シマウマ(f_zebra)さんと勉強する『電気事業法改正案で示されている電力システム改革』の中身

廃案になりましたが、今のうち勉強しときましょう。 (ギックリ腰は良くなられたそうです)
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Flying Zebra @f_zebra

参議院のゴタゴタで廃案になった電気事業法改正案で示されている電力システム改革について、その内容や課題についての議論はあまり目にしません。私自身も専門外ですが、自分の勉強も兼ねて中身を確認してみたいと思います。

2013-06-28 21:29:11
Flying Zebra @f_zebra

電力システム改革については資源エネルギー庁のこちらの資料 http://t.co/vcmMDDcotz によく纏まっています。スケジュールとして、第1段階で広域系統運用機関を設立、第2段階で電力小売り自由化、第3段階で法的分離による発送電分離です。

2013-06-28 21:30:13
Flying Zebra @f_zebra

このうち、今国会で提出されていたのは第1段階の広域系統運用機関設立について、および第2、第3段階についてのプログラム規定についての部分です。改革の目的は、1.安定供給の確保、2.電気料金抑制、3.需要家の選択肢と事業者の事業機会拡大 です。

2013-06-28 21:34:05
Flying Zebra @f_zebra

目的は立派ですが、改革の具体的な内容が目的に照らして有効かどうかという視点での議論は国会審議の中でも十分に為されたとは思えず、少なくとも報道からはそうした論点は見えてきません。

2013-06-28 21:34:41
Flying Zebra @f_zebra

自然エネルギーの導入拡大などは目的の中の需要家の選択肢と事業者の事業機会拡大に含まれると思いますが、挙げられた3つの目的は必ずしも同じベクトルを向いているわけではなく、相反する場合もあります。全てを同時に実現する、魔法のような改革案があるわけではありません。

2013-06-28 21:37:41
Flying Zebra @f_zebra

まず、第1段階の広域系統運用機関についてです。これは民間の認可法人で、各地域の電気事業者による供給計画を取り纏め、全国レベルで調整して安定供給を確保する事を狙ったものです。災害時等には電気事業者に対し焚き増しや融通を指示する権限を持ちます。

2013-06-28 21:39:06
Flying Zebra @f_zebra

現在も各電気事業者が自主的に融通し合って全国レベル(沖縄は除く)での調整はできていますが、取り纏める機関があればよりスムーズに連携できるようになることが期待できます。供給能力の合計が総需要を上回っている限り、うまく機能しそうに思います。

2013-06-28 21:40:00
Flying Zebra @f_zebra

長期的な需要予測に応じて供給能力や送配電容量を確保するために投資する責任は当面は現在の電気事業者、分離後は送配電事業者が担います。これは現在も同じですが、広域運用が実現した後については、事業者のマインドが変わる可能性があります。

2013-06-28 21:43:06
Flying Zebra @f_zebra

足りなくなれば融通してもらえるのであれば、供給力について必要最低限以上の余裕を確保するインセンティブは薄れます。送配電部門分離後は、電源への投資は別会社の責任となります。必要以上の余裕、つまり無駄は減るでしょうが、安定供給には不安が残ります。

2013-06-28 21:43:52
Flying Zebra @f_zebra

全国レベルでの需給逼迫時、焚き増しや融通の指示では間に合わない場合は電気事業者に対して需要の抑制も指示できることになっていますが、どの地域にどれだけの抑制を要求するのかの決定は簡単ではないでしょう。何をどうやっても、酷く批判されることになりそうです。

2013-06-28 21:46:35
Flying Zebra @f_zebra

実際に運用が始まれば、その中で問題点を整理し、発送電分離のタイミングまでには細かなルールを整備しておく必要があるでしょう。

2013-06-28 21:47:37
Flying Zebra @f_zebra

小売りの自由化は、競争の促進による料金の抑制を狙ったものです。一般論としては自由化して競争が促進されれば料金は低下しますが、電力については自由化で先行している欧州、米国では必ずしも最終的な需要家の料金低下には繋がっていません。

2013-06-28 21:48:31
Flying Zebra @f_zebra

様々な理由が考えられ、研究成果も色々と発表されていますが、そうした先行事例の検討に基づいた議論を目にすることはまずなく、自由化すれば自動的に料金が下がるかのようなお気楽な論調が目立ちます。このままでは何の反省もなく同じ轍を踏むのではと危惧されます。

2013-06-28 21:50:36
Flying Zebra @f_zebra

この件については電力中央研究所の報告書、「欧州の電力小売全面自由化と競争の実態 -規制料金の現状・需要家の選択行動・供給者の対応-」が参考になります。 http://t.co/PVQqYsGaWw

2013-06-28 21:50:54
リンク t.co 研究成果 研究報告書(電力中央研究所報告)検索条件入力 電力中央研究所 研究報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。
Flying Zebra @f_zebra

最後の発送電分離についても、様々な問題が残っています。一番気になるのは、やはり安定供給の確保です。送配電会社は規制部門として残りますが、発電会社は小売り会社と同じく自由化部門となります。この中で、どのように安定供給に必要な供給力を確保すればよいのでしょうか。

2013-06-28 21:52:40
Flying Zebra @f_zebra

現在は一般電気事業者が供給義務を担っていますが、分離後は卸電力市場の市場経済に任せることになります。先行するアメリカでは、いくつかの失敗を経て制度設計が見直され、現在も試みが続けられている途上です。

2013-06-28 21:53:03
Flying Zebra @f_zebra

卸電力市場は一部の市場参加者による市場支配力の行使に対して脆弱な市場であることが明らかになっており、それをいかに監視するかが一つのポイントです。この脆弱性は2000年のカリフォルニアの電力危機で顕在化しました。

2013-06-28 21:53:44
Flying Zebra @f_zebra

市場経済による有効な競争と規制のさじ加減が難しいところですが、アメリカの例を参考にしつつ、注意深く制度設計することが必要です。これについても議論が熟しているとはとても言えない状況なのは残念ですが、結論ありきではない冷静な議論が大切でしょう。

2013-06-28 21:54:55
Flying Zebra @f_zebra

自由化の中でも安定供給を確保するための仕組みとして、米国では容量市場という仕組みがあります。これは、設備容量の確保を市場参加者に義務付けた上で、クレジット化した設備容量の過不足を市場で取引できるようにしたものです。

2013-06-28 21:55:45
Flying Zebra @f_zebra

米国でも地域によっては容量市場のないところもあり、一般に制度設計が複雑になる容量市場はまだまだ試行錯誤の段階です。そのまま日本で導入できるほど完成された仕組みではありませんが、一定の参考にはなるでしょう。

2013-06-28 21:56:30
Flying Zebra @f_zebra

自然エネルギーについては、現在日本では固定価格買取制度(FIT)によって優遇しつつ、系統への接続の判断は系統運用に責任を持つ電気事業者に委ねられています。発電部門が自由化された場合、これをどうするべきかについても答えは出ていません。

2013-06-28 21:57:49
Flying Zebra @f_zebra

例えばドイツでは、系統運用者(送配電会社)がFITで優先的に買い取り、それを卸電力市場で売って、その差額をサーチャージとして利用者に転嫁するという方法を採っています。このため卸電力市場で十分な競争が働かず、市場均衡価格が歪められるという弊害が出ています。

2013-06-28 21:58:36
Flying Zebra @f_zebra

自由市場で容量が確保される仕組みは、需給が逼迫すると価格が急騰し、その高い価格で売れるということが電源へ投資するインセンティブになるというものです。国民生活への影響を緩和するため価格の上昇が制限されると、インセンティブも削られることになります。

2013-06-28 21:59:36
Flying Zebra @f_zebra

また、短期の市場ではベースロード電源となる石炭・石油火力や原子力といったリードタイムの長い電源への投資は躊躇されがちで、自然エネルギーの優先利用による均衡価格の歪みはこの傾向を強めることになります。その結果、安定供給は脅かされることになります。

2013-06-28 22:00:34