【スワローズ妄想劇場】戦国絵巻燕の城 2013「優しい三人」

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

【スワローズ妄想劇場】戦国絵巻・燕の城２０１３「優しい三人」 #swamou

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【スワローズ妄想劇場】戦国絵巻・燕の城２０１３「優しい三人」 南青山城から遠く北にある「戸田練兵場」…ここではまだ戦場に出るには未熟な若武者や、傷を負った者たちが戦場に出るための準備をする場所である。 #swamou

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今年初めの教練中に足を骨折してしまった川端もここで傷を癒しつつ再び教練に励んでいたが…「もう大丈夫です。行かせて下さい！」川端は教練場の主、家老の真中に詰め寄った。 #swamou

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「ならん。その足、まだ完全に治った訳ではなかろう？」真中にそう言われ 、川端は一瞬声を詰まらせるが「は、八割方は治っております。いえ、足など飾りです！腕だけでも働いてみせます！」と食い下がる。 #swamou

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「お前なあ…中途半端に治ったところで、また怪我をしたらどうする。またここに長逗留するつもりか？他にも戦場に向かわせたい若武者もおる。今回は自重せい。」と半ば呆れながら真中が言った。確かにそうだった。 #swamou

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若い川崎や谷内などが急成長しており、自分よりも活躍するのではないかと不安に思い、また最近はその方が良いのではないかと考え始めていた。痛いところを突かれた川端は押し黙り、そして吐き捨てるように言ってしまった。「私の気持ちなど、偉い人には分からんのです！」 #swamou

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それを聞いた真中は顔を真っ赤にして怒り、川端を張り倒し「言うたな小僧！いじけた者など要らん！誰かおらぬか！こやつを土牢に閉じ込めい！」と叫んで川端を土牢に閉じ込めさせてしまった。 #swamou

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…暗い土牢の中で川端は一人考えていた。（やってしまったなあ...）いくら後悔してもし切れない失態であった。（でも戦場に出たいんだ。俺は。）そして若武者たちの顔が浮かぶ。（確かに俺も、若い者たちにも機会を与えてやりたい。自分もそうだったからな。しかし…） #swamou

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国のため？自分のため？考えがグルグルと頭の中を回る...そしてどのくらいの時間が経ったのだろう。（カチャリ）という音がして川端は我に返った。振り返ると牢の鍵を開け、今年から家老職になった宮出が入ってきた。宮出は窮屈そうに体を屈めて川端の前に座った。 #swamou

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「どうだ、少しは落ち着いたか？」と、笑顔を浮かべて聞く宮出に、川端は平伏しながら「は。この度は誠に申し訳なく…」と言うと「まあ、過ぎたことは致し方ない。問題はこの先だ。」と川端を見据えながら言った。「なあ、川端よ、お前はどうしたいんだ？」 #swamou

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叱責されると思っていた川端は驚きながら「はあ、どうと申されますと？」と返す。宮出が真剣な顔をしながら「若い奴らの事とかは置いておいて、おまえ自身がどうしたいのか？ということだ。」と問う。川端は即答した「直ぐにでも戦場に出て武功を挙げたいです。思い切り暴れたいです」 #swamou

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それを聞いた宮出は頷きながら「ならば、行け。」と言って牢の出口を指した。「お前は周りを色々考え過ぎだ。やりたい様にやれば良いじゃないか。」と聞いて、困惑しながら「しかし宮出様…その、許可なく私を牢から出したとあっては…」 #swamou

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そう川端が答えると宮出は牢の入口を蹴り飛ばし壊してしまった。「俺が出したんじゃない。牢が壊れていたんだ。さあ行け、真中様に見つからん内にな」川端は深々と礼をし牢を飛び出す。そして厩に向かい愛馬に跨る。宮出が準備していたのだろう、馬の鞍には既に鎧刀が乗せられていた。 #swamou

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（よし、これで今日中に南青山城まで…）と思いながら練兵所の入口まで来たとき、門に人影があった。「やはり来たか…」その声は、紛れもない真中のものであった。「真中様…行かせてください！」川端が懇願する。 #swamou

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真中が叫ぶ。「ならん！行くならば…私を斬って行く覚悟はあるか！」と刀を抜いた。「それは…」川端は、また頭の中で考えが巡り…いや、巡る前に頭を大きく振って叫んだ「私は行きます！そして誰よりも活躍してみせます！」 #swamou

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馬を降り、川端も刀を抜いた。真中がニヤリとしながら「ほう、その度胸があるとはな。行くぞ！」そういって斬りかかる。それを川端が刀で受けるが、存外の力に押されじりじりと後退する。壁際 に押し付けられ、川端の目前に刃が迫る。 #swamou

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その時、真中の頭上から手が伸びてきたかと思うと、真中はその手に羽交い絞めにされた。「川端！行け！早く！」「み、宮出様！」「宮出、貴様！」川端、宮出、真中が三者三様の叫びを上げる。川端は再び馬に飛び乗り「御免！」と言って門を飛び出していった。 #swamou

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真中は、その姿を見ながら「川端！貴様の戻ってくる場所はないぞ！」と叫んだ。そして川端の姿が見えなくなったとき、再び真中が口を開く。「宮出、もう良いぞ。」「は。」宮出は羽交い絞めにした手を離すと、身長差の分で真中は地面に落ちた。 #swamou

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「ぐはっ…もう少し優しく下ろせんのか！」「これは失礼しました。しかし真中様、未だお強いですな」と宮出が笑う。真中は首をさすりながら「あれが限界じゃ。お前が あと一瞬遅れてきてたら、ワシの首と頭は離れてたわい。」と言うと、少し間を置いて続けた。 #swamou

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「…川端は優しすぎるのじゃ。周りに気を使いすぎる。」宮出は「ええ。それが奴の良い所ではあるのですが、武士としては優しすぎるでしょうな。」と頷いた。「この大殿が筋書きを書いた芝居で、少しは変わってくれると良いのだがな。」と真中が溜息混じりに言う。 #swamou

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宮出は笑顔で「しかし…真中様、良い芝居でしたね」と言うと、真中も笑いながら「お前も中々だったぞ？」と答える。それを聞いた宮出が「私も、たまには騙す方に回ってみたかったんですよ」と言う。真中も「俺もだ」と答え顔を見合わせると二人は大笑いを始めた。「優しい三人」完 #swamou

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【おまけ】しばらく笑った後、宮出がパタッと笑うのを止めた。「あれ？ところで真中様、川端に南青山軍は東北に遠征に行く件は伝えましたっけ？」「あれ？お前伝えてないの？」「ええ。」暫しの沈黙のあと、二人は同時に「あ。」と声を上げ、周りを見渡し… #swamou