しかしていません」というのは認められず、結局は従来通り60年間の評価を求められることになる。

2013-06-26 12:35:04
Flying Zebra @f_zebra

では事業者にとっては全ての原子炉をきっちり60年間使い切るのが最も有利かと言えばそうではない。古くなれば点検の頻度を上げたり、部品の補修、交換が増えたりしてコストが嵩む。設計も陳腐化するので、経済的な寿命はもっと早く訪れる。

2013-06-26 12:36:31
Flying Zebra @f_zebra

福島事故の前年に40年目以降の運転を認可された関西電力美浜1号機の場合、次の高経年化技術評価(50年目)までに廃止することが決まっていた。電力会社や原子炉のタイプにもよるが、概ね40年から50年程度が経済的な寿命となる場合が多い。これは、アメリカなどでもだいたい同じだ。

2013-06-26 12:37:15
Flying Zebra @f_zebra

古い原子炉を多く持つ東京電力、関西電力は早くから廃止措置の研究を続けていて、出資している日本原電の東海発電所の他、海外の先行事例も参考にしつつ、具体的な検討を進めている。他の電力会社は東電と関電に倣うという方針なので、独自の研究にはそれほど積極的ではないように見える。

2013-06-26 12:39:08
Flying Zebra @f_zebra

事業者は将来の不確実性もある程度は織り込んで廃炉時期や廃止措置の費用を算出し、電気料金に反映している。想定よりも大幅に早く廃炉することになれば当然積み立てが不足するが、そうした不確実性は原子力に限ったものではなく、ある程度の備えはあった。(過去形)

2013-06-26 12:39:54
Flying Zebra @f_zebra

電気事業のような、事業の安定が国民生活や生産活動に不可欠な公益性の高い事業では、民営であっても供給義務を課せられ、そのために十分な内部留保と安定した収益基盤のための総括原価による料金認可制度がある。

2013-06-26 12:41:17
Flying Zebra @f_zebra

原価の変動によって電気事業者の経営が不安定になり、必要な人材の確保や原子炉の廃炉費用積み立てができなくなれば国民生活に多大な影響があるため、原価に応じて必要な利益を確保できる料金を設定することが認められてきたのだ。これも過去形になりつつあるが。

2013-06-26 12:42:25
Flying Zebra @f_zebra

廃炉を決めた時点で資産価値をゼロにせず、廃止措置中も償却ができるようになれば短期的にはキャッシュフローが改善するかもしれない。ただ、会計制度を弄っても費用の総額や利用者の負担総額が変わるわけではない。むしろ、早期の廃炉が集中すれば費用は増加する。

2013-06-26 12:43:15
Flying Zebra @f_zebra

アメリカのように徐々に実績を積み上げ、直前の経験を活かしつつ途切れることなく継続的に廃止措置が続けば、1基あたりの費用は徐々に安くなる。一方、実績の蓄積もないまま一時に廃止措置が集中すれば単価は跳ね上がり、熟練者を確保できず品質も落ちることになる。

2013-06-26 12:44:15
Flying Zebra @f_zebra

現在廃止措置中の東海発電所(ガス冷却炉)では、廃炉技術の研究という面もあるため敢えて様々な工法を試し、技術の蓄積を試みているため当然費用は高くなる。今後軽水炉の廃止措置でより実践的な技術を蓄積し、徐々に単価を下げるのが当初からの計画だ。

2013-06-26 12:45:42
Flying Zebra @f_zebra

エネルギー政策というのは国家戦略の主要な柱の一つであり、100年以上のタイムスパンを見越した高度な戦略が求められる。まだ産まれてもいない未来の日本人、そして人類にどのような日本を残すのか。そうした視野を持たずにエネルギーを語るのは無責任に過ぎるだろう。

2013-06-26 12:47:03
Flying Zebra @f_zebra

少し技術的なところにも触れておこう。といっても、解体技術については実はそれほど大きな課題は残っていない。アメリカの実績でも、作業員の被曝や跡地の除染などを含め大きな問題は起きていない。コストへのインパクトも、解体作業そのものはそれほど大きくない。

2013-06-26 12:48:12
Flying Zebra @f_zebra

では何がコストを大きく左右するかと言えば、廃棄物の処理である。特に物量の多い低レベル廃棄物の処理がコストだけでなく、工程を含め計画そのもののクリティカルパスになる場合が多い。ここでも問題となるのは技術ではなく、心情的、あるいは政治的な抵抗だ。

2013-06-26 12:49:14
Flying Zebra @f_zebra

数万年以上の時間を考慮(管理ではない)しなければならない高レベル廃棄物の地層処分とは異なり、低レベル廃棄物の処理や使用済燃料の中間保存はリスクレベルも低く、既に確立された技術だけで対応できる。それでも、受け容れに対する抵抗は最終処分地と大差ない。

2013-06-26 12:51:01
Flying Zebra @f_zebra

原子炉や最終処分地と違って地盤条件などの要求も低いため、都市圏を含めてサイト選定の自由度も高い。原子炉の廃炉を促進するため低レベル廃棄物を積極的に受け容れるという電気消費地の自治体が出てくれば画期的だが、まず期待はできないだろう。

2013-06-26 12:51:27
Flying Zebra @f_zebra

大飯発電所の再起動でゴタゴタしていた時期に、大阪市の橋下市長が中間貯蔵施設の受け容れに言及したことがある。注目を引くために過激な提案をするといういつものパターンで深く考えての発言ではなかったことはその後の発言からも明らかだが、実はそれほど的外れでもない。

2013-06-26 12:52:24
Flying Zebra @f_zebra

原子力発電のリスクを嫌うのであれば、よりリスクの低い低レベル廃棄物処分を消費地が受け容れ、リスクの高い原子炉が早期に廃止できるようにするというのは極めて合理的な考えだ。処分地が決まらなければ、いつまでも大嫌いな原子炉が残ることになる。

2013-06-26 12:52:53
Flying Zebra @f_zebra

嫌われ者の使用済核燃料にしても、行き場がなくて長期保存は想定していない発電所内でいつまでも留まっているより、適切に管理された中間貯蔵施設に速やかに移送する方がリスクが小さくなることは言うまでもない。その施設が大都市のど真ん中であったとしてもだ。

2013-06-26 12:53:52
Flying Zebra @f_zebra

スウェーデンのように原子炉の総数を制限して廃炉と新設をセットで行って順次新しいものに更新していくにしろ、緩やかな脱原子力を目指すにしろ、寿命を終えた原子炉の廃止措置がスムーズにできるに超したことはない。そのためにはどうするのが合理的だろうか。

2013-06-26 12:54:56