#俺の幼馴染の羽根っ娘が真夏日に訪問してきた件

暑い日は水浴びしたくなるんです、羽根っ娘は
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CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

梅雨明けが発表され、夏本番に入った週末の昼下がり。 ピンポーン 突然玄関のチャイムが鳴った。 「う゛あぁ~」 ゾンビめいた声とともに畳から起き上がる。 節電とやらで勉強する時以外エアコンを付けるのが禁止された僕の部屋は蒸し風呂だ。 まだ和室の畳の上のほうが涼しい。

2013-07-07 21:59:37
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

ピンポーン 「はいはい、今行きますよ」 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン かなりせっかちな鳴らし方。こんな鳴らし方をするのは俺の知り合いの中でひとり――正確には一羽しかいない 「しつこいなぁ!」 「やっほー」 玄関の扉を開けると、予想通り彼女が立っていた。

2013-07-07 22:01:24
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

銀色の髪と水色のワンピースに麦わら帽子をかぶり、いかにも夏という格好だ。 「帰れ」 ドアを閉めようとすると彼女はすかさず翼をドアにねじ込んできた。 こうなると僕は手出しができない。たとえドアチェーンをかけても彼女の羽ばたきひとつでドアチェーンははじけ飛ぶだろう。

2013-07-07 22:04:31
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「まだ何も言ってないでしょ」 一応用件だけは聞いてやることにした。暴れられてドアが吹っ飛んだらさすがにうちの親も怒る。 「……なんの用だよ」 「裏庭と水道、貸してくんない?」 「は?」 この鳥頭は目をキラキラさせながらいったい何を言っているんだ。

2013-07-07 22:09:11
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「何企んでるんだ? テントはってキャンプでもすんの?」 「そんなことしないよ、それにテント張るのは君の方でしょ」 「どういう意味だよ!?」 「ほら、朝とか……やだ、えっち」 芝居がかった動きで口元を隠して目線をそらす。 「そっちかよ!?」 まずい、完全に彼女のペースだ

2013-07-07 22:12:53
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「……で、なんだよ」 放っておくとこのまま流れで押し倒されそうなので話を戻す。 「何がって……何だっけ?」「鳥頭」 お返しとばかりにえぐっておく。 「思い出した! 水浴びさせて欲しいの!」「家にシャワーあんだろ」「ちがうの、水浴び!」 シャワーと水浴びが一体どう違うのか

2013-07-07 22:17:10
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「湯船に浸かるのとどう違うんだよ!?」 「だからぁ! 水浴びだって、言ってんでしょ!」 押し問答にしびれを切らした彼女は白い翼を広げ、ドアをふっ飛ばさんばかりの勢いで開く。 ピシッ 衝撃で隅っこのガラスにヒビが入ったようだが、見なかったことにしておく。

2013-07-07 22:21:12
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「よし、第一関門突破!」 彼女のほうは今の押し問答で猛禽の血が騒いだのか、やたらとやる気満々の表情で僕を睨みつける。 「降伏」 僕はこれ以上家が壊れる前に招かれざる客を招き入れることにした。 「おじゃましまーす」 彼女はことさら邪魔な白い翼を揺らしながら玄関を上がる。

2013-07-07 22:26:07
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「はい、裏庭。水道はあそこ」 "一応"お客なので、水道の位置くらいは教えてやる。 「うん、ありがと」 「なんか荷物多いな」 彼女は家出でもしてきたんじゃないかと思うくらい大きなバッグを縁側に置くと中身を取り出し始めた。 「だって、水浴びだもん」 「水浴びね」

2013-07-07 22:29:12
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

タオル、着替えらしき服、羽根用と思しきでかいブラシ。ここまではまだわかる。 「なんでゴムのアヒルとか水風船とか浮き輪まで入ってるんですかね、みらんさん」 「水浴びだから」 「うん、僕の考える水浴びってのは水場で鳥がやってるあれなんですけどね」

2013-07-07 22:30:53
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「そうだよ?」 わからない。鳥のする水浴びと羽根つきの言う水浴びが似たようなものであるのはなんとなく想像も付く。だがそこにゴムのアヒルと水風船の意味がわからない。

2013-07-07 22:32:36
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「さて、と」 最後にビニールの塊と黄色い蛇腹ポンプ(足でペコペコやって浮き輪に空気とかを入れる、アレだ)を取り出した彼女はおもむろにワンピースの裾に手をかけ、グッと引き上げた。 「うわぁ、なんだ!?」 思わず目をそらす。 「あっ、ごめん」 脱ぐなら脱ぐと言え。

2013-07-07 22:36:14
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「後ろのボタン、外してくれる? 指が届かなくて」 「あー、はいはい」 なるべく彼女の方を見ないようにしてワンピースを留めているボタンを外す。 羽根つきの服は複雑だ。普通の服に羽根を通す穴を開ければそれでいいというものでもない。 「はい、外れたぞ」 「サンキュー」

2013-07-07 22:40:03
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

【悲報】ストックを使い切る

2013-07-07 22:40:12
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

はらり、と水色のワンピースが縁側に落ちた。 「なんだ、下は水着か」 「がっかりした?」 彼女はきゅっと胸を寄せて谷間を強調しながら訊いてくる。 「しねぇよ!」 「ちぇっ」 心底残念そうに舌打ちすると彼女はポンプをビニールにつなぎ、ペコペコと踏み始めた。

2013-07-07 22:44:48
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「それ、もしかして……」 ゆっくりと膨らんで型を顕し始めたビニールの塊には見覚えがあった。 子供の頃よく夏の暑い日に遊んだ、子供用のビニールプールだ。 「水浴び用プール!」 腰に手を当て、ドヤ顔で宣言する彼女。 「あぁ、うん、水浴びね……水浴び」

2013-07-07 22:49:06
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「じゃ、俺昼寝するから」 「水浴びしないの?」 ホースでビニールプールに水を溜めながら彼女は残念そうな表情を浮かべる。 「『サンオイル塗って―』とか言うだろ、どうせ」 「バレた?」 「羽根でわかる」 彼女の背では白い翼が明らかに怪しい動きをしていた。

2013-07-07 22:53:11
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「ここにいっから、なんかあったら言えよ」 「うん、ありがと」 彼女がビニールプールに飛び込むのを見届けた僕は畳に寝転がり、ボケッと天井を見つめる。 「はぁ……」 庭からはチャプチャプと涼しげな水音が聞こえる。 時折大きな水音がするのは羽根を震わせているからだろうか。

2013-07-07 22:59:45
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「ふんふんふ~ん♪」 ついには鼻歌まで聞こえてきた。よっぽど気持ちがいいのだろうか。 「べつに、水着着てるし減るもんじゃないし、うちの庭だし、いいよな……」 ほとんどこじつけに近い理由を考え終わり、音を立てないようゆっくり身を起こす。 「ふんふ~ん♪」

2013-07-07 23:05:59
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

ゆっくりと障子の影から庭の様子を窺う。 「っ!」 一瞬、呼吸が止まった。 銀色の髪が少し日焼けしたうなじにかかり、もこもこと膨らんだ羽根ついた水滴が太陽の光が反射しキラキラと輝く。紺色の水着が引き締まった彼女の体をさらに細く見せる。

2013-07-07 23:11:26
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「んぅ~気持ちいい」 彼女はビニールプールから立ち上がり、大きく伸びをした。しなやかな腕を水滴がつたい、わきの下で水着に吸い込まれる。彼女の背中で白い翼が羽ばたく姿は僕に彼女に流れる猛禽の血筋を思い起こさせた。

2013-07-07 23:22:51
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

唐突に彼女は動きを止めた。 「覗いてるでしょ」 僕に背を向けたまま、彼女は静かにそう言った。 「うっ」「気配でわかるよ」 まずい、気づかれた。見入っているうちに気配を悟られたか。 彼女は屈みこんで何かを握る。 やばい、障子程度、彼女が石を全力投擲したら余裕で貫通する。

2013-07-07 23:26:57
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

「成敗!」 「ぎゃっ!?」 避けることもできず、彼女の投げた黒い物体は僕の顔面に命中した。 ぬるい感触が顔面に広がる。血か。 「あ……れ?」いや違う。衝撃はあったがどこも痛くない。 「あはは、その顔、最高」 彼女は僕を指さして肩を震わせて笑っている。

2013-07-07 23:30:53
CK/旧七式敢行 @CK_Ariaze

手元を見ると、薄いゴムの破片が水たまりの中に浮かんでいた。 「水風船かよ!」 「本気でビビってるの、もう、おっかしー!」 文字通りビニールプールの中で笑い転げる彼女に背を向け、僕は隣の物置に足を向けた。 「あ? 怒っちゃった?」

2013-07-07 23:38:17
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