角川文庫、華やかなりしころ

安眠練炭さんが、ご自身のミステリ読みはじめのきっかけと、“あのころの角川文庫”について語ってらっしゃいます。
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安眠練炭 @aNmiNreNtaN

私がミステリを読み始めたきっかけは2つあります。1つは、もうタイトルも忘れましたが子供向けの名探偵解説本、もう1つはフランキー堺演じる赤かぶ検事です。前者は私を海外古典へ、後者は角川文庫へと誘いました。(つづく)

2013-07-03 07:56:40
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)海外古典ミステリは特に流行に左右されずに読みましたが、国内ミステリはもろに角川書店の戦略に乗せられました。当時、角川は目をつけた作家の旧作を根こそぎ毎月刊行していたのです。横溝正史、高木彬光など、どれから読んだらいいのか迷うほど大量に文庫棚に並んでいました。(つづく)

2013-07-03 08:01:34
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)折しも時代は赤川次郎ブーム真っ只中でした。しかし、私は一冊も買いませんでした。というのは、当時の中学生はまるで今の読者がライトノベルを読むような感覚で赤川次郎を読んでいたので、近所に貸してくれる人が何人もいたからです。(つづく)

2013-07-03 08:04:36
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)私は中学校の図書委員をやっていて、こっそり学校図書室(図書館などというものはない田舎の学校です)に『家畜人ヤプー』を入れたという話は前にしたことがありますが、カッパの三毛猫ホームズも何冊か私の判断で入れました。人から借りたのはみな文庫落ちしたものだったので。(つづく)

2013-07-03 08:09:07
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)当時、赤川次郎の新作はまずカッパノベルスから出て、何年かすると角川文庫入りするのが普通でした。他の作家の作品にも同様のものが多く、光文社文庫創設のきっかけになったものと思われます。ただし、光文社文庫の第一回配本はすべて文庫書き下ろしまたはオリジナルでした。(つづく)

2013-07-03 08:14:28
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづく)話を角川文庫に戻します。当時貧乏中学生だった私は、ノベルスを買うことなどできなかったので、自分で買うのは専ら文庫本でした。海外ミステリは創元推理文庫が中心(ハヤカワはあまり古典がなかったので)でしたが、国内ものは主に角川文庫でした。(つづく)

2013-07-03 08:17:56
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)角川以外では、新潮文庫の星新一を愛読していましたが、ミステリはほぼ角川のみ。講談社文庫は『虚無への供物』くらいしか記憶にありません。田舎の書店には、勢いのある角川文庫以外の品揃えが悪かったという事情もあったのでしょう。(つづく)

2013-07-03 08:24:14
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)玉石構わず、特定の作家の作品を全集を作らんばかりの勢いで文庫化する(でも売れなくなったらさっさと打ち切るので、中途半端なラインナップになる)という角川のやり方は、私の選書眼を鍛えてくれました。(つづく)

2013-07-03 08:28:33
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)角川文庫といえば、「幻影城」が横溝正史のマイナー短篇を発掘して掲載したら、その中に既に角川文庫に入っている作品が混じっていた、というエピソードがあります。私が角川文庫を読み始める少し前のことですが、さもありなんという感じがします。(つづく)

2013-07-03 08:32:10
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)今では角川もすっかりおとなしくなりましたし、他の文庫でも同じ戦略をとっているところはないでしょう。もはや紙の本でそんなやんちゃなことはできません。古本屋の均一棚で往時をしのぶのみ。(つづく)

2013-07-03 08:35:57
安眠練炭 @aNmiNreNtaN

(つづき)おまけ。私の書棚には、角川文庫の天藤真が全部揃っています。中には初刷でないのもありますが、すべて赤背表紙。中学生から高校生の頃に全部新刊書店で買いました。カバー絵は辰巳四郎。後に「新本格推理」が始まったとき、画風の違いに驚いたものです。(おわり)

2013-07-03 08:42:07