自然栽培が宗教化する理由 ~奇跡のりんごをめぐる農業とその周辺の考察~

基本的には前から何度か断片的につぶやいていたことのまとめという形になります。 僕の主張の根幹は「農業の中での対立は意味がないと思う」ということであり「農業はもっと職業として正当な対価をもらう必要がある」ということであり、自然栽培や有機栽培を否定する意図は一切ありません。
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いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

さて、少し話が本筋からそれましたが、今してきた話は「なぜ有機栽培が宗教化するか」にも関係しています。改めて言っておきますが、あくまで「宗教」というのは比喩的な意味合いで使っていますし、僕自身は宗教というものに対して否定的な感情は一切持っていません。

2013-06-27 15:09:29
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

この話題の最初に言いましたが、有機栽培は非常に労力を必要とします。その結果、農家ひとり当たりが栽培できる面積も慣行栽培に比べて減少することがほとんどです。栽培できる量に限度はあるけれど、生活費は減りません。結果として、栽培した野菜の単価を上げることは必須になります。

2013-06-27 15:17:28
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

有機栽培の野菜が高い一番の理由は、人件費に見合うだけの収入を得るためには高く売るより他に方法がないからです(ちなみに僕はどんな農業でも、ほとんどの生産者の労働と人件費は見合っていないと思っていますが、その話は最後にします)。

2013-06-27 15:19:07
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

世間で販売されているほとんどのものは生産原価をもとに価格が決定されます。しかし農産物だけはなぜか「生産にこれだけの費用がかかるので単価が高くなる」と言っても、多分ほとんど買い手はつきません。それは農産物が「商品」である前に「食料」という生活必需品であることも影響しているでしょう。

2013-06-27 15:27:31
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

そこで農産物を高く売るには、やはり「付加価値」が必要になってきます。もちろん先ほど言ったように、有機栽培の農産物の生産者と消費者の間には、それぞれのニーズにマッチした関係が築かれているので、それを「無意味」だと言う気は全くありません。

2013-06-27 15:29:05
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

有機栽培の生産者と消費者の間で「安心」をベースにお互いが納得のいく関係を維持しているだけであれば、何も問題はありません。厄介なのは「他のものとの比較でしか手に入れた価値を確認できない」人が、その中に入ってしまったときです。そういう人は、他の価値観に対して攻撃を始めてしまいます。

2013-06-27 15:48:57
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

そのようなことが起きてしまうと、有機栽培に興味がない外側の人間に、生産者と消費者の関係が宗教的なものと似た空気を感じさせてしまいます。また、残念なことですが、生産者自身が他の栽培方法を攻撃するといったことも時には起こってしまいます。

2013-06-27 15:57:23
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

先に述べたように、有機栽培が品質に大きく影響しないとなれば、その付加価値は「安全性」、つまりは突き詰めると「善であること」になってしまいます。そして「善」とは「悪」がなければ成り立ちません。この点が非常に宗教と共通する部分なのだと思っています。

2013-06-27 16:08:10
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

そして、これも繰り返しになりますが、その対立の構図を利用して「商売」をしようとする取り巻きの人間が最も性質が悪い。「食品の安全」は「健康」と直結していますし、健康に対する効果も個人差があるので明確に結果が出なくても商売ができる曖昧な分野です。そこに有象無象が群がる。

2013-06-27 16:14:20
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

僕は前から野菜は安すぎると言っているのですが、例えば「安全な野菜」を食べたいのであれば、普通の野菜にもしっかりとした対価を支払うことが大切だと考えています。省力化・効率化のために必要なのが農薬でもあり、農家側もきちんとした対価があればそれだけ「安全」への配慮が可能になるからです。

2013-06-27 16:54:05
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

少なくとも僕が知っている農家さんは、慣行栽培/有機栽培に関わらず、少しでも品質の高い作物を消費者に届けることを一番に考えて栽培をしている方ばかりです。その中で誰の作物が価値があるとかないという話ではなく、農業という職業そのものがもっと安定した形で営まれることを切に望みます。

2013-06-27 17:10:46
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

ちなみに断っておきますが、僕は有機栽培や無農薬無肥料栽培で素晴らしい野菜を栽培している方を何人も存じ上げています。僕自身そういう方々を見ているので、農薬を使わずに安定して食料としての野菜供給ができる可能性もあるとは考えています。

2013-06-28 11:58:31
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

農薬の使用について少し追記を。現在、慣行栽培をしている生産者の中でも、農薬というのは「使わずに済むならそれにこしたことはない」というものになりつつあると言ってもいい状況になっています。その理由の一つは「経費がかさむ」ことにあります。

2013-06-29 12:50:47
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

作物によっては、生産にかかる経費の中で農薬が占める割合がかなり高くなります。先のツイートで「農薬を使用するのは省力化・効率化のため」と書きましたが、意欲的な生産者は常に農薬の使用/不使用を含めて経営的に最もバランスのいい形を模索しています。

2013-06-29 13:06:34
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

「農作物にとって最も望ましい環境はどういったものか」を一番真剣に考えているのは、間違いなく生産者自身です。例えば「自分の子供が病気になったときに薬を飲ませる/手術をする/様子を見る」など、どの選択をしたから「正しい」と言えるものはないのと同じような状況の中で、決断をするわけです。

2013-06-29 13:13:40
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

もう一つ「農薬の環境負荷」についても少しだけ。よく「農薬は土壌の微生物などを殺して、環境を破壊する」などと言われます。細かいことはさておき、今回のまとめでは大筋でこれをとりあえず事実と認めてもいいかと思っています。

2013-06-29 14:29:26
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

ただ「農薬の使用」よりも、さらに環境に対する悪影響がある行為があります。それは「農地の放棄」です。実は農地やその周辺の管理による治水等の経済効果はうろ覚えですが数百億から数兆円になるとの試算まであったように記憶しています。

2013-06-29 14:36:41
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

農地が放棄されるということは、その治水等の環境保全機能を失うことに他なりません。これはあくまで考え方のひとつとしてですが「農薬を使ってでも農地を維持した方が全体としての環境保全効果は高い」という見方も出来るかもしれません。

2013-06-29 14:38:12
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

僕は専門家ではないので、このあたりに詳しい方がいらっしゃればぜひご意見を伺いたいところではありますが、これだけ高齢化が進み、担い手を探すことすら困難な状況を鑑みると、数十年後には農薬の使用以前の大きな環境の悪化が起こる可能性も否定はできません。

2013-06-29 14:40:29
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

これ以上のことを言うと、自分で批判的だった「危険を煽る人」と同じことをしてしまうことになるので話はここで終わりにしますが、農業の捉え方に幅を持っていただくという意味では、意外と知られていない視点だと思いますので、参考程度に知っておいていただきたいです。

2013-06-29 14:43:26
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

とにかく「農業」は、その範囲があまりにも多岐に渡るため、とても一括りで話ができるようなものではありません。その中で「農薬を使うかどうか」だけが「生産者の善し悪しを決める」かのような言説は、非常に残念なものだと言わざるを得ません。

2013-06-29 14:45:56
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

繰り返しになりますが、農業に対して「安全」を求めるのであれば、まずもっと農業について広く関心を持っていただきたい。そして、農業があらゆる意味で産業として継続的に発展していくためには、農業に対する一人ひとりのより深い理解が必要だということをご理解いただければと思います。

2013-06-29 14:50:12
いさけんさん(脱ホカペ宣言・春) @isa_kent

また、こちらのまとめ「日本の農業は「大規模化」で世界とたたかえるのか> http://t.co/vmcA3xhF14 」にも目を通していただけると嬉しいです。

2013-06-29 15:55:22