日本における「Social」への誤解

ヨーロッパにおける「Social」=「社会」の存在の大きさから「個より社会が大切ということではないか」という通俗的な誤解に対し、野川忍・明大大学院教授(@theophil21)が「Social」の本来的な意味を正しく解説。
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theophil21 @theophil21

socialとは(1)日本語では、「社会的」と訳されるこの単語の意味は、実際のところ何なのか。ヨーロッパの各国では、まだまだ「社会党」や「社会民主党」が強いが、なぜなのか。おそらく、日本では「個より社会が大切ということではないか」と思っている人も多いだろうが、そいう意味ではない。

2013-06-29 17:48:17
theophil21 @theophil21

socialとは(2)たとえばドイツでは、日本の就業規則記載事項は、「社会的事項」として労使の共同決定によることとなっているが、「労働時間の構成」や「賃金の支払い方」がなぜ「社会的」なのか。また他方では、事業所で支払われる付加給付を「社会的給付」というがなぜなのか。

2013-06-29 17:50:15
theophil21 @theophil21

socialとは(3)socialという概念を理解できるかどうかがヨーロッパ社会を理解するための試金石だと力説しておられたのは、東大でフランス法を講じられていた故山口俊夫先生だが、欧州におけるsocialの意義の大きさを知ると、確かにそうだとつくづく思う。

2013-06-29 17:53:26
theophil21 @theophil21

socialとは(4)一方では、弱い立場にある者に手を差し伸べるという趣旨があり、他方では、集団に適用される規範という意味がある。この両者を包括する理念は何か。それは「共同体の維持」ということである。もちろん、個人の自由が重視されないという意味ではない。

2013-06-29 17:56:32
theophil21 @theophil21

socialとは(5)しかし、個人の自由の発揮は共同体の維持と調和しなければならないと、大陸ヨーロッパの多くの国は考えている。つまり、共同体の構成メンバーは連帯して共通の規範を守るべきであり、メンバーの中に苦境に立たされる者がいれば協力して支えなければならない。

2013-06-29 17:59:24
theophil21 @theophil21

socialとは(6)思い切って図式化すれば、自由民主主義と社会民主主義とは力点の置きどころを異にするのであり、「個人の自由を侵害しない範囲で弱い者も助ける」のか、「弱い立場の者が切り捨てられない範囲で個人の自由が発揮されるべき」なのかの相違ということも可能であろう。

2013-06-29 18:01:57
theophil21 @theophil21

socialとは(7)「社会的」という漠然とした概念には、このように積極的な理念がこめられている。かつてEUが発足したとき、スローガンの一つは「ソーシャル・ヨーロッパ」であった。それが欧州の理念的基盤であることは間違いない。日本はそこから何を学べるのか。丁寧な検討が必要であろう。

2013-06-29 18:05:34