自然栽培が宗教化する理由 ~奇跡のりんごをめぐる農業とその周辺の考察~

基本的には前から何度か断片的につぶやいていたことのまとめという形になります。 僕の主張の根幹は「農業の中での対立は意味がないと思う」ということであり「農業はもっと職業として正当な対価をもらう必要がある」ということであり、自然栽培や有機栽培を否定する意図は一切ありません。
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いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

有機栽培(無農薬栽培や無化学肥料や無肥料栽培)が宗教化する理由について、つらつらとつぶやいてみようかな。最初に言っておきますけど、決して有機栽培を否定したいわけではないです。

2013-06-26 22:58:20
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

まず最初に、これは割りと各方面で言われていることだけど、実際に農業の末端に関わっている身として言えるのは「有機栽培で作物を育てること」自体は、決して難しいことではないということ。有機栽培とは「栽培方法」が特別なのではなく「作物の管理(品質や収量の安定など)が難しい」んです。

2013-06-27 22:53:17
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

多くの農家が有機栽培に手を出さないのは「品質や収量が安定するまでに比較的長い時間がかかるため、その間の生活を維持することができない」ためというのが間違いなく最大の理由でしょう。今回話題になっている奇跡のリンゴ=果樹であれば、安定するための年月はさらに増えることも予想されます。

2013-06-26 23:22:01
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

ちなみに、野菜の味についても少し触れておくと、野菜の味をもっとも左右するのはまず「品種選び」だと僕は考えています。その後に「栽培管理」が来て、その栽培管理の要素の中のひとつが「有機栽培の導入」です。

2013-06-26 23:28:16
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

少なくとも「有機栽培であれば、必ず慣行栽培の野菜よりも美味しくなる」という科学的根拠はないと言っていいと思います。何より「味」とは、基本的に主観 であって、数値で表せるのは精々「糖度」や「成分含有量」ですから、それは個々の農家の作物をくまなく調べて比較するしかありません。

2013-06-26 23:32:37
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

こうして考えていくと、有機栽培の最後の砦は「安全性」ということになります。そして、ここが一番扱いが難しいポイントになってきます。

2013-06-26 23:36:04
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

有機栽培で育てられた野菜を選ぶ方の中で「野菜の安全性」を全く気にしていないという方は、たぶんいないと思います。しかし残念なことに「安全な野菜とは何か」と考えたことがある人は、かなり少ないのではないでしょうか。

2013-06-27 00:19:41
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

実は野菜に限らず、どんなことでもそうなのですが「安全」とは「基準」がないと測ることができません。そして、農作物に関する「安全の基準」は「ある」とも言えるし「ない」とも言える。まず、この「基準をどこに置くか」がとても大切なことになってきます。

2013-06-27 00:25:34
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

例えば農薬に関して言えば、安全性に対しては明確な基準があります。使用方法から使用量・使用回数まで、厳格に決まっているからです。そして、それを「安全の基準」とするならば、少なくとも日本で栽培されているほどんどの野菜は「安全」ということになります。

2013-06-27 00:27:23
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

一方で安全とされている基準量の農薬が、人体にどのような影響を及ぼすのかは「分からない」というのが実情だと思います。そしてここが重要なのですが、有機栽培で育てられた野菜が人体にどのような影響を及ぼすのかも、同様に「分からない」のが実情。その意味では安全基準は「ない」とも言える。

2013-06-27 00:34:50
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

実は多くの人が農産物に求めているのは「安全」ではなく「安心」なのだと思います。よく「安全・安心な野菜」とラベルが貼ってあったりしますが、個人的には「安全」と「安心」は、併記できるような概念ではないと思っています。

2013-06-27 00:39:55
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

自分が「安全」だと納得して得られるものが「安心」です。どれだけ「安全だ」と言われても、自分が信用できなければ「安心はできない」。このような例は、野菜に限らずあらゆるところで見られる普通の感覚です。これは別に良い悪いという話ではありません。

2013-06-27 00:46:04
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

有機農法で栽培された野菜から得られるのは「安全」ではなく「安心」だというのが、現段階でのひとつの話 の結論になります。そして僕は、そのことについては全く批判するつもりもないし、それはある種の価値を持つとは思います。僕が疑問に思うのは、この「安心」に付随する誤解についてです。

2013-06-27 22:58:03
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

そしてもうひとつ問題だと思うのは「安心で商売をする取り巻き」が出てくるところです。これに対しては、僕ははっきりと「嫌い」だと言い切ります。

2013-06-27 13:07:03
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

科学的に言えば、慣行栽培と有機栽培の野菜を食べることに関する「安全性」に違いはないと言ってもいいでしょう。 もし危険があるとすれば、それは「消費者」ではなく、むしろ「生産者」の側にあります。奇跡のリンゴの木村氏も無農薬栽培を始めるきっかけは「自分の妻が農薬過敏だったこと」です。

2013-06-27 22:59:23
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

化学物質過敏の方であれば、極めて少量の農薬が野菜に残っているだけでもアレルギー等が出るのでしょう。しかし、そのことが一般的に「危険」と表現される必要性があるのかどうかは甚だ疑問です。例えば世間に花粉症の方はたくさんいますが、花粉が「危険」とは言いません。

2013-06-27 13:37:05
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

また、無農薬や自然栽培の野菜を食べてアトピーなどが治ったという話も目にしますが、これもとても微妙なところだと思います。少なくとも「農薬を使っていない」というのは「リスクを減らす」ことであって「効果が明確に出る」というものではないはずだからです。

2013-06-27 13:38:49
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

繰り返しになりますが、多くの人が野菜に求めているものは「安全」とラベルの貼られた「安心」です。何を「安全」だと思い、自分の中で納得をして「安心」を得るかは自由ですが、自分が安心を得られないものを「危険」だと言う必要はないはずです。

2013-06-27 13:50:08
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

それではなぜ、慣行栽培は「危険」というラベルが必要かというと、これが先に挙げた「安心で商売をする取り巻き」がいるからです。こういう人たちは実際には、生産者にも消費者にも迷惑をかけていると思っています。

2013-06-27 13:52:39
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

今やほとんどの商売は「付加価値」で出来ています。もはや「品質」で売れる時代は終わりに差し掛かっているといってもいいかもしれません。勿論、圧倒的な品質の差を生み出せる産業もありますが、こと農作物で言えば、品種の改良と技術革新が進み、少なくとも「まずい野菜」はほとんどなくなりました。

2013-06-27 13:55:33
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

農産物で圧倒的な「品質=食味」の差が出にくくなっている現代で、さらに「付加価値」を付けようとしたときに、白羽の矢が立ったのが「安全性」だと僕は考えています。ここで大事なのは、白羽の矢を立てたのは「生産者自身ではない」というところです。これはあとで改めてご説明します。

2013-06-27 14:05:26
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

誤解をしないでほしいのですが、有機栽培を行っている生産者も、それを求める消費者も、基本的にはそれぞれの「安心」を誠実にやりとりしていると思っています。僕が問題視しているのは、そのやりとりを見て、そこに「付加価値」を見出して商売に利用しようとしている人たちです。

2013-06-27 14:14:00
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

「安全」を商売にする人たちにとっては「危険」はなくてはならないものです。危険がなければ安全は付加価値になり得ません。そして、商売として成立させるには、今までその存在を知らなかった人に「付加価値の意味」を広めていく必要があります。

2013-06-27 14:15:29
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

今回の「奇跡のりんご騒動」に関して言えば、twitterの意見を見る限り、どうも今まで以上に慣行栽培を危険なものとラベリングしようとする意図が見 え隠れします。それは僕には「自然栽培」を有機栽培のさらにひとつ上のランクの「ブランド」に仕立てようとしているようすら見えてしまいます。

2013-06-27 23:01:50
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

ものに付加価値を付けて商売をしている人にとっては、新しい価値を「ブランド化」することに意味はあるのでしょうが、それが生産者や消費者の意図の外で行われているところが、今回の騒動でひとつとても疑問に思うところです。

2013-06-27 14:50:37